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24.だって自慢の兄だから
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「優秀な身内がいると辛いよな」
友達の言葉に驚いた。そうなのだろうか?
私にはすこぶる優秀な兄がいるけど、疎ましく思った事はないのだけど。
兄のブライアンとは3歳違い。兄はいつでも立派な手本として存在していた。
確かに教師に言われたことはある。
『貴方のお兄様はもっと早くに〇〇が出来る様になりましたよ』
繰り返されるその言葉に、『兄様凄いっ!』と感動していた私は、今思えばかなりの純真さだったのだろう。
教師の言葉は兄弟を比べる差別であったのだから。でも幼い私にとってそれは、兄をある意味神格化させる魔法の言葉となったのだ。
だから、ある日とうとう兄に伝えてしまった。
『兄様は凄いのですね!私は兄様とは比べものにならない弟ですが、兄様の弟だというだけで価値がありますよね!』
下手をすればかなりの嫌味な台詞だけれど、その頃の私にとっては真実で、頑張ってもこの程度の自分より、何ステージも上に立つ兄は凄い!最高っ!!くらいの興奮っぷりで伝えてしまった。
いつでも優しい笑顔で、何を聞いても嫌な顔一つせず丁寧に教えてくれる兄が、初めて固まったのを見た。
そして、私の頭を撫で、『カルヴァンの兄であることがとても誇らしい』そう言ってくれて本当に嬉しかった。
そして、しばらくしてその教師は消えた。その理由もちゃんと教えてくれたんだ。
『相手の努力を認められない人間は駄目だよ』
なるほど。私は兄の凄いところをたくさん知れて嬉しかったけれど、あれは私の努力は見えていないと言うことだったのか。
……でも、兄様はちゃんと見てくれてる。
その事実に、
『やっぱり兄様は凄いです。大人の先生に出来ないことなのに、兄様は出来るのですね!』
と、更に兄への尊敬が爆上がりした。要するに、私は兄様大好きっ子なのだ。
そう語って聞かせたところ、友達はドン引きしていたが気にしない。ちなみにその友達とはベンジャミンだ。
彼は父親と比べられることが辛かったらしい。でも、成長した体と侯爵という地位と財力を合わせ持っている大人と、まだ成長期の庇護されるべき子供を比べることがそもそもの間違いでは?と思ったことを素直に伝えたら、一週間も無視されてしまった。
比べられる辛さは分かるのに、無視される辛さは分からないのだろうか。
困ったので、まずは兄に相談した。
「相談というものには2種類あるんだ。本当にその答えを教えて欲しい時と、ただ、自分の気持ちに寄り添って共感してほしい時。
きっとそのお友達は、お前に共感して欲しかったんだよ」
なるほど?でも、理解出来ないことにどうやって共感したらいいのだろう。
「うん。カルヴァンは正しい。相手が間違っていると思った時は無理に共感しなくていい。
ただ、正論は人を傷付けることもあるから気を付けようね。
きっとその子も分かっているんだ。勝手に比べてくる人が悪いし、その身内の方が悪いわけではないことを。でも、それだと自分の辛さをどうしたらいいか分からなくて八つ当たりしているんだ。
だから辛かったことにだけ共感したらいい。『比べられて辛かったんだね』この一言で終わると思うよ」
なるほど。解決を望んでいるのか、気持ちを分かって欲しいのかを見極めるのか。
こうやってたくさんのことを教えてくれる兄はやっぱり凄い。ベンジャミンもそうやって認められる時が来るといいけど。
「カルヴァンの学年で、ベンジャミン・イングラム侯爵子息がいると思うが、どんな人か分かるかい?」
ある日、兄から不思議な質問が来た。何と先日相談したベンジャミンを知りたいだなんて。
そういえば、ご家族との不和の悩みだったから、彼の名前は出さなかった。でも、ここで答えるとバレちゃうよね?
初めて兄に答えるのに戸惑ってしまった。
そんな私に気付いたのだろう。少し恥ずかしそうに、そっと教えてくれたんだ。好きな女性の婚約者だと。
兄の好きな人!それもまさかの片想いで、更にその婚約者がベンジャミン!?
え!どうして?絶対に兄様の方が素敵だよ!?
もう、家庭の事情など吹っ飛んで、兄に詰め寄ってしまった。
でも、すでに婚約しているし、何よりも公爵家に嫁ぐという事は、好きかどうかだけでは決められないと言われてしまった。
ほら。兄様は凄い。自分よりも、好きな人の気持ちや立場を考えられるんだ。そんな兄がとても誇らしくて、少し悲しかった。
それからは色々なことがあったから、ベンジャミンの婚約者のことは忘れていたのに、まさかパメラの誕生日パーティーで会うことになるとは思わなかった。
シェリーさんはとても綺麗な人だった。
兄に元気そうだったと伝えよう。そう思っていたのに、まさかの事件が起きてしまった。
ベンジャミンとパメラのやらかしには呆れ返ってしまったが、あれ?これはチャンスなのでは?と気が付いた。
急いで家に帰って報告した。だって!こんなのある意味運命じゃないか!
遠回りしたけど、そのおかげで今なら二人は一緒になれるかもしれないのだ。
シェリーさんの不幸を喜んでごめんなさい。でも、兄上は凄いんだ。自慢の兄なんです。だからチャンスを下さい!その為ならベンジャミンのフォローはするから!
ベンジャミンの罰は聞いた。かなり不利な条件だ。だからまずは勉強面を助けよう。あとは噂かな。『頑張ってて凄いよね。間違ったのは愚かだけど、やり直すチャンスをあげたい』そう友人に話す。ついでに自分も飛び級してしまおう。母上に卒業した姿を見せたいし、ベンジャミンを支えてあげられたら彼の為にも、何よりも兄上の為にもなるはず。
弟の私が出来るのはこれくらいだ。
いつもお手本のように優秀な兄上が、唯一心に隠していた恋がどうか上手く行きますように。
友達の言葉に驚いた。そうなのだろうか?
私にはすこぶる優秀な兄がいるけど、疎ましく思った事はないのだけど。
兄のブライアンとは3歳違い。兄はいつでも立派な手本として存在していた。
確かに教師に言われたことはある。
『貴方のお兄様はもっと早くに〇〇が出来る様になりましたよ』
繰り返されるその言葉に、『兄様凄いっ!』と感動していた私は、今思えばかなりの純真さだったのだろう。
教師の言葉は兄弟を比べる差別であったのだから。でも幼い私にとってそれは、兄をある意味神格化させる魔法の言葉となったのだ。
だから、ある日とうとう兄に伝えてしまった。
『兄様は凄いのですね!私は兄様とは比べものにならない弟ですが、兄様の弟だというだけで価値がありますよね!』
下手をすればかなりの嫌味な台詞だけれど、その頃の私にとっては真実で、頑張ってもこの程度の自分より、何ステージも上に立つ兄は凄い!最高っ!!くらいの興奮っぷりで伝えてしまった。
いつでも優しい笑顔で、何を聞いても嫌な顔一つせず丁寧に教えてくれる兄が、初めて固まったのを見た。
そして、私の頭を撫で、『カルヴァンの兄であることがとても誇らしい』そう言ってくれて本当に嬉しかった。
そして、しばらくしてその教師は消えた。その理由もちゃんと教えてくれたんだ。
『相手の努力を認められない人間は駄目だよ』
なるほど。私は兄の凄いところをたくさん知れて嬉しかったけれど、あれは私の努力は見えていないと言うことだったのか。
……でも、兄様はちゃんと見てくれてる。
その事実に、
『やっぱり兄様は凄いです。大人の先生に出来ないことなのに、兄様は出来るのですね!』
と、更に兄への尊敬が爆上がりした。要するに、私は兄様大好きっ子なのだ。
そう語って聞かせたところ、友達はドン引きしていたが気にしない。ちなみにその友達とはベンジャミンだ。
