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38.お楽しみは5年後に
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「私は、一人では寂しいわ」
貴方が居なくなると知って初めて分かった。
私はそんなに強くない。貴方がずっと隣にいてくれたから頑張れた。
「やっぱり別れて誰かを探すかい?君なら多くの男性が放っておかない」
バシッ!!
思い切り頬を打つ。人を殴ったのは2度目。どちらもこの男ね。
「私を馬鹿にするなと言ったわ!」
なんでこの男はこうなの?!どうしてこうも、
「だってアンヌが勿体無いじゃないか」
「…………は?」
「君は素敵な女性だよ。何でも前向きに頑張れて、優しくて明るくて。他人の為に必死になれて、それを幸せだと思える。
こんな欠陥だらけの男の妻になるなんて、王妃になる為じゃなければ必要なかっただろう?」
………何?なんで突然褒め殺し?
「……貴方だって賢王とか言われるくらい頑張っていたし慕われていたわ」
「あんなのただの演技だ。君とは違うよ」
「え、でも」
「それに、妻がいるのに他の女性に恋をして、そのくせ手に入らないからと犯すような救い難い人間だ。ただの屑だ。そんな奴の隣りに居る必要なんて何処にも無い」
あ……本当に悔いていたのね
「でも、だから目を失ったのでしょう?」
おかしい。どうして私がフォローしているのかしら。
「こんなの私とブラスの自己満足だ。そんなのは分かっているよ。
それでも、これでベレニスは潰せたし、レアンドロを罪人にしないで済んだ。レネ王も喜ばせられた。最後にそれくらいは出来てホッとしてる。
あと、私に出来ることは大人しく田舎で蟄居するくらいだ。
そんな愚か者の人生に、君が付き合う必要なんて一欠片も無いんだ。君には罪なんて無いのだから」
……この人が、いっそもっと愚かなら良かった。
反省しているのだと、おまえを愛しているのだと、なりふり構わず縋りつくような男なら、もっと幸せになれたのに。
そうしたら私だって、今度浮気したら承知しないと叱りつけながら、もう一度夫婦としてやり直せたのに。
自分の罪を正しく知っているから、私の手は取らないのだろう。だから、あの、罪人の男を側に置き、静かに朽ちていこうとしているのだ。
本当になんて分かりにくい。人を欺く演技が習い性になっているから質が悪い。
「強姦は死罪でも無期懲役でも無いわ。鞭打ちの代わりに失明しているし、国のために命懸けで貢献した。あとは5年位の蟄居が妥当かしら」
貴方が罰を望むなら、正しく裁いてあげる。
「その後は、そうね。5年も一人で頑張った王妃を生涯かけて優しく労ればいいのではなくて?」
「……そんなのは駄目だ」
「知らないの?罪人は自分で罰を選ぶことは出来ないの。貴方がそれを苦痛に思うなら丁度いいじゃない。
私は貴方と別れてなんかあげない。悪かったと思うなら、ちゃんと私に償ってよ。死ぬまで私を愛する努力をしなさいよっ!」
だって羨ましかった。貴方からそんな激情を向けられたセレスティーヌが。
私が貴方の妻なのに。どうして、何故と。
私だってそれを望んでもいいでしょう?
「私は貴方を一生近くで見ているわ。だから、貴方も私を見て。ちゃんと愛して。それが私から与える罰よ」
まあ、仕事が大切なのは本当だから5年は待ってもらうけど。どうせそれくらいは休みが必要なのでしょう。
「……君は趣味が悪い」
「仕方がないじゃない。もう結婚してるもの」
「別れるチャンスなのに」
「病める時も健やかなる時もって誓ったわ」
「………信じられない」
燃える様な恋心は無いけれど、それでも20年共に生きてきた情がある。私はそれを失いたくない。
「あと、本当はあの番犬を引き剥がしたいところだけど、そうすると貴方が五年待たずに野垂れ死んでいそうだから駄目ね」
この人は放って置くと、寝食すら疎かにするから。ムカつくな。どうにか出来ないかな、アレ。
「ねぇ、本気で言ってる?」
「私が前向きだって知ってるでしょう?何時までもグチグチ悩むのは性に合わないの。もうこれで決めたから。貴方には5年悩む時間をあげるから、しっかり覚悟を決めなさいな」
よし!だったら時間が勿体無い。子供達にも伝えなきゃだし。忙しくなるわ!
「じゃあ、私は戻るわね」
「え……うん……」
フフッ、何時も薄っすら微笑んでるだけだった貴方の唖然とした顔が見れただけでも気持ちがスッとしたわ。
5年か。どこまで出来るかしら。
とりあえず、ビニシオ達を扱いて、あ、諜報部が無くなるわよね?あいつら全員陛下の犬だし。
今から育てるの大変だわ。少し置いていってくれないか交渉しなきゃ。
それから。………どうやったら男を惚れさせられるか。
この研究は譲れない!だって恋なんて知らなかった。でも、あの人を見て羨ましくなった。恋をするなら夫である貴方しかいないでしょう?
