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27. セシリオside
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朝起きるとまず鏡を見る。
眉とまつ毛の無い、以前より地味な顔をした男が映っている。自分は本当に顔だけが取り柄なのだと再確認するのだ。
この程度のこと、所詮俺は男だし、すぐに周りも慣れるだろうと思っていた。初めは。だが、その考えは甘かったようだ。
眉が無くても、そこまで不細工になったわけでは無いはずだ。だが、気が付けば皆俺から離れていった。
しばらくして理解した。問題は毛が無いことではない。俺が何をやったのか、皆はこの顔を見る度に思い出すのだ。そして、都度不快になる。
すごいよ、ルシア。君の罰は恐ろしい。
俺とクラウディア様の仲はもちろん秘密にしていたが、あれだけベタベタしていたのだ。皆、薄々感じ取り、内心軽蔑していたようだ。
今ではすっかり遠巻きにされ、業務内容以外に言葉を交わす者はいなくなった。いや、「主を汚す愚か者と同じ騎士だと思われたくない」と罵られたりはしたな。
「あんないい子を裏切るなんて」というのもあった。彼女は騎士からも人気が高かった。
俺を唆した侍女達は、いつの間にかウルタードに返されたらしい。今では、王太子殿下が付けてくださったエルディアの侍女達が、クラウディア様がどれだけわがままを言おうとも聞かず、粛々と己の仕事を全うしている。王妃教育を担当する教師達との連携も素晴らしい。
だがある日、とうとうクラウディア様の怒りが爆発してしまった。大きな声で叫び、しまいには部屋の中の物を投げまくり、さすがの侍女達も避難した。護衛騎士達がクラウディア様が怪我をしないようにお止めしようとしていると、信じられない事に国王陛下がいらっしゃったのだ。
国王陛下と王太子殿下は現在別の宮に住んでいる。それなのに、殿下が不在の中わざわざいらっしゃったのは、クラウディア様に苦言を呈する為かと思い、自分達も叱責は免れ無いと皆身を固くした。
しかし、陛下はクラウディア様に優しい言葉をかけると、彼女はしばらくこちらで預かるから安心しなさいと言って、そのまま連れて行ってしまったのだ。
なぜ?どうして?
さっぱり分からないが、陛下のなさる事に口も出せず、だがそのままにする事も出来ず、俺は最近唯一優しい言葉をかけてくれたカハール様に相談する事にした。
「というわけなんです」
今日起きた事をカハール様に話すと、どんどん顔色が悪くなっていった。
「……よりにもよって何て話を持って来るんですか、恩を仇で返すとはこのことだ……
だいたい、私が国王側の人間だったらどうするのですか!騎士は脳みそまで筋肉か!」
申し訳ない。味方がいないんだ。
「宰相閣下に指示を仰ぎます。しばらく待ちなさい。アルフォンソ様がいない今、迂闊に動けません。王宮内の情報を集めるのに少し時間がかかります。あなたはいつでも動ける様にしておきなさい。
そうですね、いっそのことその姿が辛く国に帰りたいと泣き言を言って仕事をサボりなさい。ここを出る準備を急げ」
それからは、言われた通り、辛い悲しい国に帰りたいと嘆き、少しずつ仕事をサボっていった。更に皆からの視線が冷たくなり、仲間の騎士に殴られた。医者には、こんな奴に治療は不要だと、濡れタオルを顔に投げつけられた。
え?いじめ?これ本当に大丈夫なのか?
だんだん不安が強くなったが、何日たってもクラウディア様は戻らないのだ。カハール様を信じ、ここをすぐに出発できるよう準備を進めた。
「これをバレリアノに届けなさい。中は見れないようになってます。間違っても開こうとするな。今夜のうちに行け」
私は信用されていないらしい。クラウディア様がどうされてるか教えてもらえなかった。
「あの、クラウディア様は生きてますよね?無事ですよね?」
どうしてもそれだけは教えて欲しくて、カハール様に詰め寄る。
「……なぜ気にするんです?元恋人だから?」
「俺がクラウディア様の護衛騎士だからです!」
「はっ!もっと早くその気概を持てたらよかったですね?……一応無事ですよ。でも、急がないと無事じゃなくなります。急ぎなさい!」
「ありがとうございます!」
急いで馬を走らせる。今度こそクラウディア様を守るために!