彼は父親と比べられることが辛かったらしい。でも、成長した体と侯爵という地位と財力を合わせ持っている大人と、まだ成長期の庇護されるべき子供を比べることがそもそもの間違いでは?と思ったことを素直に伝えたら、一週間も無視されてしまった。
比べられる辛さは分かるのに、無視される辛さは分からないのだろうか。
困ったので、まずは兄に相談した。
「相談というものには2種類あるんだ。本当にその答えを教えて欲しい時と、ただ、自分の気持ちに寄り添って共感してほしい時。
きっとそのお友達は、お前に共感して欲しかったんだよ」
なるほど?でも、理解出来ないことにどうやって共感したらいいのだろう。
「うん。カルヴァンは正しい。相手が間違っていると思った時は無理に共感しなくていい。
ただ、正論は人を傷付けることもあるから気を付けようね。
きっとその子も分かっているんだ。勝手に比べてくる人が悪いし、その身内の方が悪いわけではないことを。でも、それだと自分の辛さをどうしたらいいか分からなくて八つ当たりしているんだ。
だから辛かったことにだけ共感したらいい。『比べられて辛かったんだね』この一言で終わると思うよ」
なるほど。解決を望んでいるのか、気持ちを分かって欲しいのかを見極めるのか。
こうやってたくさんのことを教えてくれる兄はやっぱり凄い。ベンジャミンもそうやって認められる時が来るといいけど。
「カルヴァンの学年で、ベンジャミン・イングラム侯爵子息がいると思うが、どんな人か分かるかい?」
ある日、兄から不思議な質問が来た。何と先日相談したベンジャミンを知りたいだなんて。
そういえば、ご家族との不和の悩みだったから、彼の名前は出さなかった。でも、ここで答えるとバレちゃうよね?
初めて兄に答えるのに戸惑ってしまった。
そんな私に気付いたのだろう。少し恥ずかしそうに、そっと教えてくれたんだ。好きな女性の婚約者だと。
兄の好きな人!それもまさかの片想いで、更にその婚約者がベンジャミン!?
え!どうして?絶対に兄様の方が素敵だよ!?
もう、家庭の事情など吹っ飛んで、兄に詰め寄ってしまった。
でも、すでに婚約しているし、何よりも公爵家に嫁ぐという事は、好きかどうかだけでは決められないと言われてしまった。
ほら。兄様は凄い。自分よりも、好きな人の気持ちや立場を考えられるんだ。そんな兄がとても誇らしくて、少し悲しかった。
それからは色々なことがあったから、ベンジャミンの婚約者のことは忘れていたのに、まさかパメラの誕生日パーティーで会うことになるとは思わなかった。
シェリーさんはとても綺麗な人だった。
兄に元気そうだったと伝えよう。そう思っていたのに、まさかの事件が起きてしまった。
ベンジャミンとパメラのやらかしには呆れ返ってしまったが、あれ?これはチャンスなのでは?と気が付いた。
急いで家に帰って報告した。だって!こんなのある意味運命じゃないか!
遠回りしたけど、そのおかげで今なら二人は一緒になれるかもしれないのだ。
シェリーさんの不幸を喜んでごめんなさい。でも、兄上は凄いんだ。自慢の兄なんです。だからチャンスを下さい!その為ならベンジャミンのフォローはするから!
ベンジャミンの罰は聞いた。かなり不利な条件だ。だからまずは勉強面を助けよう。あとは噂かな。『頑張ってて凄いよね。間違ったのは愚かだけど、やり直すチャンスをあげたい』そう友人に話す。ついでに自分も飛び級してしまおう。母上に卒業した姿を見せたいし、ベンジャミンを支えてあげられたら彼の為にも、何よりも兄上の為にもなるはず。
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いつもお手本のように優秀な兄上が、唯一心に隠していた恋がどうか上手く行きますように。
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