悪女のレシピ〜略奪愛を添えて〜

ましろ

文字の大きさ
42 / 89
第二章

6.異質

しおりを挟む

何だかんだと揉めながらも兄妹一緒に向かったのは正解だったみたい。
お祖父様がホッとしたお顔をされたので、私達の不仲を心配されていたのだと気付きました。

「さて、改めて君達に挨拶を。
ダンドリュー公爵家へようこそ。親族でありながらも今まではすっかりと疎遠になってしまっていたが、これからは家族として仲良くできたらと思っている」

親族か。本当ならばもっと交流を持つものなのかな。家族とすらほとんど関わりが無かったからよく分かりません。

「我が家の子ども達を紹介しよう」
「初めまして。私は長男のリシャールです」
「次男のロランです。よろしく」
「ベルティーユと申します」

ロラン様は庭園で会った時とは雰囲気が違います。でも、目が合うと少し笑ってくれたから挨拶だからちゃんとしてるだけかな?
それからは私達もそれぞれ挨拶をして食事が始まりました。

「……にいさま、これ嫌い」

まただわ。ミュリエルはかなり偏食のようね。
リシャール様は表情に出していませんが、ロラン様とベルティーユ様からは何とも冷たい視線が向けられています。

「ミュリエル。もう体は元気になったのだから好き嫌いせずに食べなきゃ」
「……でも」
「いいのよ。いきなりは難しいと思うわ。
これから少しずつ食べられるようにしましょうね」

体調を崩すことが多かったミュリエルは、食べられないよりは多少偏食でも食べられる方がいいからと甘やかされてきたようです。

「ミュリエルさんはどこかお悪いの?」
「妹は幼い頃から魔力過多症を患っていて、先日治ったばかりなのです」
「まあ、それは大変でしたね。でも治って良かったわ。だって治療が難しい病なのでしょう?」

これでミュリエルと1つしか違わないのだから驚いてしまいます。ミュリエルが幼いのかベルティーユ様が利発なのか。

「ベル?あまり根掘り葉掘りと聞くものではないよ」
「まあ。私だって他人なら聞かないわ。でもこれからは家族として一緒に住むのでしょう?
なのにご病気のことを何も知らないだなんておかしいと思うわ。それに魔法でしか治せないって聞いたことがあるから気になっただけだもん」

それでも、ムッと拗ねている姿は可愛らしいです。

「ベルティーユ様は魔法にご興味が?」

とりあえず矛先を変えましょうか。
ミュリエルでは会話が続かないから仕方がありません。

「様はいりませんわ」
「ではベルティーユさん、とお呼びしてもいいかしら」

さすがに公爵家のご令嬢をいきなり呼び捨てにはしづらいです。

「ん~、本当はベルって呼んで欲しいわ。
あと、ずっと敬語だと寂しいのだけど。もうそろそろ普通に話してもいいでしょう?お父様」

どうやらレイモン様のご指示でお行儀良くしていたみたい。ミュリエルもマイルズに言われていたけど、挨拶しか守れなかったわ。

「程々にな。あと、君は年下なのだから呼び捨ては駄目だよ。親しき仲にも?」
「…礼儀が大切なのよね。分かりました」
「普段できないことは外でも難しいからね。
程良く仲の良い会話というものを身につけるのは大切だ」
「分かりました、お父様」

レイモン様はきっと良い父親なのでしょう。
私は両親からそんなことを言われたことはないし、そもそも食事を共にしたことも無いから比べようもないけれど。

何だかすでに疲れてきました。
家族とは何かしら。シルヴァン兄様と一緒にいる時は疲れたりしない。ナタリー達だってそうです。

「あ、さっきの続きだけど、魔法に興味はあります!だってとっても不思議ですもの!」

でも、ベルティーユ様は良い子なのだから笑顔でいなきゃ。

「だから魔法塔から先生が来てくれて嬉しいです」
「ベル?間違っても魔法を使おうとしないでね?」
「まだ魔力が発現して無いもの。使いたくても使えませんわ」

魔力の発現という言葉に反応してしまう。
…そっか。秘密が多いから疲れるんだ。

だって私達のことは彼らにどう伝えられているのか分からない。
何も知らないのか、知っているけど見て見ぬ振りをしているのか。どうしてこの家に住むのか、両親はどうなったのか。
たぶん、ベルティーユ様は知らない。でもリシャール様やロラン様はどうなの。

知らなかったとしても、それはいつまで?

