37 / 39
【番外編】
子犬の恩返し 【中編】
しおりを挟む
「……フローラは私の母です。貴方は誰ですか?」
「ああ、神様っ!申し訳ありません、なぜ私にこの様な……どうか私の事などお見捨て下さい。ご領主夫妻にお救いいただける人間ではありません!」
突然大声を出したせいだろう。その後激しく咳き込み始め、医師から安静の為にと部屋から出されてしまった。
「アリーチェ、大丈夫か?」
「うん、ありがとうエミディオ様」
そう言ってエミディオさんにくっついている所を見るとあまり大丈夫では無いようだ。
「お姉さん、シスターがごめんなさい。せっかく助けてくれたのに。普段はすごく優しいんだ!ちょっと体調が悪いからなだけで!」
「テ~オ、大丈夫だ。アリーチェさんは怒ってないよ。たぶん……本当に親族なんだろ?」
「しんぞく……家族のこと?」
「まぁそんなもんだ」
「そっか。シスターは本当の家族がいたんだね。ひとりぼっちじゃなかったんだ。……よかった」
テオが少し寂しそうに笑う。この家は身寄りの無い人間が集まって疑似家族になっていたのだろう。
「なんでだよ。テオはシスターの家族だろう?だからひとりぼっちじゃないじゃないか」
「……俺はちょっと拾われただけで家族なんかじゃ」
「生意気言うのはこの口か?あ?」
テオの肉付きの悪いほっぺたを引っ張る。
「イタタッ、痛いよアベルの馬鹿!」
「馬鹿はお前だ、何変な顔で笑ってるんだよ。シスターが拾ったなら家族としてだ。お前がそんなことを言ったらきっと悲しむぞ。人間いつ何が起こるか分からないんだ。変な意地を張らないで素直な気持ちを伝えろ。
……シスターはここ。胸がだいぶ悪いらしい」
「治らないの?」
「もう、だいぶおばあちゃんだからな。いつどうなるかは分からない。だから素直になれよ。後悔しないようにな」
「……うん」
グリグリと頭を撫でる。こんな小さい子供に人の死を教えるのは可哀想だとは思う。けど、いつか来る別れの時に後悔しないで欲しいから。
「……どうしてエミディオさんが俺の頭を撫でるんですか」
「ん?いい奴だなと思ったから」
「そうね、言い難いことを言ってあげて偉いわ。私も撫でていい?」
「絶対に止めてください。で?アリーチェさんはシスターのことが誰か分かったんですか?」
少し落ち着いたようなので質問する。会話に混ざってきたということは話す気があるのだろう。
「……たぶん、お祖母様だと思う。母方の」
「平民なのにか?」
「お祖母様はお母様を産んだ3年後、流産したせいで子供が産めなくなってしまった為に離縁されたそうなの。実家でも受け入れてもらえなくて、修道院に行かれたと聞いたわ」
げ、貴族の嫌な話だ。要するに4年くらいの間に産んだのが女児だけだからおはらい箱か。せめて男児なら離縁にはならなかったかもしれないが……シスターは子供を二人失ってしまったんだな。
「最低だな」
「うん。だから私はお会いしたことがないの。お祖母様は大人になったお母様を見かけたことがお有りなのかしら」
「えっと、お姉さんのおばあちゃんがシスター?」
「かも。ね」
「じゃあ何でシスターはサヨナラするのさ」
「テオと一緒で素直になれなかっただけじゃないか?」
「……アベルの意地悪」
「似た者同士のテオならシスターを素直に出来るだろ?」
こんな可愛い子供の願いをシスターは無視出来ないだろう。きっと孫として可愛がっていただろうし。
「そっか、アベルすごいな!俺頑張る!行ってくる!」
「えっ」
言うが早いか、ダッシュで寝室に向かってしまった。
「アベル……まだ私の心の準備が出来ていなかったのに……」
「テオは凄いな。狂犬アベルに懐いている」
「絶対にエミディオさんにだけは言われたくないですね」
どこまで狂犬を引っ張るんだ。眉間のシワを無くしてから言いやがれ!