眉とまつ毛の無い、以前より地味な顔をした男が映っている。自分は本当に顔だけが取り柄なのだと再確認するのだ。
この程度のこと、所詮俺は男だし、すぐに周りも慣れるだろうと思っていた。初めは。だが、その考えは甘かったようだ。
眉が無くても、そこまで不細工になったわけでは無いはずだ。だが、気が付けば皆俺から離れていった。
しばらくして理解した。問題は毛が無いことではない。俺が何をやったのか、皆はこの顔を見る度に思い出すのだ。そして、都度不快になる。
すごいよ、ルシア。君の罰は恐ろしい。
俺とクラウディア様の仲はもちろん秘密にしていたが、あれだけベタベタしていたのだ。皆、薄々感じ取り、内心軽蔑していたようだ。
今ではすっかり遠巻きにされ、業務内容以外に言葉を交わす者はいなくなった。いや、「主を汚す愚か者と同じ騎士だと思われたくない」と罵られたりはしたな。
「あんないい子を裏切るなんて」というのもあった。彼女は騎士からも人気が高かった。
俺を唆した侍女達は、いつの間にかウルタードに返されたらしい。今では、王太子殿下が付けてくださったエルディアの侍女達が、クラウディア様がどれだけわがままを言おうとも聞かず、粛々と己の仕事を全うしている。王妃教育を担当する教師達との連携も素晴らしい。
だがある日、とうとうクラウディア様の怒りが爆発してしまった。大きな声で叫び、しまいには部屋の中の物を投げまくり、さすがの侍女達も避難した。護衛騎士達がクラウディア様が怪我をしないようにお止めしようとしていると、信じられない事に国王陛下がいらっしゃったのだ。
国王陛下と王太子殿下は現在別の宮に住んでいる。それなのに、殿下が不在の中わざわざいらっしゃったのは、クラウディア様に苦言を呈する為かと思い、自分達も叱責は免れ無いと皆身を固くした。
しかし、陛下はクラウディア様に優しい言葉をかけると、彼女はしばらくこちらで預かるから安心しなさいと言って、そのまま連れて行ってしまったのだ。
なぜ?どうして?
さっぱり分からないが、陛下のなさる事に口も出せず、だがそのままにする事も出来ず、俺は最近唯一優しい言葉をかけてくれたカハール様に相談する事にした。
「というわけなんです」
今日起きた事をカハール様に話すと、どんどん顔色が悪くなっていった。
「……よりにもよって何て話を持って来るんですか、恩を仇で返すとはこのことだ……
だいたい、私が国王側の人間だったらどうするのですか!騎士は脳みそまで筋肉か!」
申し訳ない。味方がいないんだ。
「宰相閣下に指示を仰ぎます。しばらく待ちなさい。アルフォンソ様がいない今、迂闊に動けません。王宮内の情報を集めるのに少し時間がかかります。あなたはいつでも動ける様にしておきなさい。
そうですね、いっそのことその姿が辛く国に帰りたいと泣き言を言って仕事をサボりなさい。ここを出る準備を急げ」
それからは、言われた通り、辛い悲しい国に帰りたいと嘆き、少しずつ仕事をサボっていった。更に皆からの視線が冷たくなり、仲間の騎士に殴られた。医者には、こんな奴に治療は不要だと、濡れタオルを顔に投げつけられた。
え?いじめ?これ本当に大丈夫なのか?
だんだん不安が強くなったが、何日たってもクラウディア様は戻らないのだ。カハール様を信じ、ここをすぐに出発できるよう準備を進めた。
「これをバレリアノに届けなさい。中は見れないようになってます。間違っても開こうとするな。今夜のうちに行け」
私は信用されていないらしい。クラウディア様がどうされてるか教えてもらえなかった。
「あの、クラウディア様は生きてますよね?無事ですよね?」
どうしてもそれだけは教えて欲しくて、カハール様に詰め寄る。
「……なぜ気にするんです?元恋人だから?」
「俺がクラウディア様の護衛騎士だからです!」
「はっ!もっと早くその気概を持てたらよかったですね?……一応無事ですよ。でも、急がないと無事じゃなくなります。急ぎなさい!」
「ありがとうございます!」
急いで馬を走らせる。今度こそクラウディア様を守るために!
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