「ブランシュさん、どうかした?」

リシャール様が心配げに声を掛けてくれたけど、どう答えていいのか分からない。

だって今頃気付くなんで。

ただ、誰かに見つけて欲しかった。
私という存在に気づいて欲しかっただけ。

でも、いざ外に飛び出せば、幸せそうな子ども達の輪の中で自分の異質さに気付いてしまった。

親に愛されていなくて、兄妹には存在すら知られていなかった。そんな両親を陥れてここまで這い上がって来たのだと彼らに知られるの?

どうしよう……

今だけ取り繕っても駄目だよ、だっていつかは知られてしまうもの。

ただ、私を見つけて欲しかった。


でも、今は……逃げてしまいたい。



しおりを挟む
感想 242

あなたにおすすめの小説

〈完結〉【書籍化&コミカライズ・取り下げ予定】毒を飲めと言われたので飲みました。

ごろごろみかん。
恋愛
王妃シャリゼは、稀代の毒婦、と呼ばれている。 国中から批判された嫌われ者の王妃が、やっと処刑された。 悪は倒れ、国には平和が戻る……はずだった。

〈完結〉遅効性の毒

ごろごろみかん。
ファンタジー
「結婚されても、私は傍にいます。彼が、望むなら」 悲恋に酔う彼女に私は笑った。 そんなに私の立場が欲しいなら譲ってあげる。

【完結】私はいてもいなくても同じなのですね ~三人姉妹の中でハズレの私~

紺青
恋愛
マルティナはスコールズ伯爵家の三姉妹の中でハズレの存在だ。才媛で美人な姉と愛嬌があり可愛い妹に挟まれた地味で不器用な次女として、家族の世話やフォローに振り回される生活を送っている。そんな自分を諦めて受け入れているマルティナの前に、マルティナの思い込みや常識を覆す存在が現れて―――家族にめぐまれなかったマルティナが、強引だけど優しいブラッドリーと出会って、少しずつ成長し、別離を経て、再生していく物語。 ※三章まで上げて落とされる鬱展開続きます。 ※因果応報はありますが、痛快爽快なざまぁはありません。 ※なろうにも掲載しています。

【商業企画進行中・取り下げ予定】さようなら、私の初恋。

ごろごろみかん。
ファンタジー
結婚式の夜、私はあなたに殺された。 彼に嫌悪されているのは知っていたけど、でも、殺されるほどだとは思っていなかった。 「誰も、お前なんか必要としていない」 最期の時に言われた言葉。彼に嫌われていても、彼にほかに愛するひとがいても、私は彼の婚約者であることをやめなかった。やめられなかった。私には責務があるから。 だけどそれも、意味のないことだったのだ。 彼に殺されて、気がつけば彼と結婚する半年前に戻っていた。 なぜ時が戻ったのかは分からない。 それでも、ひとつだけ確かなことがある。 あなたは私をいらないと言ったけど──私も、私の人生にあなたはいらない。 私は、私の生きたいように生きます。

〈完結〉前世と今世、合わせて2度目の白い結婚ですもの。場馴れしておりますわ。

ごろごろみかん。
ファンタジー
「これは白い結婚だ」 夫となったばかりの彼がそう言った瞬間、私は前世の記憶を取り戻した──。 元華族の令嬢、高階花恋は前世で白い結婚を言い渡され、失意のうちに死んでしまった。それを、思い出したのだ。前世の記憶を持つ今のカレンは、強かだ。 "カーター家の出戻り娘カレンは、貴族でありながら離婚歴がある。よっぽど性格に難がある、厄介な女に違いない" 「……なーんて言われているのは知っているけど、もういいわ!だって、私のこれからの人生には関係ないもの」 白魔術師カレンとして、お仕事頑張って、愛猫とハッピーライフを楽しみます! ☆恋愛→ファンタジーに変更しました

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

強制力がなくなった世界に残されたものは

りりん
ファンタジー
一人の令嬢が処刑によってこの世を去った 令嬢を虐げていた者達、処刑に狂喜乱舞した者達、そして最愛の娘であったはずの令嬢を冷たく切り捨てた家族達 世界の強制力が解けたその瞬間、その世界はどうなるのか その世界を狂わせたものは

王女の夢見た世界への旅路

ライ
ファンタジー
侍女を助けるために幼い王女は、己が全てをかけて回復魔術を使用した。 無茶な魔術の使用による代償で魔力の成長が阻害されるが、代わりに前世の記憶を思い出す。 王族でありながら貴族の中でも少ない魔力しか持てず、王族の中で孤立した王女は、理想と夢をかなえるために行動を起こしていく。 これは、彼女が夢と理想を求めて自由に生きる旅路の物語。 ※小説家になろう様にも投稿しています。

処理中です...