「お姉さん、シスターが会いたいって!」
「凄いな、テオ」
「へへっ、俺凄い?」
「おう、カッコイイぞ」
「やたっ!アベルも一緒に行こうよ!」
うん、本当に懐いたな。くそ可愛い。
「いや、大勢で行くとまたシスターが恥ずかしがるといけないから、テオは俺と外で遊ぼうぜ」
「ほんと?何して遊ぶ?」
「ん~、ボールとかあるか?」
「あるよ、とってくる!」
ボールを取りに行く子犬みたいだな。
「というわけで、邪魔者は外で遊んでるからしっかり話して来て下さい。テオが嬉しそうだからゆっくりめでよろしく」
「……ありがとう、アベル」
「アベル、ボールあった!」
「よし、行くか」
「うん!」
なんだかブンブン振ってる尻尾が見えそうだな。
ヴィート君(5歳)も誘ったけど、俺の顔を見て逃げた。少し悲しかった。
「なぁ、テオは俺のこと怖くないのか?」
「なんで?」
キャッチボールをしながら聞いてみる。ヴィートみたいな反応の方が普通だから。
「俺やエミディオさんはよく怖がられるからな」
ここは絶対にエミディオさんを仲間にしておく。俺よりあの人の方が怖いはずだからな。
「えー、どっちかっていうとカッコイイ!」
「へ?」
「領主様はなんだか悪の親玉って感じですっげえ強そう!」
「ぶはっ!そ、それで?」
やばい!領主なのに悪の親玉!絶対に帰ったらモニカに教えよう!
「アベルは目の上の傷が強そう!」
そうか。怖いじゃなくて強そうに見えるのか。男の子だな。基本阿呆で可愛い。
「でも優しいから好きだ。俺を子供だからって馬鹿にしないし、孤児だからって乱暴にしないもん。
……ありがと」
へへっ、と恥ずかしそうに笑う姿が凄く……愛しいと思った。
同じ孤児だから?懐いたのが可愛いから?
やばいなぁ。……モニカに……この気持ちを話してもいいだろうか。
「アベル疲れた?オッサンだから俺にはついてこれない?」
クソ生意気なワンコロめ、覚悟しろよ!
「ああ、神様っ!申し訳ありません、なぜ私にこの様な……どうか私の事などお見捨て下さい。ご領主夫妻にお救いいただける人間ではありません!」
突然大声を出したせいだろう。その後激しく咳き込み始め、医師から安静の為にと部屋から出されてしまった。
「アリーチェ、大丈夫か?」
「うん、ありがとうエミディオ様」
そう言ってエミディオさんにくっついている所を見るとあまり大丈夫では無いようだ。
「お姉さん、シスターがごめんなさい。せっかく助けてくれたのに。普段はすごく優しいんだ!ちょっと体調が悪いからなだけで!」
「テ~オ、大丈夫だ。アリーチェさんは怒ってないよ。たぶん……本当に親族なんだろ?」
「しんぞく……家族のこと?」
「まぁそんなもんだ」
「そっか。シスターは本当の家族がいたんだね。ひとりぼっちじゃなかったんだ。……よかった」
テオが少し寂しそうに笑う。この家は身寄りの無い人間が集まって疑似家族になっていたのだろう。
「なんでだよ。テオはシスターの家族だろう?だからひとりぼっちじゃないじゃないか」
「……俺はちょっと拾われただけで家族なんかじゃ」
「生意気言うのはこの口か?あ?」
テオの肉付きの悪いほっぺたを引っ張る。
「イタタッ、痛いよアベルの馬鹿!」
「馬鹿はお前だ、何変な顔で笑ってるんだよ。シスターが拾ったなら家族としてだ。お前がそんなことを言ったらきっと悲しむぞ。人間いつ何が起こるか分からないんだ。変な意地を張らないで素直な気持ちを伝えろ。
……シスターはここ。胸がだいぶ悪いらしい」
「治らないの?」
「もう、だいぶおばあちゃんだからな。いつどうなるかは分からない。だから素直になれよ。後悔しないようにな」
「……うん」
