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第一章
15.共に堕ちる
しおりを挟むお父様と、双子達と手を繋いだミュリエルが入って来ました。
「ダンドリュー公爵、誠に申し訳ございませんでした」
「それは何に対する謝罪だ。軽く頭を下げるな。己を楽にするためだけの言葉などゴミにしかならん」
すでにミュリエルが涙目になっています。
お祖父様が怖いのでしょう。
「まずは挨拶をしようか。私は君達の祖父、モルガン・ダンドリューだ。これから君達は私が保護することになる。よろしく頼む」
「初めまして。私は長男のマイルズ。こちらが双子のパスカル。この子は……次女のミュリエルです」
あら、驚きました。ミュリエルを次女だと説明するとは。
「ブランシュを妹だと認めたか」
「……この年まで気付かずにいたことを恥ずかしく思っております」
気付かなかった?何が?
私の存在を無視していたのではなかったの?
「ではなぜブランシュに謝罪をしないのだ」
「……私達の顔など見たくないだろうと思ったのと、このまま憎まれているべきだと思いました」
は?何それ。馬鹿なの?
「お祖父様、発言してもよろしいでしょうか」
「ああ、もちろん」
じろりと兄達を見る。こうして見ると私とは似ていません。たぶん、性格も違うのでしょうね。
「お兄様はたった一度会っただけで私の気持ちが分かるのですか」
「え?……あの」
「あなたは読心や過去見などの魔法が使えるのかと聞いているのです」
「……そんな高度な魔法は使えないよ」
「ではただの思い込みで私の気持ちを決め付けているのですか?」
「……だって僕達のこと、幻滅しただろう?」
いえ、もともと何も期待していなかったから幻滅も何もないのだけど。
「チビと言われたのは腹が立ちました」
「……すまなかった」
「それでも、私はすっごく大変な思いをして治療しました。あなた達に恩を着せたかったワケではありませんが、治療が終わっても見向きもせず、ありがとうの一つもなかったのは正直悲しかった。
あなた達が私のことを何年も無視し続けた酷い人達だって分かっていたけど、それでも少しくらい感謝の気持ちや心配する心を向けてくれたっていいのにって、そう思いましたっ!」
あのとき、私に駆け寄ってくれたのはナタリーとマルクだけだった。それを悲しいと思ったことが悔しかった。
どこかでまだ期待していた自分が恥ずかしかった。
「ごめんっ、違うんだっ!僕達がただ馬鹿だっただけなんだ!」
「そうだよ!だって君のことを知らなかったんだ!ミュリエルがお母様のお腹にやって来た時に、やっと妹が帰って来たんだって勘違いして!」
「…………は?」
それから、双子が何を勘違いしていたのかを教えてくれました。正直、何故そんな考えに至ったのか理解に苦しみましたが。
「……お父様達はその誤解をずっと解くことはなかったのですね」
ゾクリと寒気がしました。もしかして、私は本当に存在を消されかけていたのでは?
「オレリー。そんな嘘を吐いてどうするつもりだった。まさかブランシュを人知れず消すつもりだったのか」
お祖父様も同じことを考えたようです。だってあまりにも異常過ぎます。
「消すだなんてそんな……」
「妻はブランシュを持て余していただけです」
「どういうことだ」
「やめて、ロドルフ!」
持て余すってまさか──
「オレリーは何も考えていなかったのですよ。
ただ、嫡男を手放すなど貴族として恥だから引き止めた。
前伯爵夫人と……大嫌いな女と同じ銀髪のブランシュにガッカリしたから丁度いいから離れに追いやった。
でも、マイルズ達に嫌われたくないから魔法の国だなんて嘘を吐いた。
自分にそっくりな女の子が欲しかったから身篭った。
二人が勘違いしたからそのまま誤解させておけば幸せになれると思って黙っていた。
ブランシュのことはいつかどうにかなるとしか思っていなかったから先のことは考えずに軟禁し続けた。
……彼女はいつだって、ただ自分に都合のいい世界を夢見て生きていただけです」
私が嫌われていたのは、前伯爵夫人に似ていたから。ただそれだけだったの?
「ロドルフ、何故止めなかった!」
「だってオレリーは母上の死を喜んだから」
「……なに?」
「葬儀の時、彼女は小さな声で『様を見ろ』と言ったのです。
病の痛みに苦しみ、ようやくその苦しみから逃れ、神の御元に旅立った母のことをオレリーは嘲笑ったのですよ。
そんな女が幸せになっていいはずがないでしょう?」
だから?お母様が道を誤り、私達を巻き込みながらジワジワと堕ちるに任せていたというの?
「……なぜ私に相談しなかった」
「私が閣下に相談ですか。母がいなくなった途端、母のお気に入りの絵画や家具を処分し、使用人達すら入れ替えるのを許したあなたに?そんな妻を殺したいほど憎いけどどうしたらいいかと聞けばよかったのですか」
「止めなさい!子ども達がいるのですよ!」
エルフェ様が父の告解を遮りました。
でも、もう今更だわ。
兄様達は蒼白になり、ミュリエルも父の異常な雰囲気に怯えています。
「意気地無しの卑怯者ね、お父様は」
「……すまない」
「それで?今、お父様は幸せなの?
私は9年も隔離され、お母様を陥れることに成功したわ。お兄様達だって、評価に大きなペナルティが付いて魔法塔預かり。ミュリエルは命は助かったけど家族とは引き離される。
家族は壊れたわ。
どう?これがお父様の望みだったの?」
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