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「よし、そろそろ休憩しよう」
だから、なぜいつも貴方が仕切るの兄様。
「あの?オルティス…」
「はいはい。ここにいるの全部オルティスだから。面倒だから名前でどうぞ」
「ですが」
「俺はミゲル、あとは知ってるな。アルフォンソとルシアだ。で?」
ここまで自分の考えを押し通す人に出会ったことは無いであろうイメルダ様が少しだけ言い淀む。
「ミゲル様、私はまだルシア様の提案に対して答えを提示しておりません」
「知ってるよ。けどな、そんなにすぐに答えられる話じゃないのは分かってる。返事なんてどうせ少し時間が欲しいとかだろ?」
何故だろう。兄様がいじめっ子に見えてしまうわ。
「はい、その通りです。ですが、相手に理解を得られるかどうかは自己判断してはいけないでしょう?」
「なんだ、ちゃんと自分の意見を言えるじゃないか」
兄様の言葉に少し驚いている。
「大変失礼いたしました」
「失礼じゃない。少なくとも俺達はその方がいい。
で、質問の答えは明日までの宿題な。
今から夫人はルシアと一緒に休憩だ。妊婦同士だし、そいつはマリアを産んでる先輩だ。色々と教えてもらうといい。
リカルドは俺等と来い。とりあえず説教だ。
ラファはどうする?」
「僕はマリアとお庭で遊んでもいい?」
「ありがとう、じゃあお願いしてもいいかしら。ずっと馬車の中だったから喜ぶわ。イメルダ様、どなたか付き添いをお願いできるかしら」
私が妊娠していることを知らなかったイメルダ様はとても驚いて、そんな体で来てくださるなんてと大慌てで、普段の落ち着いた雰囲気よりもなんだか可愛らしかった。
「ルシア様、本当にお体は大丈夫ですか?」
「もちろん。心配させてごめんなさい」
今は二人でお茶会中。
家から持って来た数種類のお茶をお試ししているのだ。
「こちらのお茶はさっぱりしていて飲みやすいです。色も綺麗ですね」
「これはローズヒップよ」
「ルシア様は何がお好きでした?」
「私はジンジャーティーかな。あとはひたすら炭酸水で生きたわ」
それ以外にも食べ物とかの話に花が咲く。同じ苦しみを経験すると仲間意識が芽生えるものだ。
「ルシア様みたいなお姉様が欲しかったわ」
「あら嬉しいわ。私は粗暴な兄しかいないもの」
「そうですか?ミゲル様は無駄な言葉が無くてとても分かりやすいです。お優しいですし」
なんていい子なの。惜しいわ、どうして人妻なのよ。未婚なら連れて帰っちゃうのに。
「イメルダ様は兄様がタイプですか?」
「えっ?タイプとは、その……」
「私の初恋は騎士を目指す男の子でしたよ」
こちらが言えば答えなくてはいけない気分になるのが人というもの。イメルダ様は律儀だからね。絶対に教えてくれる気がする!
「初恋……あの、笑わないで下さいますか?」
「もちろんよ」
よし、来た!
「私の初恋はリカルド様でした」
「……………えっ?!」
「お会いした時に、最初は外見が素敵な人だなと思って、何よりもとてもお優しくて。私はデビュタントもまだで、男性と会話をする事も少なかったから。
ちょっと優しくされただけで舞い上がってしまったのです。馬鹿みたいですよね」
おいおいおい、リカルド様の馬鹿!
淡い初恋を踏みにじったのか!!
