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どんなに悲しんでも朝は来るのよね。
いい天気過ぎて嫌になる。
「おはようございます、今日はどんな髪型にしますか?ドレスはペールグリーンなんていかがです?」
「……今日は何かあったかしら。ずいぶん張り切ってるわね」
朝からテキパキとお世話をしてくれるニコルの目が輝いている。これは私を着飾る時の顔だ。
「あら、お客様が見えるんですよ。お嬢様のお美しい姿を披露しないと!ん~、ハーフアップにして白い小花の髪飾りにしましょう。あざといくらいの清楚な感じに!」
……お客様?まさか殿下が?
会うことを想像するだけで吐きそう。
「あ、違いますよ!今日来られるのは図書室の君です!」
「……え?」
「おう、久しぶり」
先輩らしい雑な挨拶。いつも通り過ぎて……
なんでかな、怖くない。
「……お久しぶりです。えと、なんで?」
ダメだ。何を言ってるの、まずはお見舞いのお礼とかいろいろあるじゃない!
「心配くらいしてもいいだろう。本好き仲間なんだから。はい、コレ。お前が引きこもってる間に出た新刊」
私の好きな作家さんの本。私が勝手に仲間って言い出しただけなのに。
なんだかすっかり涙腺がゆるくなったらしく涙が込み上げて来る。淑女の私、早く復活して!
「あ~っと、もしかして俺のこと怖かったか?」
先輩が慌てて立ち上がりハンカチを貸してくれる。意外だ。ハンカチなんて持ってなさそうなのに。
「違うんです、嬉しくて。いつもお見舞いのプレゼントを送ってくれてありがとうございます。本当に嬉しかったの。……先輩だけだったから。学園で心配してくれたのは」
「そっか、ならよかった」
泣いた恥ずかしさから、つい沈黙が流れる。
「なぁ、なんで怒らないんだ?」
「え?」
怒る?何を?
「全部だよ。どうして泣いてるだけなんだ。もっと怒ればいいだろう。浮気されて悪者にされて。それだけでも酷いのに、アイツはお前に怪我までさせたんだぞ!」
「アイツなんて言ったら駄目ですよ」
「怒ってるからいいんだよ!どうして被害者のお前が泣き暮らしてるんだ!怯えてるんだ!
お前は何も悪くないだろ。堂々としてろ!」
私の為に本気で怒ってくれるんだ。嬉しい。嬉しいけど……
「……怖いの。あの時、殿下に殺されるかと思ったのよ。何か言って、また豹変したらって思うと怖くて何も言えなくなる……
先輩はあの後大丈夫だったんですか?」
そうだ、あの時助けてくれたお礼も言っていない。激昂している殿下を止めて本当に大丈夫だったの?
「おう、ここぞとばかりに殴っておいた」
「え?!」
「反省文で済んだから平気だ。王子が婚約者を殺そうとしてたから必死で止めましたって説明したし」
何をしてるの、この人は!
「王子だから何だよ。あんなに好き勝手していいのか?王子だからこそ正しい行動をするべきだろう」
「でも、あれは…」
「魔法のせいだから?」
「なんで!?」
魅了のせいだと知らせが来たのは昨日のことなのに、どうして先輩は知っているの?
「掛かったのが殿下だけじゃないからな。生徒全員に聞き取り調査とか色々あったんだよ。俺は学年も一緒だし、質問を聞いてたら分かるよ。
確かにここ一年学園はおかしかった。殿下と公女の仲が学園中に認められるなんて異常だよな。俺は認めてないけど」
「どうして先輩には掛からなかったのかな」
マルティナ様の好意があるかどうか?でも、他の人達は二人を理想の恋人達だと応援していただけよね。それなら先輩も応援組に入っていてもおかしくないのに。
「興味がないから?」
「へ?」
やだ、変な反応しちゃった。でも興味?マルティナ様に惹かれてるかどうかで変わるということ?
「あんなに美人で魅力的な方なのに」
「お前は見かけだけで人を好きになれるか?」
あぁ、確かに。素敵だなとは思っても、ひととなりが分からないと好きにはならないかな。
「ならないですね」
「だろ?あとは羨ましい、とかじゃないか?美男美女でお似合いとか言ってたし」
そっか。憧れて応援したい気持ちが大きく膨らんだということ。
「……ちょっと待って。ということは、殿下がガッツリ魅了に掛かったのは、やっぱりマルティナ様に惹かれたからなの?」
「どうだろうな。そうとも考えられるし、マルティナの気持ちの強さかもしれない」
確かにお父様もそう言っていたわ。マルティナ様の気持ちが強くてって。……でも本当に?
