異世界転生録~死と隣り合わせのこの世界で死なないため、力を付けます!!~

島津穂高

文字の大きさ
158 / 188

第158話 人質

しおりを挟む
「ダ、ダグラス様すごいです!!」



「ダグラスさん半端ねーっす!!!」



「あ、ああ。ありがとう。」



常人がこれを見たら俺を怯えそうなものだが、そうでもないらしい。

門番に大声を出させずに殺したので、集落内で騒ぎになっていたりはしないだろう。



「…五武将残り二人の居場所は分かるか?」



「いえ…ですが普段通りならコルムの城の門前で門番をしているかと…」



「そうか…お前達の家族は確か城の中だったな?」



「はい。…ですが一般市民の救助を先にすべきかと…」



「…いいのか?」



「もう話し合って決めました…!!」



「わかった。」



身内よりも魔狼族全体のことを考えるとは…

チェイス達は族長に相応しい心持ちだ。



「予定通り市民の説得は頼んだぞ。説得が終わり次第俺に連絡してくれ。”領域転移“でヴァルハラ帝国の近くに連れて行く。」



「分かりました!」



先程の戦闘で少し気掛かりなことができた。

チェイス達が討伐した五武将が死んでからまだそれほど経っていないにも関わらず、門番の五武将はその死を知っていたことだ。



『何かしらのスキルで味方の生死が分かるのか…?または通信が途絶えて知ったか…』



もし前者で五武将がこちらに向かってきた場合に備え、俺は膨大な魔力を放ちながら住民他と反対方向に移動した。



『…釣れたか。』



“レーダー“を行使して周囲を警戒していると、まあまあ大きな魔力を持つ生命体がこちらに近づいてきた。

おそらく五武将だろう。



遠くから俺を見つけるや否や、魔法詠唱をしながら爪で斬りかかってきた。

こちらも古代魔法の詠唱だと思われるので、なんとかして詠唱を中断したいが距離が遠い。

俺の目の前に着く頃には既に効果が発動しているだろう。



『どうするか…そうだ!水属性魔法“ウォーターボール“、空間魔法“転移"』



狙いを定め、急接近してくる五武将の口の中に水の塊を詰め込んだ。



「ごぼごぼっ!?!?」



狙い通り詠唱を中断することに成功した。

それだけでなく、何故か足がもたれて頭から盛大に転んだ。



『うわぁ…今の転び方は痛いやつだ…』



地面を抉りながらこちらに転がってきて、約150m先でピクリとも動かなくなった。



『ん…?死んだふりか…?』



“レーダー“で”鑑定“してみると、なんと本当に死んでいた。



『…え?まじか…今ので死んだの?』



非常に呆気なかったため、気が抜けてしまった。

だが初級魔法も使い方次第では上級魔法を上回るということを、改めて実感した。



「ダグラス様、説得完了しました!!」



「分かった。今そっちに向かう。」



最後の五武将が来ても厄介なので、俺は市民達の手前に”転移“した。



「おぉ…本当に空間魔法の使い手が…!!」



「神よ…!!我らを救済してくださるのか…!!」



何故か魔狼族皆が俺の方を向き、頭を下げた。

まるで俺を崇拝しているような…?



「…まあいい、お前達をこれから俺が治めるヴァルハラ帝国に移動する。向こうにいる吸血鬼の指示に従ってくれ!!」



「…神託が下されたわ!!」



「おぉ…我らが神よ!!!」



崇拝されてる詳細は後でチェイスに問い詰めるとして、一旦ヴァルハラ帝国結界外に”領域転移“した。

これで魔狼族の市民たちは安全だろう。



「チェイス、お前らはどうする?」



「もちろん家族を助けに行きます!!」



「分かった。五武将とコルムは任せろ。」



「はい…!!」



俺はチェイス達を連れて再び集落に”領域転移”した。



さて…

五武将が次々倒されていくというのに、コルムは全く動き出していない。

ただの無能なのか、籠城戦で勝つ自信があるのか…



『…間違いなく後者だろうな。でもどうして少しも動きを見せないんだ…?』



”魔王候補者”の能力で、配下のステータスを自分のステータスに上乗せできる。

そのため直属の配下、しかも五人のうち四人も失ったらだいぶステータス値が落ちたはずだ。



 『全体の利益で見たら俺を殺して魔王因子を吸収した方が断然良いから…か?』



やはり城内に入るのは危険だ。

出来ることなら広範囲魔法で城ごと消し去りたいが人質がな…



「…っ!チェイス、少し待っていてくれ。」



「…?分かりました。」



どうして今まで気づかなかったのだろう。

家族を人質にチェイス達を奴隷化するような奴が、本気で人質を無事に生かしておくだろうか…?



俺は”レーダー”を行使して城内にいる人を把握した。

最奥の王室にコルムと思われる魔力と最後の五武将と思われる魔力の反応、戦闘もできる使用人と思われる魔力反応が計15、そして地下にある牢獄のような場所は…っ!?