グリグリと頭を撫でる。こんな小さい子供に人の死を教えるのは可哀想だとは思う。けど、いつか来る別れの時に後悔しないで欲しいから。
「……どうしてエミディオさんが俺の頭を撫でるんですか」
「ん?いい奴だなと思ったから」
「そうね、言い難いことを言ってあげて偉いわ。私も撫でていい?」
「絶対に止めてください。で?アリーチェさんはシスターのことが誰か分かったんですか?」
少し落ち着いたようなので質問する。会話に混ざってきたということは話す気があるのだろう。
「……たぶん、お祖母様だと思う。母方の」
「平民なのにか?」
「お祖母様はお母様を産んだ3年後、流産したせいで子供が産めなくなってしまった為に離縁されたそうなの。実家でも受け入れてもらえなくて、修道院に行かれたと聞いたわ」
げ、貴族の嫌な話だ。要するに4年くらいの間に産んだのが女児だけだからおはらい箱か。せめて男児なら離縁にはならなかったかもしれないが……シスターは子供を二人失ってしまったんだな。
「最低だな」
「うん。だから私はお会いしたことがないの。お祖母様は大人になったお母様を見かけたことがお有りなのかしら」
「えっと、お姉さんのおばあちゃんがシスター?」
「かも。ね」
「じゃあ何でシスターはサヨナラするのさ」
「テオと一緒で素直になれなかっただけじゃないか?」
「……アベルの意地悪」
「似た者同士のテオならシスターを素直に出来るだろ?」
こんな可愛い子供の願いをシスターは無視出来ないだろう。きっと孫として可愛がっていただろうし。
「そっか、アベルすごいな!俺頑張る!行ってくる!」
「えっ」
言うが早いか、ダッシュで寝室に向かってしまった。
「アベル……まだ私の心の準備が出来ていなかったのに……」
「テオは凄いな。狂犬アベルに懐いている」
「絶対にエミディオさんにだけは言われたくないですね」
どこまで狂犬を引っ張るんだ。眉間のシワを無くしてから言いやがれ!
「お姉さん、シスターが会いたいって!」
「凄いな、テオ」
「へへっ、俺凄い?」
「おう、カッコイイぞ」
「やたっ!アベルも一緒に行こうよ!」
うん、本当に懐いたな。くそ可愛い。
「いや、大勢で行くとまたシスターが恥ずかしがるといけないから、テオは俺と外で遊ぼうぜ」
「ほんと?何して遊ぶ?」
「ん~、ボールとかあるか?」
「あるよ、とってくる!」
ボールを取りに行く子犬みたいだな。
「というわけで、邪魔者は外で遊んでるからしっかり話して来て下さい。テオが嬉しそうだからゆっくりめでよろしく」
「……ありがとう、アベル」
「アベル、ボールあった!」
「よし、行くか」
「うん!」
なんだかブンブン振ってる尻尾が見えそうだな。
ヴィート君(5歳)も誘ったけど、俺の顔を見て逃げた。少し悲しかった。
「なぁ、テオは俺のこと怖くないのか?」
「なんで?」
キャッチボールをしながら聞いてみる。ヴィートみたいな反応の方が普通だから。
「俺やエミディオさんはよく怖がられるからな」
ここは絶対にエミディオさんを仲間にしておく。俺よりあの人の方が怖いはずだからな。
「えー、どっちかっていうとカッコイイ!」
「へ?」
「領主様はなんだか悪の親玉って感じですっげえ強そう!」
「ぶはっ!そ、それで?」
やばい!領主なのに悪の親玉!絶対に帰ったらモニカに教えよう!
「アベルは目の上の傷が強そう!」
そうか。怖いじゃなくて強そうに見えるのか。男の子だな。基本阿呆で可愛い。
「でも優しいから好きだ。俺を子供だからって馬鹿にしないし、孤児だからって乱暴にしないもん。
……ありがと」
へへっ、と恥ずかしそうに笑う姿が凄く……愛しいと思った。
同じ孤児だから?懐いたのが可愛いから?
