王弟殿下の番様は溺れるほどの愛をそそがれ幸せに…

ましろ

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9. ラウラ(1)

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ボネット男爵家は貧しい。
たびたび起こる水害に頭を悩ませている。大規模な工事をするような資金はもちろんなく、なんとかぎりぎりでしのいでいる有様だ。


「ラウラ、すまない。せっかく16歳の誕生日を迎えたのに、デビュタントの準備ができないかもしれない…」

「こんな大変なときに私だけ着飾ってパーティーなんて無理よ。
少し遅らせても大丈夫!私はみんなにおめでとうって言ってもらえるほうがうれしいもの」


お父様が落ち込んでしまったがこればかりは仕方がない。
あと少しでお兄様が学院を卒業して戻ってくる。そうしたら領地のことももっと手が回るようになるだろう。
貧しいことはそうそう変わらないとは思うが。

もしデビュタントに参加できなくても大丈夫だという気持ちに嘘はない。もちろん幼い頃から憧れは持っている。しかし、現状を見ないようにはできない。
いつか王子様と……なんて夢を追う子供ではないもの。









「マリィ、なんだか嬉しそうね。いいことでもあったの?」


侍女のマリィは私が幼い頃からの側にいてくれる幼馴染のような存在だ。
今日は何度もソワソワと外を気にしているのが気になって声をかけた。


「すみません、お嬢様!」

「べつに叱ったわけじゃないわよ。ずっと外を気にしているから何かあるのかと思っただけよ」

「じつは昨日、お隣のブランディス領で働いてる子に合った時に聞いたんですが、近々水害対策の視察で公爵様がいらっしゃるそうなんです!番探しで噂の方ですよ!
ふだんこの辺りに王都から人が来ることって少ないじゃないですか。
まさかの有名な方ですし。
だから気になってしまって。すみません」

「そうなの?知らなかったわ。
でも私もその話は聞いていないし、我が家には来られないわ。まっすぐ素通りして行かれるはずよ。残念だったわね」

「ですよねぇ。めったにお目にかかれない都会の方だから、もしかして見られるかも!と思ったんですが」

「ふふ、もし公爵様が来られたら、お父様が腰を抜かしてしまうわ」

「残念です。もしかしたらお嬢様を見初めてくださるかもしれないのに!」

「マリィったら不敬よ。それに公爵様は数多の女性を袖にされてきたと言うじゃない。私のような田舎の小娘なんて歯牙にもかけないわよ」

「私の自慢のお嬢様ですよ!どんな殿方だって一目惚れしちゃいます。公爵様以外の殿方だっていらっしゃると思うのに、お会い出来ないなんて勿体無いです~」

「ありがとう。身内贔屓でも嬉しいわ」

「もう!信じてくださらないんだから!」



優しいマリィ。あなたの言うことをまったく信じていないわけでわないわ。自分でもそれなりに可愛いのでは?と思いはする。でもそれなりに、だ。外見も中身も田舎の小娘にしてはそれなりに、なのだ。



”番探しの王弟殿下“
こんな田舎にすら噂が回ってくるほど有名な公爵様。
妖精姫と噂される程の美しさの隣国の王女、美しさだけでなく博識で有名な公爵令嬢、清貧の心を持ち民に寄り添い、その心の美しさから聖女と称えられた令嬢など、外見のみならず、聡明さ、謙虚さ、愛国心、どんなに優れた女性でも番ではないと一蹴されてきた、それが許されてきた方だ。
正直羨ましいとは思う。愛される方ではなく公爵様自身が。
私は番だとか愛する方だとかそんなことは考えていられない。どうしたら少しでも我が男爵家に利益をもたらせるか。それが第一条件だ。それも持参金が乏しいにも関わらず、との悪条件付。
暴力をふるう方は避けたい。できれば危ない性癖の方も。浮気癖や愛人を持ちたい方は、散財しないのであればいっそのこと白い結婚で乗り切れるのではないか。年配の方の後妻くらいならば上々といった所だろう。

人生ままならないな、とため息をつきたいところだ。

“番”探しをのんびりできるなんてうらやましいわね……




まさか数日後、自分がその番に選ばれるとは思いもしなかった。
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