見てなさい、アロイス。貴方が隠居生活しているうちに、もっといい女になってやるわ。
5年後を楽しみにしていて。
貴方が居なくなると知って初めて分かった。
私はそんなに強くない。貴方がずっと隣にいてくれたから頑張れた。
「やっぱり別れて誰かを探すかい?君なら多くの男性が放っておかない」
バシッ!!
思い切り頬を打つ。人を殴ったのは2度目。どちらもこの男ね。
「私を馬鹿にするなと言ったわ!」
なんでこの男はこうなの?!どうしてこうも、
「だってアンヌが勿体無いじゃないか」
「…………は?」
「君は素敵な女性だよ。何でも前向きに頑張れて、優しくて明るくて。他人の為に必死になれて、それを幸せだと思える。
こんな欠陥だらけの男の妻になるなんて、王妃になる為じゃなければ必要なかっただろう?」
………何?なんで突然褒め殺し?
「……貴方だって賢王とか言われるくらい頑張っていたし慕われていたわ」
「あんなのただの演技だ。君とは違うよ」
「え、でも」
「それに、妻がいるのに他の女性に恋をして、そのくせ手に入らないからと犯すような救い難い人間だ。ただの屑だ。そんな奴の隣りに居る必要なんて何処にも無い」
あ……本当に悔いていたのね
「でも、だから目を失ったのでしょう?」
おかしい。どうして私がフォローしているのかしら。
「こんなの私とブラスの自己満足だ。そんなのは分かっているよ。
それでも、これでベレニスは潰せたし、レアンドロを罪人にしないで済んだ。レネ王も喜ばせられた。最後にそれくらいは出来てホッとしてる。
あと、私に出来ることは大人しく田舎で蟄居するくらいだ。
そんな愚か者の人生に、君が付き合う必要なんて一欠片も無いんだ。君には罪なんて無いのだから」
……この人が、いっそもっと愚かなら良かった。
反省しているのだと、おまえを愛しているのだと、なりふり構わず縋りつくような男なら、もっと幸せになれたのに。
そうしたら私だって、今度浮気したら承知しないと叱りつけながら、もう一度夫婦としてやり直せたのに。
自分の罪を正しく知っているから、私の手は取らないのだろう。だから、あの、罪人の男を側に置き、静かに朽ちていこうとしているのだ。
本当になんて分かりにくい。人を欺く演技が習い性になっているから質が悪い。
「強姦は死罪でも無期懲役でも無いわ。鞭打ちの代わりに失明しているし、国のために命懸けで貢献した。あとは5年位の蟄居が妥当かしら」
貴方が罰を望むなら、正しく裁いてあげる。
「その後は、そうね。5年も一人で頑張った王妃を生涯かけて優しく労ればいいのではなくて?」
「……そんなのは駄目だ」
「知らないの?罪人は自分で罰を選ぶことは出来ないの。貴方がそれを苦痛に思うなら丁度いいじゃない。
私は貴方と別れてなんかあげない。悪かったと思うなら、ちゃんと私に償ってよ。死ぬまで私を愛する努力をしなさいよっ!」
だって羨ましかった。貴方からそんな激情を向けられたセレスティーヌが。
私が貴方の妻なのに。どうして、何故と。
私だってそれを望んでもいいでしょう?
「私は貴方を一生近くで見ているわ。だから、貴方も私を見て。ちゃんと愛して。それが私から与える罰よ」
まあ、仕事が大切なのは本当だから5年は待ってもらうけど。どうせそれくらいは休みが必要なのでしょう。
「……君は趣味が悪い」
「仕方がないじゃない。もう結婚してるもの」
「別れるチャンスなのに」
「病める時も健やかなる時もって誓ったわ」
「………信じられない」
燃える様な恋心は無いけれど、それでも20年共に生きてきた情がある。私はそれを失いたくない。
「あと、本当はあの番犬を引き剥がしたいところだけど、そうすると貴方が五年待たずに野垂れ死んでいそうだから駄目ね」
この人は放って置くと、寝食すら疎かにするから。ムカつくな。どうにか出来ないかな、アレ。
「ねぇ、本気で言ってる?」
「私が前向きだって知ってるでしょう?何時までもグチグチ悩むのは性に合わないの。もうこれで決めたから。貴方には5年悩む時間をあげるから、しっかり覚悟を決めなさいな」
よし!だったら時間が勿体無い。子供達にも伝えなきゃだし。忙しくなるわ!
「じゃあ、私は戻るわね」
「え……うん……」
フフッ、何時も薄っすら微笑んでるだけだった貴方の唖然とした顔が見れただけでも気持ちがスッとしたわ。
5年か。どこまで出来るかしら。
とりあえず、ビニシオ達を扱いて、あ、諜報部が無くなるわよね?あいつら全員陛下の犬だし。
今から育てるの大変だわ。少し置いていってくれないか交渉しなきゃ。
それから。………どうやったら男を惚れさせられるか。
この研究は譲れない!だって恋なんて知らなかった。でも、あの人を見て羨ましくなった。恋をするなら夫である貴方しかいないでしょう?
見てなさい、アロイス。貴方が隠居生活しているうちに、もっといい女になってやるわ。
5年後を楽しみにしていて。
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