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第二章
6.異質
しおりを挟む何だかんだと揉めながらも兄妹一緒に向かったのは正解だったみたい。
お祖父様がホッとしたお顔をされたので、私達の不仲を心配されていたのだと気付きました。
「さて、改めて君達に挨拶を。
ダンドリュー公爵家へようこそ。親族でありながらも今まではすっかりと疎遠になってしまっていたが、これからは家族として仲良くできたらと思っている」
親族か。本当ならばもっと交流を持つものなのかな。家族とすらほとんど関わりが無かったからよく分かりません。
「我が家の子ども達を紹介しよう」
「初めまして。私は長男のリシャールです」
「次男のロランです。よろしく」
「ベルティーユと申します」
ロラン様は庭園で会った時とは雰囲気が違います。でも、目が合うと少し笑ってくれたから挨拶だからちゃんとしてるだけかな?
それからは私達もそれぞれ挨拶をして食事が始まりました。
「……にいさま、これ嫌い」
まただわ。ミュリエルはかなり偏食のようね。
リシャール様は表情に出していませんが、ロラン様とベルティーユ様からは何とも冷たい視線が向けられています。
「ミュリエル。もう体は元気になったのだから好き嫌いせずに食べなきゃ」
「……でも」
「いいのよ。いきなりは難しいと思うわ。
これから少しずつ食べられるようにしましょうね」
体調を崩すことが多かったミュリエルは、食べられないよりは多少偏食でも食べられる方がいいからと甘やかされてきたようです。
「ミュリエルさんはどこかお悪いの?」
「妹は幼い頃から魔力過多症を患っていて、先日治ったばかりなのです」
「まあ、それは大変でしたね。でも治って良かったわ。だって治療が難しい病なのでしょう?」
これでミュリエルと1つしか違わないのだから驚いてしまいます。ミュリエルが幼いのかベルティーユ様が利発なのか。
「ベル?あまり根掘り葉掘りと聞くものではないよ」
「まあ。私だって他人なら聞かないわ。でもこれからは家族として一緒に住むのでしょう?
なのにご病気のことを何も知らないだなんておかしいと思うわ。それに魔法でしか治せないって聞いたことがあるから気になっただけだもん」
それでも、ムッと拗ねている姿は可愛らしいです。
「ベルティーユ様は魔法にご興味が?」
とりあえず矛先を変えましょうか。
ミュリエルでは会話が続かないから仕方がありません。
「様はいりませんわ」
「ではベルティーユさん、とお呼びしてもいいかしら」
さすがに公爵家のご令嬢をいきなり呼び捨てにはしづらいです。
「ん~、本当はベルって呼んで欲しいわ。
あと、ずっと敬語だと寂しいのだけど。もうそろそろ普通に話してもいいでしょう?お父様」
どうやらレイモン様のご指示でお行儀良くしていたみたい。ミュリエルもマイルズに言われていたけど、挨拶しか守れなかったわ。
「程々にな。あと、君は年下なのだから呼び捨ては駄目だよ。親しき仲にも?」
「…礼儀が大切なのよね。分かりました」
「普段できないことは外でも難しいからね。
程良く仲の良い会話というものを身につけるのは大切だ」
「分かりました、お父様」
レイモン様はきっと良い父親なのでしょう。
私は両親からそんなことを言われたことはないし、そもそも食事を共にしたことも無いから比べようもないけれど。
何だかすでに疲れてきました。
家族とは何かしら。シルヴァン兄様と一緒にいる時は疲れたりしない。ナタリー達だってそうです。
「あ、さっきの続きだけど、魔法に興味はあります!だってとっても不思議ですもの!」
でも、ベルティーユ様は良い子なのだから笑顔でいなきゃ。
「だから魔法塔から先生が来てくれて嬉しいです」
「ベル?間違っても魔法を使おうとしないでね?」
「まだ魔力が発現して無いもの。使いたくても使えませんわ」
魔力の発現という言葉に反応してしまう。
…そっか。秘密が多いから疲れるんだ。
だって私達のことは彼らにどう伝えられているのか分からない。
何も知らないのか、知っているけど見て見ぬ振りをしているのか。どうしてこの家に住むのか、両親はどうなったのか。
たぶん、ベルティーユ様は知らない。でもリシャール様やロラン様はどうなの。
知らなかったとしても、それはいつまで?
「ブランシュさん、どうかした?」
リシャール様が心配げに声を掛けてくれたけど、どう答えていいのか分からない。
だって今頃気付くなんで。
ただ、誰かに見つけて欲しかった。
私という存在に気づいて欲しかっただけ。
でも、いざ外に飛び出せば、幸せそうな子ども達の輪の中で自分の異質さに気付いてしまった。
親に愛されていなくて、兄妹には存在すら知られていなかった。そんな両親を陥れてここまで這い上がって来たのだと彼らに知られるの?
どうしよう……
今だけ取り繕っても駄目だよ、だっていつかは知られてしまうもの。
ただ、私を見つけて欲しかった。
でも、今は……逃げてしまいたい。
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