そこには微かに残る魔力の残滓が多数、つまり死体で溢れていた。



「…チェイス、お前らの家族が捕らえられている場所はわかるか?」



「おそらく地下室かと…」



「使用人兼戦闘員の人たちは?」



「そいつらはコルム派です。」



「そうか…残念ながら家族はもう亡くなっている…」



「そんなっ…!!くっ…!!」



チェイス達は膝から崩れ落ち、涙を流した。

今までずっと家族の無事のために活動してきたのだ。

その悲しみや憎悪は想像を絶するだろう。



「…復讐したいか?」



「はい…」
しおりを挟む
感想 14

あなたにおすすめの小説

異世界に召喚されて2日目です。クズは要らないと追放され、激レアユニークスキルで危機回避したはずが、トラブル続きで泣きそうです。

もにゃむ
ファンタジー
父親に教師になる人生を強要され、父親が死ぬまで自分の望む人生を歩むことはできないと、人生を諦め淡々とした日々を送る清泉だったが、夏休みの補習中、突然4人の生徒と共に光に包まれ異世界に召喚されてしまう。 異世界召喚という非現実的な状況に、教師1年目の清泉が状況把握に努めていると、ステータスを確認したい召喚者と1人の生徒の間にトラブル発生。 ステータスではなく職業だけを鑑定することで落ち着くも、清泉と女子生徒の1人は職業がクズだから要らないと、王都追放を言い渡されてしまう。 残留組の2人の生徒にはクズな職業だと蔑みの目を向けられ、 同時に追放を言い渡された女子生徒は問題行動が多すぎて退学させるための監視対象で、 追加で追放を言い渡された男子生徒は言動に違和感ありまくりで、 清泉は1人で自由に生きるために、問題児たちからさっさと離れたいと思うのだが……

酒好きおじさんの異世界酒造スローライフ

天野 恵
ファンタジー
酒井健一(51歳)は大の酒好きで、酒類マスターの称号を持ち世界各国を飛び回っていたほどの実力だった。 ある日、深酒して帰宅途中に事故に遭い、気がついたら異世界に転生していた。転移した際に一つの“スキル”を授かった。 そのスキルというのは【酒聖(しゅせい)】という名のスキル。 よくわからないスキルのせいで見捨てられてしまう。 そんな時、修道院シスターのアリアと出会う。 こうして、2人は異世界で仲間と出会い、お酒作りや飲み歩きスローライフが始まる。

異世界転移からふざけた事情により転生へ。日本の常識は意外と非常識。

久遠 れんり
ファンタジー
普段の、何気ない日常。 事故は、予想外に起こる。 そして、異世界転移? 転生も。 気がつけば、見たことのない森。 「おーい」 と呼べば、「グギャ」とゴブリンが答える。 その時どう行動するのか。 また、その先は……。 初期は、サバイバル。 その後人里発見と、自身の立ち位置。生活基盤を確保。 有名になって、王都へ。 日本人の常識で突き進む。 そんな感じで、進みます。 ただ主人公は、ちょっと凝り性で、行きすぎる感じの日本人。そんな傾向が少しある。 異世界側では、少し非常識かもしれない。 面白がってつけた能力、超振動が意外と無敵だったりする。

最強の異世界やりすぎ旅行記

萩場ぬし
ファンタジー
主人公こと小鳥遊 綾人(たかなし あやと)はある理由から毎日のように体を鍛えていた。 そんなある日、突然知らない真っ白な場所で目を覚ます。そこで綾人が目撃したものは幼い少年の容姿をした何か。そこで彼は告げられる。 「なんと! 君に異世界へ行く権利を与えようと思います!」 バトルあり!笑いあり!ハーレムもあり!? 最強が無双する異世界ファンタジー開幕!

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

ちっちゃくなった俺の異世界攻略

ちくわ
ファンタジー
あるとき神の采配により異世界へ行くことを決意した高校生の大輝は……ちっちゃくなってしまっていた! 精霊と神様からの贈り物、そして大輝の力が試される異世界の大冒険?が幕を開ける!

【改訂版】槍使いのドラゴンテイマー ~邪竜をテイムしたのでついでに魔王も倒しておこうと思う~

こげ丸
ファンタジー
『偶然テイムしたドラゴンは神をも凌駕する邪竜だった』 公開サイト累計1000万pv突破の人気作が改訂版として全編リニューアル! 書籍化作業なみにすべての文章を見直したうえで大幅加筆。 旧版をお読み頂いた方もぜひ改訂版をお楽しみください! ===あらすじ=== 異世界にて前世の記憶を取り戻した主人公は、今まで誰も手にしたことのない【ギフト:竜を従えし者】を授かった。 しかしドラゴンをテイムし従えるのは簡単ではなく、たゆまぬ鍛錬を続けていたにもかかわらず、その命を失いかける。 だが……九死に一生を得たそのすぐあと、偶然が重なり、念願のドラゴンテイマーに! 神をも凌駕する力を持つ最強で最凶のドラゴンに、 双子の猫耳獣人や常識を知らないハイエルフの美幼女。 トラブルメーカーの美少女受付嬢までもが加わって、主人公の波乱万丈の物語が始まる! ※以前公開していた旧版とは一部設定や物語の展開などが異なっておりますので改訂版の続きは更新をお待ち下さい ※改訂版の公開方法、ファンタジーカップのエントリーについては運営様に確認し、問題ないであろう方法で公開しております ※小説家になろう様とカクヨム様でも公開しております

独身貴族の異世界転生~ゲームの能力を引き継いで俺TUEEEチート生活

髙龍
ファンタジー
MMORPGで念願のアイテムを入手した次の瞬間大量の水に押し流され無念の中生涯を終えてしまう。 しかし神は彼を見捨てていなかった。 そんなにゲームが好きならと手にしたステータスとアイテムを持ったままゲームに似た世界に転生させてやろうと。 これは俺TUEEEしながら異世界に新しい風を巻き起こす一人の男の物語。

処理中です...