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7.天使は永遠に訪れない
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セレスティーヌが優勢なのは昼までだった。
何故なら陛下が契約書を確認し、方針を変えたから。
「まずは私からの話を最後まで聞いてくれ。返事は必要ない」
セレスティーヌの意思は聞かないという宣言。
「今日からお前は私の物だ。頭の先から足の先まで全てな。
私はお前が侍女と同じ出で立ちをしているのは気に食わぬ。明日からは私が用意した衣装に着替えろ。全て私の私費だ。私はお前を着飾る権利がある。お前に断る権限は無い」
結局は自分が一番か。セレスティーヌに媚びる自分などありえないのだな。
「それと。毎日これを飲むように」
そう言って小瓶を差し出す。
「避妊薬だ」
……なんだそれ。セレスティーヌを抱くけど子供は必要無いって?なんて自分勝手なんだ!
セレスティーヌだってお前の子など欲しくないだろう。だけど、健康な女性なのに、永遠に家族は持てないと言われたのだ。それは、女性としての幸せの一つを、またコイツが奪うということだ。
「私はお前を誰とも共有するつもりはない。子も含めてだ。お前に触れていいのは私だけ。分かったな」
返事はいらないと言ったのはこういうことか。返事では無い。反論を許さないということ。
「さあ、理解したなら今日の分を飲むといい。せっかくの休日だ。ゆっくりと愛したいからね」
セレスティーヌは泣くどころか表情一つ変えなかった。差し出された薬を飲み、ただ大人しく座っているだけ。
「では、ここからはお前に選ばせてやろう。このまま事を進めるか、護衛に出て行ってほしいか。お前が好きな方を望め。お前の頼みを聞いてやろう」
最低野郎め。彼女自身に決めさせるのか。お願いですって?夫に見られるのは恥ずかしいと?
「陛下のご意向に従います」
………………は?
え、ずっとここにいるの俺。さすがに心が折れそうですが!いや、言ったよずっと見てるって。一人じゃないって。でもさぁ!
「……私は選ぶように言ったのだが」
「選びました。陛下の考えに従うことを」
「いいのだな?」
「はい」
いや、俺にも聞いて?!
「護衛はドアの前に。絶対にセレスティーヌを見るな」
決定事項かよ!!
「ねえ、トリスタン。間違いがあったら教えて」
「他の男の名前を呼ぶな!」
「夫です。当然の権利です」
セレスティーヌさん。それは死なば諸共って奴ですか。俺は一蓮托生なんですね!
覚悟を決めろトリスタン。格好良さで奥さんに負けるな!
「かしこまりました。貴方を守る権限を陛下より賜っております。契約書に反する事は指摘させていただきます」
それからは本当に地獄の様な時間だった。陛下は契約書に従い、愛の強要はしなかった。薬や道具も使わない。
但し不満は口にする。
セレスティーヌは徹底的に無反応を決め込んだ。
「死体を抱いているようだ」
そう言いながらも、余計に反応させようと徹底的に嬲る。言葉でも行為でも。
一度でも声が聞こえると、勝ち誇ったかの様に笑うから。
それでも俺は何も出来ない。何も出来なかった……
行為は昼過ぎから夕方まで続いた。その後、共に湯船に浸かり、食事をし。
「ご苦労だったな、トリスタン。夜勤の者に伝えてくれ。部屋からの嬌声は気にするなとな」
「……かしこまりました。本日はこれにて失礼させていただきます」
それから。ひたすらに剣を振るった。頭の中では彼女の息遣いが、押し殺せなかった嬌声が、啜り泣きが響き渡って。
そして、それらに反応しそうになる自分が。
全てが許せなくて、今すぐにでも殺しに行きたかった。
「ずいぶんと荒れてるな」
「……団長……」
「悔しいか」
「……」
「お前も厄介な女に惚れたな」
惚れた……そうだな。だって俺だって一目惚れだった。それは本当に淡い恋心だったけれど、それでも我慢したんだ。陛下の視線に気がついてしまったから。それに年の差だって。
そうしたら、まさかあんなことになるなんて!!
それでも心折れず、凛としている彼女にもう一度心を奪われた。仮初でも結婚できたのが嬉しくて。
「……強くなりたいです」
「なれよ。男だろ?」
「はい。団長、指導をお願い出来ますか!」
俺には何も無い。あるのはこの体一つだけだ。
「特別指導は高くつくぞ?」
「~~っ、出世払いでお願いします!」
「いいぜ。一年で副団長まで登り詰めろ」
「団長。蹴落とされる副団長が後ろにいるの知ってて言ってますよね。蹴落とされた私はどうすればいいのですか」
「ん?団長補佐でいいだろ。書類仕事は任せた」
「嫌ですよ、自分でやって下さい。脳筋ばかりで本当に困る」
大丈夫、諦めるな。こうやって助けてくれる人達がいる。
「半年!半年で副団長に勝ってみせます!」
「ほほう?いいでしょう。指導は私もしますよ。楽しみですね?」
「あざす!」
剣技を鍛えたからって陛下に勝てるわけじゃない。それでも、僅かな可能性に賭けたい。
絶対に強くなってみせる!
