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52.答え合わせ?
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お父様を知りたいならいい人がいますよ。
何となく嫌な予感はしたわ。でも、そこまで悪魔な誘いではないと信じていた。信じていたのにっ!
「はい。お父様の無二の親友であるブラスさんです。少し意地悪ですが、悪意もちょっぴりありますが、お父様のことは大好きなので嘘はつきません」
何と言う紹介なのよ!
「……20年経ってやっと聞きに来たのか」
この不遜な態度が気に入らない……でも。
「教えて。あの人のこと」
「雑把すぎる。楽するなよ」
「楽なんて……ただ、何処から聞けばいいのかわからないのだから仕方が無いでしょう?」
どうしろというのよ。すべてが分からないのに。
「……俺だって手探りだ。正直、あいつと答え合わせなんぞしたことはない」
「は?」
偉そうにしてその程度なの?
「ただ、あいつの笑顔に壁を感じた。だから理由を聞いた。感情が分からないと明かされた。以上」
え?え?え?貴方こそ雑だわ!
「笑顔の壁?」
「…………」
その死ぬ程軽蔑した顔は止めて。
「王女ですら気付いたぞ。あいつが自分の気持ちを語ったことがない、心を開けないんじゃないかってな」
「……私は、鈍いのかしら」
「違う。見る気がなかったんだろう。そこにあって当たり前。優秀で当たり前。弱みがあるなんて考えもしない。だって歴代の王族の中でも特に出来がいいと謳われる王子だったから。
お前みたいな優秀で高貴で勝ち気な女でも頼れる男だったんだろ」
……コイツの言葉はいちいち刺さる。それが真実だと自分でも分かるから。
「私は……甘えていたのね」
やっと分かった。私だって頑張ったわ。楽しかったし、やり甲斐はあったけれど、辛くなかったわけではなかった。
でも、頑張った先には優しい王子がいた。誰よりも優秀で美しく穏やかで。彼の側にいられたら安心だった。だから、それだけで満足していた。
「それでも、一言教えてくれたら……」
「お前は──。
そうだな。お前は賢いよな」
「は?」
突然何よ。これでも結構賢いと自負しているわよ、悪い?
「1+1=2、これが解けない人間をどう思う?」
「………フザケてるの?」
「アロイスの感情が分からないと言うのはそれに似ていると思うから聞いた。
あいつは他の勉強は出来るのに、一桁の足し算も出来ない。そんなことを他人に言えるか?王位争いで暗殺の危機もあったのにそんな弱みを見せるか?」
「でも本当に?だって、今までずっと普通に生活出来ていたわ!」
「必死で覚えたから。計算は出来ないから丸暗記するようなものだ。たくさん見て、覚えて、概算や未満や何やと応用もすべて引き出しにストックして。あとは王族らしく笑顔で躱したりな。
あいつの少し皮肉を効かせた言葉や態度は、わざと相手を怒らせて感情的にして対応しやすくする戦法さ。お前も乗せられた口だろう?」
あぁ、あの腹立つ態度!確かに感情的になるわよね。アレは。
「俺もアイツが正しいとは思っていない。でも、どうやっても出来ない人間にどうして出来ないんだ!って責めてどうなる?
自分を憧れの瞳で見つめてくる女に、『私は足し算が出来ません』って伝えられない男の悲しさは、優秀なあんたなら分かるんじゃないか」
……確かに。もし、自分なら言えないし言わない。人が当たり前に出来る事が熟せないなんてプライドが許さない。
………ん?
「憧れといったかしら」
「言った」
「誰が」
「アンタが」
「その呼び方止めて」
「憧れの王子様だったんだろ?だから、隣にいるだけで幸せで、完璧王子に弱みがあるなんて思いもしなくて、素敵過ぎて気持ちなんて聞く気にもならなくて、皆の憧れの人!っていう、夫婦だけど偶像化していたのに、セレスティーヌに惚れてあんなことしたから、騙された!ってぶっ騒いで。でも、あんなに素敵な人に愛されたら絆されるだろうと安易に愛妾に据えて。
でも妻なのにという嫉妬から、それなら罰として私を愛しなさいよ!って、深く考えず、傷付けるかもなんて気にもしないで宣言して、返事も聞かずに帰ったんだろ?」
……え~~~~~~っっっ?!
