ごめんなさい、お淑やかじゃないんです。

ましろ

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5.娘か猫か (休日最終日)

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朝起きるとアリーチェが絡まってる。
こいつはなぜくっついて寝るのが好きなんだ?

この一週間は子作りの為と伝えてしまったせいで、アリーチェは毎日共寝を要求してくる。
女性としての恥じらいはないのだろうか。
だんだんこの娘が側にいることが馴染んできてしまった。


「まだ一週間なのにな」


つい、頭を撫でてしまう。
不憫な家庭環境を聞いてしまったからだろう。庇護欲が増してしまった気がする。そんなに幼くは無いが、この子が貰えなかったであろう家族の愛情を与えたいと思うのはおかしいのだろうか?

娘……子供か……
モニカとの性交で避妊はしていない。だが、すでに11年。これだけの期間子どもが出来ないということは、どちらかに問題があるのだろう。
得られない子供。
だから余計にアリーチェが可愛く見えるのかもしれないな。


「ん~」
「そろそろ起きろ、アリーチェ」
「……おはよ」
「今日は君の希望していたパンケーキだぞ」
「あ、起きなきゃ!」


やはり子供だ。くっつかれて可愛いとは思うが性欲はわかない。娘か猫か。まぁ可愛いから良しとしよう。




「ん~!ふわふわで美味しい!」
「ほら、クリームがついてる」
「ん、ありがと」


うちの娘は手が掛かる。
口元に付いたクリームを拭いていると、


「……あなた本当にエミディオなの?」
「母上?突然どうしたんですか」


今日は天気がいいからと庭にある東屋で朝食をとっていた。まさかこんなに早い時間に母上が来るとは……
アリーチェも口の中の物を飲み込もうと慌てている。

「……ごめんなさいね、食事中に。帰るわ」
「え、お義母様?!まだ来たばかりなのに!」
「そうですよ、用があったから来たんじゃないんですか?」
「……いえ、もう確認出来たから大丈夫よ。……まさか本当に溺愛してるだなんて思わなかったわ」


溺愛……この娘か。確かにそうか?


「うちの子は可愛いでしょう」
「どうしてそんなに自慢気なの。なんだか腹立つ顔ね。まぁ、仲がいいのはよかったわ。
こんな無愛想なおじさんの妻になってくれてありがとうね」
「そんなことないです。エミディオ様は優しいですよ」
「……優しい……この顔が?」


私の顔がどれだけ怖いと言うんだ。


「でもまぁ、これだけ仲が良ければ早くに赤ちゃんが出来るわね。安心したわ」
「……いえ。まだ二人での生活を楽しみたいので子供はいりません」
「何を言っているの。後継ぎは早いにこした事がないわよ。アリーチェさんが嫌な思いをする前に頑張りなさいな」
「駄目です。見てください、この華奢な体を!子供なんて産んだら死んでしまいますよ。
もう少し大きくなってからでいいんです。後継ぎよりうちの子の方が大切ですから!」


やっとガリガリの子猫から脱したばかりなんだぞ!毛艶は良くなったがまだ体重が軽過ぎる。


「大きくって、もう17歳でしょう?」
17歳です。無理はさせられません。絶対に駄目です」
「……そんな子供を妻にしたのは貴方でしょう。幼女趣味だとでもいうのかしら!」
「な!幼女じゃありません!でも、まだ守るべき娘です。これ以上何を言っても無駄だから止めてくださいね」
「どうしてあなたはそんなに頑固者なの!もういいわ、帰ります!」
「どうぞお気を付けて」
 

何だアレは。これが噂の早く孫の顔を見せろ攻撃か。絶対に防いで見せるがな!


「……エミディオ様、申し訳ありません」
「なぜ君が謝るんだ?」
「だって、お義母様は……」
「謝るのは私だ。嫌な思いをさせてすまない。ほら、まだ残ってるよ、食べなさい」


これからはいっそ、ウチの可愛い娘は見せてやらん!くらいにすればいいかもしれないが……


「どうしたんですか?」
「いや、君を箱入り娘として扱おうかとも思ったが、行動を束縛するのは良くないからな。他に何か良い手はないかと考えていた」
「アハハッ、私が箱入り娘!」
「そう。大切に大切に育てないとな」
「……あなた絶対に親バカになって子どもに鬱陶しいって言われちゃうタイプね」
「!!」
「……ちょっと羨ましいかも」


アリーチェは意外と寂しがり屋だ。だからくっついて寝るのか。


「……ちょっと。エミディオ様は撫でるのが下手くそよ」
「撫でるのに上手い下手があるのか?」
「もう、髪型が崩れた!」
「悪かったよ」


なぜあの男はもっとこの子を大切にしなかったのか……いっそ、私とモニカの子供になれたらいいのにな。



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