何故なら陛下が契約書を確認し、方針を変えたから。
「まずは私からの話を最後まで聞いてくれ。返事は必要ない」
セレスティーヌの意思は聞かないという宣言。
「今日からお前は私の物だ。頭の先から足の先まで全てな。
私はお前が侍女と同じ出で立ちをしているのは気に食わぬ。明日からは私が用意した衣装に着替えろ。全て私の私費だ。私はお前を着飾る権利がある。お前に断る権限は無い」
結局は自分が一番か。セレスティーヌに媚びる自分などありえないのだな。
「それと。毎日これを飲むように」
そう言って小瓶を差し出す。
「避妊薬だ」
……なんだそれ。セレスティーヌを抱くけど子供は必要無いって?なんて自分勝手なんだ!
セレスティーヌだってお前の子など欲しくないだろう。だけど、健康な女性なのに、永遠に家族は持てないと言われたのだ。それは、女性としての幸せの一つを、またコイツが奪うということだ。
「私はお前を誰とも共有するつもりはない。子も含めてだ。お前に触れていいのは私だけ。分かったな」
返事はいらないと言ったのはこういうことか。返事では無い。反論を許さないということ。
「さあ、理解したなら今日の分を飲むといい。せっかくの休日だ。ゆっくりと愛したいからね」
セレスティーヌは泣くどころか表情一つ変えなかった。差し出された薬を飲み、ただ大人しく座っているだけ。
「では、ここからはお前に選ばせてやろう。このまま事を進めるか、護衛に出て行ってほしいか。お前が好きな方を望め。お前の頼みを聞いてやろう」
最低野郎め。彼女自身に決めさせるのか。お願いですって?夫に見られるのは恥ずかしいと?
「陛下のご意向に従います」
………………は?
え、ずっとここにいるの俺。さすがに心が折れそうですが!いや、言ったよずっと見てるって。一人じゃないって。でもさぁ!
「……私は選ぶように言ったのだが」
「選びました。陛下の考えに従うことを」
「いいのだな?」
「はい」
いや、俺にも聞いて?!
「護衛はドアの前に。絶対にセレスティーヌを見るな」
決定事項かよ!!
「ねえ、トリスタン。間違いがあったら教えて」
「他の男の名前を呼ぶな!」
「夫です。当然の権利です」
セレスティーヌさん。それは死なば諸共って奴ですか。俺は一蓮托生なんですね!
覚悟を決めろトリスタン。格好良さで奥さんに負けるな!
「かしこまりました。貴方を守る権限を陛下より賜っております。契約書に反する事は指摘させていただきます」
それからは本当に地獄の様な時間だった。陛下は契約書に従い、愛の強要はしなかった。薬や道具も使わない。
但し不満は口にする。
セレスティーヌは徹底的に無反応を決め込んだ。
「死体を抱いているようだ」
そう言いながらも、余計に反応させようと徹底的に嬲る。言葉でも行為でも。
一度でも声が聞こえると、勝ち誇ったかの様に笑うから。
それでも俺は何も出来ない。何も出来なかった……
行為は昼過ぎから夕方まで続いた。その後、共に湯船に浸かり、食事をし。
「ご苦労だったな、トリスタン。夜勤の者に伝えてくれ。部屋からの嬌声は気にするなとな」
「……かしこまりました。本日はこれにて失礼させていただきます」
それから。ひたすらに剣を振るった。頭の中では彼女の息遣いが、押し殺せなかった嬌声が、啜り泣きが響き渡って。
そして、それらに反応しそうになる自分が。
全てが許せなくて、今すぐにでも殺しに行きたかった。
「ずいぶんと荒れてるな」
「……団長……」
「悔しいか」
「……」
「お前も厄介な女に惚れたな」
惚れた……そうだな。だって俺だって一目惚れだった。それは本当に淡い恋心だったけれど、それでも我慢したんだ。陛下の視線に気がついてしまったから。それに年の差だって。
そうしたら、まさかあんなことになるなんて!!
それでも心折れず、凛としている彼女にもう一度心を奪われた。仮初でも結婚できたのが嬉しくて。
「……強くなりたいです」
「なれよ。男だろ?」
「はい。団長、指導をお願い出来ますか!」
俺には何も無い。あるのはこの体一つだけだ。
「特別指導は高くつくぞ?」
「~~っ、出世払いでお願いします!」
「いいぜ。一年で副団長まで登り詰めろ」
「団長。蹴落とされる副団長が後ろにいるの知ってて言ってますよね。蹴落とされた私はどうすればいいのですか」
「ん?団長補佐でいいだろ。書類仕事は任せた」
「嫌ですよ、自分でやって下さい。脳筋ばかりで本当に困る」
大丈夫、諦めるな。こうやって助けてくれる人達がいる。
「半年!半年で副団長に勝ってみせます!」
「ほほう?いいでしょう。指導は私もしますよ。楽しみですね?」
「あざす!」
剣技を鍛えたからって陛下に勝てるわけじゃない。それでも、僅かな可能性に賭けたい。
絶対に強くなってみせる!
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