「何よ誰よその恥ずかしい女はっ!!」
「お前だよ、王妃サマ。情緒が育ちきらない、恋に夢見る乙女だろう。娘より幼いよな、精神年齢は」
何それ……偶像崇拝?確かに皆が憧れる王子様だった。賢くて優しくて美しくて。そんな人の隣に立つのは自分だと、子供の頃から夢見て頑張ったのは確かだけど……、本当に?
「いつまでも夢を見ていたせいで、愛しの王子様の呪いは他の女が解いてしまったけどな」
うそ……でも、完全に間違いだと否定もし辛いのは何故。
「まぁ、これは極端な推論な。俺は王妃サマなんて詳しくないし、俺にはそう見えたってだけだ」
「……そうよね、私に興味はゼロだものね」
「むしろマイナスだな」
悪意がちょっぴりじゃないわ、ガッツリだわ!
「でも、そう見えたのね。私はもう少し賢い女だと思っていたのに」
「賢い女は20年も見誤らない」
「確かに」
変ね、私は4人も子供を産んだのに。それなりの回数体すら重ねてきたのに。
どうして一番手前の恋すら上手く出来ていなかったのかしら。
「抱かれるだけでは愛は生まれないのね」
あら?どうしてこの男の前でこんな恥ずかしいことを言っているの。
「それで愛が芽生えるなら、娼館は愛で溢れているな」
「確かに」
「アロイスとセレスティーヌの間にもな」
「……確かにね」
体だけでも、思いがあっても駄目なのか。
「一方通行だから駄目なんだろ。お前達はちゃんと会話をしろ。言い逃げじゃなくて会話だ。
アイツは感情が分からないと言っていたがゼロじゃなかったよ。ただ、分かりづらい。
それも、じゃじゃ馬や王女のおかげで随分と分かりやすくなった。だから、ちゃんとあいつの気持ちを聞いてやれ。暴走するなよ」
やっぱり腹立たしい男だわ!
何となく嫌な予感はしたわ。でも、そこまで悪魔な誘いではないと信じていた。信じていたのにっ!
「はい。お父様の無二の親友であるブラスさんです。少し意地悪ですが、悪意もちょっぴりありますが、お父様のことは大好きなので嘘はつきません」
何と言う紹介なのよ!
「……20年経ってやっと聞きに来たのか」
この不遜な態度が気に入らない……でも。
「教えて。あの人のこと」
「雑把すぎる。楽するなよ」
「楽なんて……ただ、何処から聞けばいいのかわからないのだから仕方が無いでしょう?」
どうしろというのよ。すべてが分からないのに。
「……俺だって手探りだ。正直、あいつと答え合わせなんぞしたことはない」
「は?」
偉そうにしてその程度なの?
「ただ、あいつの笑顔に壁を感じた。だから理由を聞いた。感情が分からないと明かされた。以上」
え?え?え?貴方こそ雑だわ!
「笑顔の壁?」
「…………」
その死ぬ程軽蔑した顔は止めて。
「王女ですら気付いたぞ。あいつが自分の気持ちを語ったことがない、心を開けないんじゃないかってな」
「……私は、鈍いのかしら」
「違う。見る気がなかったんだろう。そこにあって当たり前。優秀で当たり前。弱みがあるなんて考えもしない。だって歴代の王族の中でも特に出来がいいと謳われる王子だったから。
お前みたいな優秀で高貴で勝ち気な女でも頼れる男だったんだろ」
……コイツの言葉はいちいち刺さる。それが真実だと自分でも分かるから。
「私は……甘えていたのね」
やっと分かった。私だって頑張ったわ。楽しかったし、やり甲斐はあったけれど、辛くなかったわけではなかった。
でも、頑張った先には優しい王子がいた。誰よりも優秀で美しく穏やかで。彼の側にいられたら安心だった。だから、それだけで満足していた。
「それでも、一言教えてくれたら……」
「お前は──。
そうだな。お前は賢いよな」
「は?」
突然何よ。これでも結構賢いと自負しているわよ、悪い?
