魔法のせいだから許して?

ましろ

文字の大きさ
6 / 50

6.

しおりを挟む
「ごめん!リーゼ、私が愚かだったせいで君に辛い思いをさせ「止まって下さい!」…え?」

「お願いです、それ以上近づかないで」


やっぱり殿下はまだ怖い。頭では大丈夫だと思っていても、体が勝手に震える。


「……申し訳ありません。それ以上近くに来られると……怖すぎて吐きそうです。お話しならその位置からお願いします」


ここはもう素直に伝えましょう。殿下の前でケロッと吐くよりマシなはず。


「……愛してるんだ、リーゼ。だから迎えに来たよ。お願いだ、もう一度やり直そう!」


ダメだ、拒絶反応で吐きそう……
慌ててハンカチで口を押さえる。もう少し耐えて、私!


「すでに私達の婚約は白紙に戻っています。今更無かったことにはできませんわ。婚約とはそんな簡単なものではありません。
どうか、他の女性をお探し下さい。素敵な出会いがある事をお祈り申し上げます」


よし、言い切った!


「大丈夫だよ、リーゼ。君さえ頷いてくれたら再婚約していいと言われているんだ。だって魔法のせいだったのだし、婚約白紙は一時的な措置というだけだ。安心して?」


安心材料は一つも無いです。なぜお父様が戻って来ないのかしら。ようするに先生に裏切られた?帰り際にお父様だけ呼びとめたのはそういうこと?
権力は教育者も屈服させるのか。教え子は守ってほしかった。


「見てください」


殿下との距離は1m。ちゃんと見えるわよね?ちょっと心配になりながら左手を前に出す。


「見えますか?震えているでしょう。……あなたが怖いのです。頭ではもう大丈夫だと思っていても、体があの時の恐怖を忘れてくれません。ですから、一緒にいるなんて無理ですわ。どうかお許しください」


気持ちと体が別物みたい。感情では殿下なんかに負けたくないと思っているのに、体は震えるし吐きそうだし頭がグラグラする。
早く帰りたいなぁ。あ、先輩に会えなかった。


「……私はそれ程までに君を傷付けてしまったのだね。
私はここで誓う。一生を賭けて君に償うことを!」

「……え?」

「私達の愛はどんな壁も乗り越えられるよ。君の傷は私が癒す。さあ、おいで?」


え、怖い。なに?こんな気狂いだった?
同じ言語を使ってるのにまっっったく通じないのはなぜなの?魔法の後遺症?!


「……無理です吐きます殿下を汚物塗れにはできませんご容赦ください」


絶対に近づいて来ないであろうワードで牽制する。だって殿下はきれい好き。ほら、一歩下がった。


「そうだね、少し焦り過ぎたようだ、すまなかった。私達には時間がたくさんある。これからは毎日君に愛を捧げよう。愛してるよリーゼ、また明日会おう」


そう言って颯爽と去っていく。
私はすでに放心状態。どうしよう、殿下のあの怒涛の攻めを毎日くらうの?死ねるんじゃないかしら。
お父様が戻ってくるまで、私は呆然と佇む事しかできなかった。






「助けて先輩!勝てる気がしません!」

「おう?」


学園に戻って3日。すでに死にそうです!


「殿下が怖いんです、まったく諦めてくれません!陛下達も私さえ承諾したら再婚約可能だって言っちゃったんですよ!
毎日毎日プレゼントは届くし、もちろん送り返すけど!毎朝迎えにくるし、吐くから無理だって断ってるけど!休み時間もすぐ来るし愛を囁きまくるし周りも温かい目で見守ってて、ゴール直前みたいな!
なんで?あんなに私を敵認定してたくせに!
お陰様で未だに友達すら作れません……」


殿下を撒いてやっとたどり着いた図書室。いつも通り本を読む先輩に感情が溢れる。
私はこんなに苦労してるのに、なんでシレッと読書してるの!私だって本の世界にのめり込みたい!


「俺が助けていいのか?」

「へ?」

「俺が助けに入ったら、俺達が仲がいいと殿下に知られる。それでもいい?覚悟はあるか?」


先輩のこんなに真剣な顔は初めて見た。
私達の仲……本が好きなこと?でも、先輩が言ってるのはそんなことじゃない。


「……先輩は私のことが好きなの?」

「嫌いなヤツの為にプレゼントを選んだりしないな。……すっごく恥ずかしかったんだぞ」


だよね、恥ずかしいよね。違う、そこじゃない。


「……私は、先輩に好意はあります。でも、殿下のことが強烈過ぎて、これが友情なのか恋なのか判別できません」

「わかってる。ただ、その間に俺が割って入ってもお前は大丈夫か?これ以上お前が傷付く姿を見たくはない。もちろん諦めないけどな」


いつからそんな風に思ってたんだろう。
ずっと友達だと思って……本当に?
友達が居なすぎてちょっと分からない。友情以上恋愛未満。そんな感じ。


「えと、殿下に知られるのは保留でお願いします。心の拠り所が無くなるのがイヤなので」

「そういうことをはっきり言う所とかが好み。貴族的な会話しかしない女が苦手。まずは一つだけな」


ニヤリと笑う姿が憎たらしい。でもそっか。素直に言っていいんだ。


「私も。先輩の飾らない話し方は気に入ってます」


二人でちょっと笑い合ってから本を読む。
私のお気に入りの時間。



しおりを挟む
感想 156

あなたにおすすめの小説

三年の想いは小瓶の中に

月山 歩
恋愛
結婚三周年の記念日だと、邸の者達がお膳立てしてくれた二人だけのお祝いなのに、その中心で一人夫が帰らない現実を受け入れる。もう彼を諦める潮時かもしれない。だったらこれからは自分の人生を大切にしよう。アレシアは離縁も覚悟し、邸を出る。 ※こちらの作品は契約上、内容の変更は不可であることを、ご理解ください。

彼は亡国の令嬢を愛せない

黒猫子猫
恋愛
セシリアの祖国が滅んだ。もはや妻としておく価値もないと、夫から離縁を言い渡されたセシリアは、五年ぶりに祖国の地を踏もうとしている。その先に待つのは、敵国による処刑だ。夫に愛されることも、子を産むことも、祖国で生きることもできなかったセシリアの願いはたった一つ。長年傍に仕えてくれていた人々を守る事だ。その願いは、一人の男の手によって叶えられた。 ただ、男が見返りに求めてきたものは、セシリアの想像をはるかに超えるものだった。 ※同一世界観の関連作がありますが、これのみで読めます。本シリーズ初の長編作品です。 ※ヒーローはスパダリ時々ポンコツです。口も悪いです。

愛は全てを解決しない

火野村志紀
恋愛
デセルバート男爵セザールは当主として重圧から逃れるために、愛する女性の手を取った。妻子や多くの使用人を残して。 それから十年後、セザールは自国に戻ってきた。高い地位に就いた彼は罪滅ぼしのため、妻子たちを援助しようと思ったのだ。 しかしデセルバート家は既に没落していた。 ※なろう様にも投稿中。

【完結】お飾りの妻からの挑戦状

おのまとぺ
恋愛
公爵家から王家へと嫁いできたデイジー・シャトワーズ。待ちに待った旦那様との顔合わせ、王太子セオドア・ハミルトンが放った言葉に立ち会った使用人たちの顔は強張った。 「君はお飾りの妻だ。装飾品として慎ましく生きろ」 しかし、当のデイジーは不躾な挨拶を笑顔で受け止める。二人のドタバタ生活は心配する周囲を巻き込んで、やがて誰も予想しなかった展開へ…… ◇表紙はノーコピーライトガール様より拝借しています ◇全18話で完結予定

(完結)婚約破棄から始まる真実の愛

青空一夏
恋愛
 私は、幼い頃からの婚約者の公爵様から、『つまらない女性なのは罪だ。妹のアリッサ王女と婚約する』と言われた。私は、そんなにつまらない人間なのだろうか?お父様もお母様も、砂糖菓子のようなかわいい雰囲気のアリッサだけをかわいがる。  女王であったお婆さまのお気に入りだった私は、一年前にお婆さまが亡くなってから虐げられる日々をおくっていた。婚約者を奪われ、妹の代わりに隣国の老王に嫁がされる私はどうなってしまうの?  美しく聡明な王女が、両親や妹に酷い仕打ちを受けながらも、結局は一番幸せになっているという内容になる(予定です)

白い結婚の行方

宵森みなと
恋愛
「この結婚は、形式だけ。三年経ったら、離縁して養子縁組みをして欲しい。」 そう告げられたのは、まだ十二歳だった。 名門マイラス侯爵家の跡取りと、書面上だけの「夫婦」になるという取り決め。 愛もなく、未来も誓わず、ただ家と家の都合で交わされた契約だが、彼女にも目的はあった。 この白い結婚の意味を誰より彼女は、知っていた。自らの運命をどう選択するのか、彼女自身に委ねられていた。 冷静で、理知的で、どこか人を寄せつけない彼女。 誰もが「大人びている」と評した少女の胸の奥には、小さな祈りが宿っていた。 結婚に興味などなかったはずの青年も、少女との出会いと別れ、後悔を経て、再び運命を掴もうと足掻く。 これは、名ばかりの「夫婦」から始まった二人の物語。 偽りの契りが、やがて確かな絆へと変わるまで。 交差する記憶、巻き戻る時間、二度目の選択――。 真実の愛とは何かを、問いかける静かなる運命の物語。 ──三年後、彼女の選択は、彼らは本当に“夫婦”になれるのだろうか?  

【完結】亡くなった人を愛する貴方を、愛し続ける事はできませんでした

凛蓮月@騎士の夫〜発売中です
恋愛
【おかげさまで完全完結致しました。閲覧頂きありがとうございます】 いつか見た、貴方と婚約者の仲睦まじい姿。 婚約者を失い悲しみにくれている貴方と新たに婚約をした私。 貴方は私を愛する事は無いと言ったけれど、私は貴方をお慕いしておりました。 例え貴方が今でも、亡くなった婚約者の女性を愛していても。 私は貴方が生きてさえいれば それで良いと思っていたのです──。 【早速のホトラン入りありがとうございます!】 ※作者の脳内異世界のお話です。 ※小説家になろうにも同時掲載しています。 ※諸事情により感想欄は閉じています。詳しくは近況ボードをご覧下さい。(追記12/31〜1/2迄受付る事に致しました)

私を忘れた貴方と、貴方を忘れた私の顛末

コツメカワウソ
恋愛
ローウェン王国西方騎士団で治癒師として働くソフィアには、魔導騎士の恋人アルフォンスがいる。 平民のソフィアと子爵家三男のアルフォンスは身分差があり、周囲には交際を気に入らない人間もいるが、それでも二人は幸せな生活をしていた。 そんな中、先見の家門魔法により今年が23年ぶりの厄災の年であると告げられる。 厄災に備えて準備を進めるが、そんな中アルフォンスは魔獣の呪いを受けてソフィアの事を忘れ、魔力を奪われてしまう。 アルフォンスの魔力を取り戻すために禁術である魔力回路の治癒を行うが、その代償としてソフィア自身も恋人であるアルフォンスの記憶を奪われてしまった。 お互いを忘れながらも対外的には恋人同士として過ごす事になるが…。 番外編始めました。 世界観は緩めです。 ご都合主義な所があります。 誤字脱字は随時修正していきます。

処理中です...