やばいなぁ。……モニカに……この気持ちを話してもいいだろうか。
「アベル疲れた?オッサンだから俺にはついてこれない?」
クソ生意気なワンコロめ、覚悟しろよ!
1,513
あなたにおすすめの小説
婚約破棄の代償
nanahi
恋愛
「あの子を放って置けないんだ。ごめん。婚約はなかったことにしてほしい」
ある日突然、侯爵令嬢エバンジェリンは婚約者アダムスに一方的に婚約破棄される。破局に追い込んだのは婚約者の幼馴染メアリという平民の儚げな娘だった。
エバンジェリンを差し置いてアダムスとメアリはひと時の幸せに酔うが、婚約破棄の代償は想像以上に大きかった。
〖完結〗旦那様には出て行っていただきます。どうか平民の愛人とお幸せに·····
藍川みいな
恋愛
「セリアさん、単刀直入に言いますね。ルーカス様と別れてください。」
……これは一体、どういう事でしょう?
いきなり現れたルーカスの愛人に、別れて欲しいと言われたセリア。
ルーカスはセリアと結婚し、スペクター侯爵家に婿入りしたが、セリアとの結婚前から愛人がいて、その愛人と侯爵家を乗っ取るつもりだと愛人は話した……
設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。
全6話で完結になります。
【完結】20年後の真実
ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。
マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。
それから20年。
マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。
そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。
おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。
全4話書き上げ済み。
〖完結〗その子は私の子ではありません。どうぞ、平民の愛人とお幸せに。
藍川みいな
恋愛
愛する人と結婚した…はずだった……
結婚式を終えて帰る途中、見知らぬ男達に襲われた。
ジュラン様を庇い、顔に傷痕が残ってしまった私を、彼は醜いと言い放った。それだけではなく、彼の子を身篭った愛人を連れて来て、彼女が産む子を私達の子として育てると言い出した。
愛していた彼の本性を知った私は、復讐する決意をする。決してあなたの思い通りになんてさせない。
*設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。
*全16話で完結になります。
*番外編、追加しました。
病弱な幼馴染を守る彼との婚約を解消、十年の恋を捨てて結婚します
佐藤 美奈
恋愛
セフィーナ・グラディウスという貴族の娘が、婚約者であるアルディン・オルステリア伯爵令息との関係に苦悩し、彼の優しさが他の女性に向けられることに心を痛める。
セフィーナは、アルディンが幼馴染のリーシャ・ランスロット男爵令嬢に特別な優しさを注ぐ姿を見て、自らの立場に苦しみながらも、理想的な婚約者を演じ続ける日々を送っていた。
婚約して十年間、心の中で自分を演じ続けてきたが、それももう耐えられなくなっていた。
貴方が側妃を望んだのです
cyaru
恋愛
「君はそれでいいのか」王太子ハロルドは言った。
「えぇ。勿論ですわ」婚約者の公爵令嬢フランセアは答えた。
誠の愛に気がついたと言われたフランセアは微笑んで答えた。
※2022年6月12日。一部書き足しました。
※架空のお話です。現実世界の話ではありません。
史実などに基づいたものではない事をご理解ください。
※話の都合上、残酷な描写がありますがそれがざまぁなのかは受け取り方は人それぞれです。
表現的にどうかと思う回は冒頭に注意喚起を書き込むようにしますが有無は作者の判断です。
※更新していくうえでタグは幾つか増えます。
※作者都合のご都合主義です。
※リアルで似たようなものが出てくると思いますが気のせいです。
※爵位や言葉使いなど現実世界、他の作者さんの作品とは異なります(似てるモノ、同じものもあります)
※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。
婚約破棄から50年後
あんど もあ
ファンタジー
王立学園の卒業パーティーで、王子が婚約者に婚約破棄を宣言した。王子は真に愛する女性と結ばれ、めでたしめでたし。
そして50年後、王子の孫の王子は、婚約破棄された女性の孫と婚約する事に。そこで明かされた婚約破棄の真実とは。
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる