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第145話 商談①

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「…契約って具体的には?」



「雇用契約よ!私がヴァルハラ帝国専属の商人になるわ!!」



「それは助かる…けどどうして急に?」



「”武闘大会優勝者の専属商人”の肩書は大きいわ!!それにSランク冒険者になる可能性もあるしね!!」



「なるほどな…」



いいように使われている気がする…

しかし、お互いウィンウィンなので目を瞑っておこう。



「じゃあ契約しようか。確か二種類あったよな?」



「ええ。簡単に説明するとあくまで書類上限りで裏切りし放題のものと、奴隷契約のように契約違反を犯すと何かしらの罰が下されるものの二つね。」



個人的には前世に色々あったこともあり、他人をあまり信用できないので絶対に後者がいい。

しかし、メリルに関しては性格的にも裏切らないと思うので前者でいいだろう。



「俺は前者でいいが…メリルは?」



「私も同じよ。ただ、私以外の商人は後者の方がいいかもね。」



「…ん?私以外ってことは他にもいるのか?」



「私ひとりじゃ足りないでしょう?これから誘うつもりよ。」



「それは…これから探す予定だったから助かる。」



「気にしないで。じゃあ二時間後に会議室に来て頂戴。」



「ありがとう。それで、できればここに書いてある商品を取り扱っている商人を集めてくれ。」



俺はグレイから受け取った紙の書き写しを渡した。

メリルは顔が広いので、もしかしたらここに記載されているすべてを揃えられるかもしれない。

…まあ淡い期待は辞めておこう。



「分かったわ。」



「ありがとう。…ヴァルハラとか魔王因子の説明はどうするんだ?」



「そうねぇ…他言したら心臓が止まる契約をするわ。」



「それは恐ろしいな…」



「まあダグラスのことを知っていて、かつ崇拝してる人たちを集めるから安心して。」



「…ん?崇拝?」



「ええ。海龍の一件でね。」



「そういえばそんなこともあったな…」



色々忙しかったのであの時の記憶が薄れつつある。

それに、今はもう”海龍の鱗”や”海龍の皮”といった素材としてしか見ていないのだ。



「そんなことって…まあいいわ。じゃあ二時間後にね。」



「ああ。」



メリルと別れた後、買い物リストの商品を次々大量購入して”アイテムボックス”収納した。

女性服を大量に購入したときは周りから少し白い目で見られたが、強メンタルで何とか凌いだ。



また、購入の際には海龍討伐の報奨金である”商会の買い物券”は未だに人生二回分以上の金額が残っていたため、全てそれで購入できた。



『…実質無料で買ってるようなものだけど…大丈夫なのか?…まあいいか。』



そして買い物リストに記載されているすべての商品を購入し終えた。

ちょうど集合の15分前だったので、俺は会議室に向かった。



『…何人くらい集まってくれるかな?ヴァルハラのことを考えたら三十人くらいは欲しいが…せめて五人だけでも引き入れよう!!』



そんな小さい目標を掲げながら会議室に入ると、俺は目の前の光景に唖然とした。

会議室は大体玉座くらい、即ち100m四方の面積があり、その面積にびっしりを人が詰まっていたのだ。



「あ、ダグラス!!十分前集合とはなかなかしっかりしてるわね。」



「……」



「…ダグラス?」



「あ、ああ。思ってた以上に人が集まっていて驚いただけだ。」



これほどの人数が揃うと疑いたくはないが罠かもしれない。

そう思い、全員を”鑑定”してみたが皆ただの商人だった。

しかも先ほど言っていた契約も済んでいる。



「…本当にすごいな。」



「ふふん!!でしょでしょ??ダグラスと別れてから私もだいぶ成長したんだから!!」



「そうだな…!!世界を股にかける商人も夢じゃないな!!」



「ありがとう!!もう契約も終えてるから壇上に上がって!!大規模商談の始まりだよ!!」



「…ああ!!」



俺は一度深呼吸をし、落ち着いてから壇上に上がった。



「今日は集まってくれて本当に感謝する。」



「良いってことよ!!」



「海龍を倒してくれたからな!!当たり前だ!!」



「そうよそうよ!!私の家族も無事に済んだんだから…!!!」



「…ありがとう。まずは俺の現状を説明する。」



そう言って俺はメリルに話したことを皆に説明した。



「もしかしてその魔王因子の発現は…海龍討伐が鍵になってしまったんじゃないか…?」



「そうかもしれないしそうじゃないかもしれない…ただ、俺に魔王因子が発現しただけで多くの命が救えたんだ。安いものだ。」



魔王因子が発現した理由について、大体の目星は付いているがこれもあながち間違いではない。

誰かしら嘘発見の魔道具を持っていそうだが、これなら事実なので引っかからないだろう。



「それで…人族との共存を望む魔族の国ヴァルハラ帝国に分店を出してくれる人は…いるか?無理な人は契約に従って他言無用でここを去ってくれて構わない。」



「……」



驚いたことに、誰一人として出ていかなかった。



「…正気か?」



「ああ!!」



「恩人様には報わないとな!!」



「…ありがとう!!!じゃあ早速今後の予定について詰めていくぞ!!まず…」



それから分店の規模や店員、給料などを日が暮れるまで話し合った。

誰も嫌な顔をせずに引き受けたことから、本当に無理に従っている人がいないのだと実感した。



『…いい繋がりを持てたな。』
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