「馬鹿なわけ無いでしょう。自分の気持ちをそんな風に言っては駄目よ」
「……でも……リカルド様はルシア様がお好きでしょう?ごめんなさい、噂話を聞いてしまいました」
なんてこと……誰よ、迂闊にそんな話を聞かせたのは。
「……イメルダ様。私の恋と失恋のお話も聞いてくださいますか?」
それから私はセシリオとの恋の話をした。いまではすっかり風化して怒りはないけれど、語ってみるとなかなかに酷い話だと思う。
「どうです?私の恋もかなりみっともないでしょう?」
「そんなことありません。ルシア様は真剣に愛されたのでしょう。それをみっともないだなんて思うはずがありません」
少し怒っているのが分かる。本当にいい子だ。
「そうですね。浮気されて別れることにはなったけど、楽しかったことや嬉しかったことは本当なんです。
あの頃があるから今があるんです。
だから、イメルダ様も初恋の喜びを忘れないで。大切にしてあげて?」
「……やっぱりルシア様がお姉様ならよかった。ずっとずっと側にいてくれたらいいのに」
「嬉しいわ。私もどうにかしてお持ち帰りしたい気分です」
イメルダ様は強い。泣き言を言ってはいても涙は流さない。そんな彼女を泣かせてあげられたラファは凄い。
「イメルダ様、貴方にとってラファはどんな存在ですか?」
こんなに傷付いているのに、唯一の味方だと感じているラファを連れて行く私達は、彼女から見たらどう感じるのだろう。
「ラファエル様は不思議なんです。幼いのに大人で、小さいのに大きくて。最初は天使みたいだって思っていました。私が辛い時いつも側にいてくれる優しい天使様。
……でも、もう手を離さなくてはいけませんね。私はリカルド様の妻で、この子の母で。それは自分で選んだ道です。アルフォンソ様に褒めていただいた覚悟ですもの」
「そう。イメルダ様は本当にお強いわ」
「そう言ってもらえて嬉しい。
ルシア様のおかげで気持ちに区切りがつけられました。私はここでの恋を大切な思い出にして、これからはこの子の母として頑張ります。
ルシア様、これは秘密の告白ですよ」
ラファエル様はきっと私の2度目の恋でした
「そう。やっぱりラファは凄い子だわ」
とても綺麗な笑顔。この笑顔を見たらもう何も言えない。
これはリカルド様が大変ね。
イメルダ様は乗り越えてしまった。
そして再び覚悟を決めた。
こんな素敵な女性を振り向かせるのは大変だろう。それにもう母親モード。しばらくは恋などいらない無敵状態かも。
だから、なぜいつも貴方が仕切るの兄様。
「あの?オルティス…」
「はいはい。ここにいるの全部オルティスだから。面倒だから名前でどうぞ」
「ですが」
「俺はミゲル、あとは知ってるな。アルフォンソとルシアだ。で?」
ここまで自分の考えを押し通す人に出会ったことは無いであろうイメルダ様が少しだけ言い淀む。
「ミゲル様、私はまだルシア様の提案に対して答えを提示しておりません」
「知ってるよ。けどな、そんなにすぐに答えられる話じゃないのは分かってる。返事なんてどうせ少し時間が欲しいとかだろ?」
何故だろう。兄様がいじめっ子に見えてしまうわ。
「はい、その通りです。ですが、相手に理解を得られるかどうかは自己判断してはいけないでしょう?」
「なんだ、ちゃんと自分の意見を言えるじゃないか」
兄様の言葉に少し驚いている。
「大変失礼いたしました」
「失礼じゃない。少なくとも俺達はその方がいい。
で、質問の答えは明日までの宿題な。
今から夫人はルシアと一緒に休憩だ。妊婦同士だし、そいつはマリアを産んでる先輩だ。色々と教えてもらうといい。
リカルドは俺等と来い。とりあえず説教だ。
ラファはどうする?」
「僕はマリアとお庭で遊んでもいい?」
「ありがとう、じゃあお願いしてもいいかしら。ずっと馬車の中だったから喜ぶわ。イメルダ様、どなたか付き添いをお願いできるかしら」
私が妊娠していることを知らなかったイメルダ様はとても驚いて、そんな体で来てくださるなんてと大慌てで、普段の落ち着いた雰囲気よりもなんだか可愛らしかった。
「ルシア様、本当にお体は大丈夫ですか?」
「もちろん。心配させてごめんなさい」
今は二人でお茶会中。
家から持って来た数種類のお茶をお試ししているのだ。
「こちらのお茶はさっぱりしていて飲みやすいです。色も綺麗ですね」
「これはローズヒップよ」
「ルシア様は何がお好きでした?」
「私はジンジャーティーかな。あとはひたすら炭酸水で生きたわ」
それ以外にも食べ物とかの話に花が咲く。同じ苦しみを経験すると仲間意識が芽生えるものだ。
「ルシア様みたいなお姉様が欲しかったわ」
「あら嬉しいわ。私は粗暴な兄しかいないもの」
「そうですか?ミゲル様は無駄な言葉が無くてとても分かりやすいです。お優しいですし」
なんていい子なの。惜しいわ、どうして人妻なのよ。未婚なら連れて帰っちゃうのに。
「イメルダ様は兄様がタイプですか?」
「えっ?タイプとは、その……」
「私の初恋は騎士を目指す男の子でしたよ」
こちらが言えば答えなくてはいけない気分になるのが人というもの。イメルダ様は律儀だからね。絶対に教えてくれる気がする!
