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第124話 戦力増強

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『領地の結界に使う魔石はどう調達しようか…』



早速大きな問題に直面していた。

俺は精霊の森の魔石ほど大きい物を見たことがない。



『…いや、海龍の魔石があるじゃないか!!』



”アイテムボックス”から魔石を取り出してみると、一回り小さかったが結界を維持するのに十分そうだ。

あとはこの魔石に魔力を込め、”絶対不可侵結界”の魔法陣を組み込むだけだ。



「グレイ、居るか?」



「はっ!何でしょう?」



「今から城の中で作業をする。絶対に他の者を入れないでくれ。」



「はっ!承知いたしました!」



さて、後はMP回復ポーションを用意して魔力を注入し続ければいいのだが、一つ疑問が生じた。

それは、魔力が無色から黒色の死の魔力になっていることだ。



『死の魔力も普通に使って大丈夫なのか…?』



試しに”アイテムボックス”に入っていたオークの魔石に注入したところ、正常に機能した。

しかし死の魔力の密度が高いからか、魔石から途轍もなく禍々しい気配が放たれていた。



「ダグラス様、先程から少し力が上昇したのですが…」



「…?もしかしてこの魔石か?」



「っ!!その通りでございます!!」



どうやら死の魔力は敵を死に至らしめるだけでなく、魔族の力を向上させる作用があるようだ。

ということは、この魔石は領地に結界を展開するだけでなく配下の能力も向上する、一石二鳥の品物のようだ。



「グレイ、この魔石を50倍くらいにしても大丈夫か?」



「そうですね…私めやリリスなど、族の長は耐えられるでしょうが普通の魔族では理性を失いかねません。」



「そうか…」



この魔石を上手く使えれば、他の魔王候補者など造作もないほど最強の集団が作れる予感がしたのだが。

仕方ないが、配下の能力向上を諦めて死の魔力を”偽装”で普通の無色の魔力にすればいいだろう。



「ダグラス様、一つ提案がございます。」



「なんだ?」



「恐れ多いのですが、配下たちに”名付け”をしてはいかがでしょうか?」



「何か変わるのか?」



「はい。名付け親の能力に左右されますが、魔族としての格が上がります。」



「そうしたら理性を失わずに済むか?」



「はい。」



精霊も魔族も、名付けで存在がランクアップするのは同じらしい。

上手く事態が行き過ぎている気がしなくもないが、結果得られるものは大きいので気にしないでおこう。



「グレイ、もう一度皆を集合させてくれ。」



「はっ!かしこまりました。」



名前は精霊のときと同じように、A1とかで良いだろうか。

しかし、今後も関わりがありそうなのでちゃんとした名前を付けた方がいいだろう。



『…どうしよう。ネーミングセンスが…』



「ダグラス様、整列完了いたしました。」



「あ、ああ。今行く。」



結局何も思いつかずに時間が来てしまった。



「また集まらせてすまない。先程グレイと話し合い、皆に名付けをすることにした。」



「おおおおおおおおお!!!!!!!」



「ついに名前がもらえるんだー!!」



配下たちは皆涙を流して喜んだ。

同時に、俺はこれから適当な名前を付けることに罪悪感を感じた。



『ま、まぁこの世界の人はアルファベットとか知らないからな。名前だと言われたらそう認識するだろう。』



実際に精霊の時はそれで特に何もなく終わったので今回もきっと大丈夫だろう。



「では初めに各種族の長に名付けをする。まずはグレイ、前に。」



「はっ!」



先程グレイに聞いたのだが、既に名前を持っている者でも名付け親が変わったら能力の向上率も変わるらしい。

その際、同じ名前を付けようが新しい名前を付けようが変わらないようだ。



「お前はそのままグレイ=ブラッドと名乗れ。」



「はっ!」



名付けた瞬間、俺の魔力がごっそり奪われ、同時にグレイのステータスが爆上がりした。



「おぉ…名前をいただくだけであんなに強くなるのか…」



「これを私たち配下全員にしてくださるなんて…」



それからリリス→リリス、ルカ→ルカと命名し、数時間後配下全員の名付けを終えた。

結果、全体の戦力はおそらく3倍以上になった。



『これは…ひょっとして既に最強の軍勢なのでは?』



グレイとリリス、ルカはリヴェリアや師匠のステータスを大幅に超えた。

そして、各種族の皆はAランク冒険者とSランク冒険者の中間くらいのステータスに上昇した。



『人数が少ないのが玉に瑕だな…穏健派の魔族たちを吸収してもっと大きな集団にするか。』



とりあえず、戦力確保より結界の展開をしよう。

俺は玉座に戻り、名付けで減ったMPをポーションで回復して魔石に魔力を込めた。



『ふぅ…やっと魔力が満杯になったか…』



城を出て”鑑定”すると、異様な光景が広がっていた。

各種族の皆がリヴェリアたちと同等のステータス値を誇り、長たちは俺と同じくらい強くなっていた。



『…まじか。これもし謀反が起きたら終わりだな…』



自分自身に変化がないか”鑑定”してみると、なんとステータスが3倍ほどになっていた。



「…ん!?」



どうやら”魔王候補者”の効果で、配下のステータスが自分のステータスに加算されるらしい。



『…チートすぎないか?』
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