「1+1=2、これが解けない人間をどう思う?」
「………フザケてるの?」
「アロイスの感情が分からないと言うのはそれに似ていると思うから聞いた。
あいつは他の勉強は出来るのに、一桁の足し算も出来ない。そんなことを他人に言えるか?王位争いで暗殺の危機もあったのにそんな弱みを見せるか?」
「でも本当に?だって、今までずっと普通に生活出来ていたわ!」
「必死で覚えたから。計算は出来ないから丸暗記するようなものだ。たくさん見て、覚えて、概算や未満や何やと応用もすべて引き出しにストックして。あとは王族らしく笑顔で躱したりな。
あいつの少し皮肉を効かせた言葉や態度は、わざと相手を怒らせて感情的にして対応しやすくする戦法さ。お前も乗せられた口だろう?」
あぁ、あの腹立つ態度!確かに感情的になるわよね。アレは。
「俺もアイツが正しいとは思っていない。でも、どうやっても出来ない人間にどうして出来ないんだ!って責めてどうなる?
自分を憧れの瞳で見つめてくる女に、『私は足し算が出来ません』って伝えられない男の悲しさは、優秀なあんたなら分かるんじゃないか」
……確かに。もし、自分なら言えないし言わない。人が当たり前に出来る事が熟せないなんてプライドが許さない。
………ん?
「憧れといったかしら」
「言った」
「誰が」
「アンタが」
「その呼び方止めて」
「憧れの王子様だったんだろ?だから、隣にいるだけで幸せで、完璧王子に弱みがあるなんて思いもしなくて、素敵過ぎて気持ちなんて聞く気にもならなくて、皆の憧れの人!っていう、夫婦だけど偶像化していたのに、セレスティーヌに惚れてあんなことしたから、騙された!ってぶっ騒いで。でも、あんなに素敵な人に愛されたら絆されるだろうと安易に愛妾に据えて。
でも妻なのにという嫉妬から、それなら罰として私を愛しなさいよ!って、深く考えず、傷付けるかもなんて気にもしないで宣言して、返事も聞かずに帰ったんだろ?」
……え~~~~~~っっっ?!
「何よ誰よその恥ずかしい女はっ!!」
「お前だよ、王妃サマ。情緒が育ちきらない、恋に夢見る乙女だろう。娘より幼いよな、精神年齢は」
何それ……偶像崇拝?確かに皆が憧れる王子様だった。賢くて優しくて美しくて。そんな人の隣に立つのは自分だと、子供の頃から夢見て頑張ったのは確かだけど……、本当に?
「いつまでも夢を見ていたせいで、愛しの王子様の呪いは他の女が解いてしまったけどな」
うそ……でも、完全に間違いだと否定もし辛いのは何故。
「まぁ、これは極端な推論な。俺は王妃サマなんて詳しくないし、俺にはそう見えたってだけだ」
「……そうよね、私に興味はゼロだものね」
「むしろマイナスだな」
悪意がちょっぴりじゃないわ、ガッツリだわ!
「でも、そう見えたのね。私はもう少し賢い女だと思っていたのに」
「賢い女は20年も見誤らない」
「確かに」
変ね、私は4人も子供を産んだのに。それなりの回数体すら重ねてきたのに。
どうして一番手前の恋すら上手く出来ていなかったのかしら。
「抱かれるだけでは愛は生まれないのね」
あら?どうしてこの男の前でこんな恥ずかしいことを言っているの。
「それで愛が芽生えるなら、娼館は愛で溢れているな」
「確かに」
「アロイスとセレスティーヌの間にもな」
「……確かにね」
体だけでも、思いがあっても駄目なのか。
「一方通行だから駄目なんだろ。お前達はちゃんと会話をしろ。言い逃げじゃなくて会話だ。
アイツは感情が分からないと言っていたがゼロじゃなかったよ。ただ、分かりづらい。
それも、じゃじゃ馬や王女のおかげで随分と分かりやすくなった。だから、ちゃんとあいつの気持ちを聞いてやれ。暴走するなよ」
やっぱり腹立たしい男だわ!
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