他の人達は自分達の気持ちの強さで掛かり方が違うじゃない。
「……殿下が私を婚約者に選んだ理由って、ケーキを食べてる姿が可愛かったからなんですって……」
「は?マニアックだな」
「……ようするに一目惚れ、ですよね」
そうよ、すっかり忘れてたけどあの方は一目惚れで婚約者を選ぶおかしな人なのよ!王子なのに!更に周りはそれを止めない駄目揃い。
愛されるお姫様扱いに慣れて、ヒロイン気分だった?もしかして私、悲劇に酔ってたの?
「……なるほど。確かに私は何を嘆き悲しんでいたのでしょう」
「だろ?」
本当になんて仕様もない。
「うっかり悲劇のヒロイン病に罹患していたようです。物語を読んでいて、なぜそんな考えに?と疑問に思っていたはずなのに!」
「ああ、偶にあるよな。そんな馬鹿さっさと見切りを付けて新しい人生に進めばいいのに!ってやつ」
「はい、今まさにそれです!先輩、感謝します!しっかり目が覚めましたわ」
「ん、おめでとう」
なんだろう。世界が明るくなった感じ。
いつからおかしくなっていたのかしら。怖いわ、ヒロイン病。二度と罹りたくない!
「よし、じゃあ帰るよ」
「もうですか?」
「だってもう学園にも来れるだろう?今度その本の感想教えろよな」
「……そうですね、ちゃんと卒業したいので。先輩、本当にありがとうございます!」
先輩が帰ってから、お父様達と話をした。学園に通うのは心配されたけど、負けたくないという思いが伝わったのか、最後は応援してくれた。
でも、いきなり教室で授業をうけるのは難しいかもしれないので、まずは先生との面談をする為にお父様と一緒に行くことになった。
先輩に会えるかな。ちゃんと来れたよって伝えたい……
でも知ってた。会いたい人には会えなくて、会いたくない人に限って会えちゃうのよ。
「リーゼ!会いたかった!」
「……王子殿下、ごきげんよう」
いい天気過ぎて嫌になる。
「おはようございます、今日はどんな髪型にしますか?ドレスはペールグリーンなんていかがです?」
「……今日は何かあったかしら。ずいぶん張り切ってるわね」
朝からテキパキとお世話をしてくれるニコルの目が輝いている。これは私を着飾る時の顔だ。
「あら、お客様が見えるんですよ。お嬢様のお美しい姿を披露しないと!ん~、ハーフアップにして白い小花の髪飾りにしましょう。あざといくらいの清楚な感じに!」
……お客様?まさか殿下が?
会うことを想像するだけで吐きそう。
「あ、違いますよ!今日来られるのは図書室の君です!」
「……え?」
「おう、久しぶり」
先輩らしい雑な挨拶。いつも通り過ぎて……
なんでかな、怖くない。
「……お久しぶりです。えと、なんで?」
ダメだ。何を言ってるの、まずはお見舞いのお礼とかいろいろあるじゃない!
「心配くらいしてもいいだろう。本好き仲間なんだから。はい、コレ。お前が引きこもってる間に出た新刊」
私の好きな作家さんの本。私が勝手に仲間って言い出しただけなのに。
なんだかすっかり涙腺がゆるくなったらしく涙が込み上げて来る。淑女の私、早く復活して!
「あ~っと、もしかして俺のこと怖かったか?」
先輩が慌てて立ち上がりハンカチを貸してくれる。意外だ。ハンカチなんて持ってなさそうなのに。
「違うんです、嬉しくて。いつもお見舞いのプレゼントを送ってくれてありがとうございます。本当に嬉しかったの。……先輩だけだったから。学園で心配してくれたのは」
「そっか、ならよかった」
泣いた恥ずかしさから、つい沈黙が流れる。
「なぁ、なんで怒らないんだ?」
「え?」
怒る?何を?
「全部だよ。どうして泣いてるだけなんだ。もっと怒ればいいだろう。浮気されて悪者にされて。それだけでも酷いのに、アイツはお前に怪我までさせたんだぞ!」
「アイツなんて言ったら駄目ですよ」
「怒ってるからいいんだよ!どうして被害者のお前が泣き暮らしてるんだ!怯えてるんだ!
お前は何も悪くないだろ。堂々としてろ!」
私の為に本気で怒ってくれるんだ。嬉しい。嬉しいけど……
「……怖いの。あの時、殿下に殺されるかと思ったのよ。何か言って、また豹変したらって思うと怖くて何も言えなくなる……
先輩はあの後大丈夫だったんですか?」
そうだ、あの時助けてくれたお礼も言っていない。激昂している殿下を止めて本当に大丈夫だったの?
「おう、ここぞとばかりに殴っておいた」
「え?!」
「反省文で済んだから平気だ。王子が婚約者を殺そうとしてたから必死で止めましたって説明したし」
何をしてるの、この人は!
「王子だから何だよ。あんなに好き勝手していいのか?王子だからこそ正しい行動をするべきだろう」
「でも、あれは…」
「魔法のせいだから?」
「なんで!?」
魅了のせいだと知らせが来たのは昨日のことなのに、どうして先輩は知っているの?
「掛かったのが殿下だけじゃないからな。生徒全員に聞き取り調査とか色々あったんだよ。俺は学年も一緒だし、質問を聞いてたら分かるよ。
確かにここ一年学園はおかしかった。殿下と公女の仲が学園中に認められるなんて異常だよな。俺は認めてないけど」
「どうして先輩には掛からなかったのかな」
マルティナ様の好意があるかどうか?でも、他の人達は二人を理想の恋人達だと応援していただけよね。それなら先輩も応援組に入っていてもおかしくないのに。
「興味がないから?」
「へ?」
やだ、変な反応しちゃった。でも興味?マルティナ様に惹かれてるかどうかで変わるということ?
「あんなに美人で魅力的な方なのに」
「お前は見かけだけで人を好きになれるか?」
あぁ、確かに。素敵だなとは思っても、ひととなりが分からないと好きにはならないかな。
「ならないですね」
「だろ?あとは羨ましい、とかじゃないか?美男美女でお似合いとか言ってたし」
そっか。憧れて応援したい気持ちが大きく膨らんだということ。
「……ちょっと待って。ということは、殿下がガッツリ魅了に掛かったのは、やっぱりマルティナ様に惹かれたからなの?」
「どうだろうな。そうとも考えられるし、マルティナの気持ちの強さかもしれない」
確かにお父様もそう言っていたわ。マルティナ様の気持ちが強くてって。……でも本当に?
他の人達は自分達の気持ちの強さで掛かり方が違うじゃない。
「……殿下が私を婚約者に選んだ理由って、ケーキを食べてる姿が可愛かったからなんですって……」
「は?マニアックだな」
「……ようするに一目惚れ、ですよね」
そうよ、すっかり忘れてたけどあの方は一目惚れで婚約者を選ぶおかしな人なのよ!王子なのに!更に周りはそれを止めない駄目揃い。
愛されるお姫様扱いに慣れて、ヒロイン気分だった?もしかして私、悲劇に酔ってたの?
「……なるほど。確かに私は何を嘆き悲しんでいたのでしょう」
「だろ?」
本当になんて仕様もない。
「うっかり悲劇のヒロイン病に罹患していたようです。物語を読んでいて、なぜそんな考えに?と疑問に思っていたはずなのに!」
「ああ、偶にあるよな。そんな馬鹿さっさと見切りを付けて新しい人生に進めばいいのに!ってやつ」
「はい、今まさにそれです!先輩、感謝します!しっかり目が覚めましたわ」
「ん、おめでとう」
なんだろう。世界が明るくなった感じ。
いつからおかしくなっていたのかしら。怖いわ、ヒロイン病。二度と罹りたくない!
「よし、じゃあ帰るよ」
「もうですか?」
「だってもう学園にも来れるだろう?今度その本の感想教えろよな」
「……そうですね、ちゃんと卒業したいので。先輩、本当にありがとうございます!」
先輩が帰ってから、お父様達と話をした。学園に通うのは心配されたけど、負けたくないという思いが伝わったのか、最後は応援してくれた。
でも、いきなり教室で授業をうけるのは難しいかもしれないので、まずは先生との面談をする為にお父様と一緒に行くことになった。
先輩に会えるかな。ちゃんと来れたよって伝えたい……
でも知ってた。会いたい人には会えなくて、会いたくない人に限って会えちゃうのよ。
「リーゼ!会いたかった!」
「……王子殿下、ごきげんよう」
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