「初恋……あの、笑わないで下さいますか?」
「もちろんよ」
よし、来た!
「私の初恋はリカルド様でした」
「……………えっ?!」
「お会いした時に、最初は外見が素敵な人だなと思って、何よりもとてもお優しくて。私はデビュタントもまだで、男性と会話をする事も少なかったから。
ちょっと優しくされただけで舞い上がってしまったのです。馬鹿みたいですよね」
おいおいおい、リカルド様の馬鹿!
淡い初恋を踏みにじったのか!!
「馬鹿なわけ無いでしょう。自分の気持ちをそんな風に言っては駄目よ」
「……でも……リカルド様はルシア様がお好きでしょう?ごめんなさい、噂話を聞いてしまいました」
なんてこと……誰よ、迂闊にそんな話を聞かせたのは。
「……イメルダ様。私の恋と失恋のお話も聞いてくださいますか?」
それから私はセシリオとの恋の話をした。いまではすっかり風化して怒りはないけれど、語ってみるとなかなかに酷い話だと思う。
「どうです?私の恋もかなりみっともないでしょう?」
「そんなことありません。ルシア様は真剣に愛されたのでしょう。それをみっともないだなんて思うはずがありません」
少し怒っているのが分かる。本当にいい子だ。
「そうですね。浮気されて別れることにはなったけど、楽しかったことや嬉しかったことは本当なんです。
あの頃があるから今があるんです。
だから、イメルダ様も初恋の喜びを忘れないで。大切にしてあげて?」
「……やっぱりルシア様がお姉様ならよかった。ずっとずっと側にいてくれたらいいのに」
「嬉しいわ。私もどうにかしてお持ち帰りしたい気分です」
イメルダ様は強い。泣き言を言ってはいても涙は流さない。そんな彼女を泣かせてあげられたラファは凄い。
「イメルダ様、貴方にとってラファはどんな存在ですか?」
こんなに傷付いているのに、唯一の味方だと感じているラファを連れて行く私達は、彼女から見たらどう感じるのだろう。
「ラファエル様は不思議なんです。幼いのに大人で、小さいのに大きくて。最初は天使みたいだって思っていました。私が辛い時いつも側にいてくれる優しい天使様。
……でも、もう手を離さなくてはいけませんね。私はリカルド様の妻で、この子の母で。それは自分で選んだ道です。アルフォンソ様に褒めていただいた覚悟ですもの」
「そう。イメルダ様は本当にお強いわ」
「そう言ってもらえて嬉しい。
ルシア様のおかげで気持ちに区切りがつけられました。私はここでの恋を大切な思い出にして、これからはこの子の母として頑張ります。
ルシア様、これは秘密の告白ですよ」
ラファエル様はきっと私の2度目の恋でした
「そう。やっぱりラファは凄い子だわ」
とても綺麗な笑顔。この笑顔を見たらもう何も言えない。
これはリカルド様が大変ね。
イメルダ様は乗り越えてしまった。
そして再び覚悟を決めた。
こんな素敵な女性を振り向かせるのは大変だろう。それにもう母親モード。しばらくは恋などいらない無敵状態かも。
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