32 / 70
31
しおりを挟む
有馬マリアは悩んでいた。
これから、どうするか。
池田に連絡してからずっと、坂辻は『ゾンビにしてみた』の動画を見ている。
いつ、発症してもおかしくない。
流れでつい全部見せてしまったが、別に坂辻をゾンビにしたい訳でもない。
むしろ、予定では一緒に逃げようとしていたくらいだ。
かといって、動画をこれ以上見るな、とも言えず、時間が流れるに任せていた。
さっきから、背後の机の上からマリアのスマートフォンが着信をバイブで知らせてきている。
<きっと、探偵さんを殺ったっていう報告でしょ、それより…>
マリアは無視する。
「出なくて、いいのか」
「きっとママからだからいいよ。
それより、こうしていたい」
「でも、お前の言ってること、なんかわかる気がするな」
「え?」
「さっきのオカルトの話。
俺も昔、思ってたんだよ。
なんで光より速く動けないんだ、って。
別に、一秒に百万キロ動けたって、それこそ一億万光年動けたっていいのに。
って、子供の頃の発想だけどな、はは。
それに、光の速さに近づくほど、重さが増えて時間が遅くなるってのも、未だに全然意味わかんないし。
それをお前の言うように、ゲームに例えると、ゲームって速く動かそうとするほど、処理落ちして動きが遅くなるじゃん。
それと同じかな、光速って。
この世界っていうVR作ってるCPUの限界の一つなのかも」
「そうそう、さすが、つー君!
ボクの言いたかったことそれよ、大好き、つー君」
マリアは坂辻を強く抱きしめた。
「ああ、なんか熱っぽい、やばいかな、ほんとに」
「それ、ボクのせいじゃない?」
「バカ言え、明日、病院行ってみるよ…
ん?お前これ…!?」
タブレット端末をいじっていた坂辻が声を上げた。
「何?」
「何って、お前、自分のトイッテーにさっきの動画のこと上げてるじゃないか!
何考えてるんだ!」
坂辻はマリアの気付かぬ間に、トイッテーにアプリを切り替えて見ていた。
「え~、勝手に見ないでよ。
いいじゃん、おもしろそうだったから…」
「おもしろそうじゃねーよ!
さっきから言ってるだろ!
俺らがやばいことになるって!
わかんないのか!」
「もー、そんなに怒鳴らなくてもいいじゃない」
「怒るだろ!普通…」
その時、今度は坂辻のスマートフォンの着信音が鳴った。
マリアが振り向いて、画面を見る。
「非通知だよ、どうする?」
「今はそれどころじゃない!
非通知ならなおさらほっとけ…ううっ、頭が…」
坂辻は怒鳴っている途中に頭を抱えた。
オメガが暴走し始めた証だった。
それからまた少し時間が経った。
遠くから、パトカーのサイレンの音が聞こえ、窓のカーテン越しに赤色灯の赤い光が見えた。
<やばい、もしかして、ママ失敗したのかな?
…じゃあ、さっきの非通知はもしかして、探偵さん?
なら、早く逃げないと…
それにもう、出ていこうにも、つー君に引き止められたら面倒くさいから、しょうがないかな…やっぱり…>
マリアは、後ろから坂辻を抱きしめたまま首を絞めた。
「く、苦しい、おま、な、何を!」
突然のマリアの行動に、坂辻は暴れた。
「ごめんね。このゲームが終わったら、そっち行って謝るから。
つー君の言う通り、無の世界に行ってなければ…ね」
マリアは容赦なく、腕に力を込める。
テーブルに並べて置かれた二人のスマートフォン。
動かなくなった阪辻と対照的に、マリアの方のバイブ音だけが虚しく、また響いていた。
これから、どうするか。
池田に連絡してからずっと、坂辻は『ゾンビにしてみた』の動画を見ている。
いつ、発症してもおかしくない。
流れでつい全部見せてしまったが、別に坂辻をゾンビにしたい訳でもない。
むしろ、予定では一緒に逃げようとしていたくらいだ。
かといって、動画をこれ以上見るな、とも言えず、時間が流れるに任せていた。
さっきから、背後の机の上からマリアのスマートフォンが着信をバイブで知らせてきている。
<きっと、探偵さんを殺ったっていう報告でしょ、それより…>
マリアは無視する。
「出なくて、いいのか」
「きっとママからだからいいよ。
それより、こうしていたい」
「でも、お前の言ってること、なんかわかる気がするな」
「え?」
「さっきのオカルトの話。
俺も昔、思ってたんだよ。
なんで光より速く動けないんだ、って。
別に、一秒に百万キロ動けたって、それこそ一億万光年動けたっていいのに。
って、子供の頃の発想だけどな、はは。
それに、光の速さに近づくほど、重さが増えて時間が遅くなるってのも、未だに全然意味わかんないし。
それをお前の言うように、ゲームに例えると、ゲームって速く動かそうとするほど、処理落ちして動きが遅くなるじゃん。
それと同じかな、光速って。
この世界っていうVR作ってるCPUの限界の一つなのかも」
「そうそう、さすが、つー君!
ボクの言いたかったことそれよ、大好き、つー君」
マリアは坂辻を強く抱きしめた。
「ああ、なんか熱っぽい、やばいかな、ほんとに」
「それ、ボクのせいじゃない?」
「バカ言え、明日、病院行ってみるよ…
ん?お前これ…!?」
タブレット端末をいじっていた坂辻が声を上げた。
「何?」
「何って、お前、自分のトイッテーにさっきの動画のこと上げてるじゃないか!
何考えてるんだ!」
坂辻はマリアの気付かぬ間に、トイッテーにアプリを切り替えて見ていた。
「え~、勝手に見ないでよ。
いいじゃん、おもしろそうだったから…」
「おもしろそうじゃねーよ!
さっきから言ってるだろ!
俺らがやばいことになるって!
わかんないのか!」
「もー、そんなに怒鳴らなくてもいいじゃない」
「怒るだろ!普通…」
その時、今度は坂辻のスマートフォンの着信音が鳴った。
マリアが振り向いて、画面を見る。
「非通知だよ、どうする?」
「今はそれどころじゃない!
非通知ならなおさらほっとけ…ううっ、頭が…」
坂辻は怒鳴っている途中に頭を抱えた。
オメガが暴走し始めた証だった。
それからまた少し時間が経った。
遠くから、パトカーのサイレンの音が聞こえ、窓のカーテン越しに赤色灯の赤い光が見えた。
<やばい、もしかして、ママ失敗したのかな?
…じゃあ、さっきの非通知はもしかして、探偵さん?
なら、早く逃げないと…
それにもう、出ていこうにも、つー君に引き止められたら面倒くさいから、しょうがないかな…やっぱり…>
マリアは、後ろから坂辻を抱きしめたまま首を絞めた。
「く、苦しい、おま、な、何を!」
突然のマリアの行動に、坂辻は暴れた。
「ごめんね。このゲームが終わったら、そっち行って謝るから。
つー君の言う通り、無の世界に行ってなければ…ね」
マリアは容赦なく、腕に力を込める。
テーブルに並べて置かれた二人のスマートフォン。
動かなくなった阪辻と対照的に、マリアの方のバイブ音だけが虚しく、また響いていた。
0
あなたにおすすめの小説
皆さんは呪われました
禰津エソラ
ホラー
あなたは呪いたい相手はいますか?
お勧めの呪いがありますよ。
効果は絶大です。
ぜひ、試してみてください……
その呪いの因果は果てしなく絡みつく。呪いは誰のものになるのか。
最後に残るのは誰だ……
視える僕らのシェアハウス
橘しづき
ホラー
安藤花音は、ごく普通のOLだった。だが25歳の誕生日を境に、急におかしなものが見え始める。
電車に飛び込んでバラバラになる男性、やせ細った子供の姿、どれもこの世のものではない者たち。家の中にまで入ってくるそれらに、花音は仕事にも行けず追い詰められていた。
ある日、駅のホームで電車を待っていると、霊に引き込まれそうになってしまう。そこを、見知らぬ男性が間一髪で救ってくれる。彼は花音の話を聞いて名刺を一枚手渡す。
『月乃庭 管理人 竜崎奏多』
不思議なルームシェアが、始まる。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
裏切りの代償
中岡 始
キャラ文芸
かつて夫と共に立ち上げたベンチャー企業「ネクサスラボ」。奏は結婚を機に経営の第一線を退き、専業主婦として家庭を支えてきた。しかし、平穏だった生活は夫・尚紀の裏切りによって一変する。彼の部下であり不倫相手の優美が、会社を混乱に陥れつつあったのだ。
尚紀の冷たい態度と優美の挑発に苦しむ中、奏は再び経営者としての力を取り戻す決意をする。裏切りの証拠を集め、かつての仲間や信頼できる協力者たちと連携しながら、会社を立て直すための計画を進める奏。だが、それは尚紀と優美の野望を徹底的に打ち砕く覚悟でもあった。
取締役会での対決、揺れる社内外の信頼、そして壊れた夫婦の絆の果てに待つのは――。
自分の誇りと未来を取り戻すため、すべてを賭けて挑む奏の闘い。復讐の果てに見える新たな希望と、繊細な人間ドラマが交錯する物語がここに。
怪奇蒐集帳(短編集)
naomikoryo
ホラー
この世には、知ってはいけない話がある。
怪談、都市伝説、語り継がれる呪い——
どれもがただの作り話かもしれない。
だが、それでも時々、**「本物」**が紛れ込むことがある。
本書は、そんな“見つけてしまった”怪異を集めた一冊である。
最後のページを閉じるとき、あなたは“何か”に気づくことになるだろう——。
【完結】ホラー短編集「隣の怪異」
シマセイ
ホラー
それは、あなたの『隣』にも潜んでいるのかもしれない。
日常風景が歪む瞬間、すぐそばに現れる異様な気配。
襖の隙間、スマートフォンの画面、アパートの天井裏、曰く付きの達磨…。
身近な場所を舞台にした怪異譚が、これから続々と語られていきます。
じわりと心を侵食する恐怖の記録、短編集『隣の怪異』。
今宵もまた、新たな怪異の扉が開かれる──。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
意味が分かると怖い話(解説付き)
彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです
読みながら話に潜む違和感を探してみてください
最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください
実話も混ざっております
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる