異世界転生録~死と隣り合わせのこの世界で死なないため、力を付けます!!~

島津穂高

文字の大きさ
170 / 188

第170話 真理

しおりを挟む
フェンリルバイコーンを召喚してから一ヶ月が経過した。



この期間でヴァルハラ帝国と要塞都市間の経済体制を安定化することに成功し、今では様々なものを輸出入している。

そして、俺はというと魔狼族の図書館にこもって古代魔法の、特に神代魔法の勉強をしてした。



『うーん…なかなかこれだ!ってものが見つからないなぁ…』



魔狼族の中でも古代文字を読める人が少ないからだろうか。

中には日記やレシピ本、手紙なども混ざっていた。



俺はそれらが実は暗号で、文字を繋げたり縦読みしたら魔法書になってるかもしれないと考えた。

そして一ヶ月間試行錯誤したが、何の成果も得られなかった。



『もしかして本当にただの日記とレシピ本なのか…?』



グレイやグリム、チェイス達とも協力して解こうと努めたが、それでも暗号らしきものは見つからない。

やはり深く考え過ぎていただけだったようだ。



『この一ヶ月の努力を返してほしい…』



後悔してくよくよしていても仕方ないので、気分転換にアンデッド軍の訓練に参加しよう。

俺はグリムの元は“転移“した。



「おぉ、ダグラス殿か。あの暗号はどうだったのじゃ?」



「俺の考え過ぎだったみたいだ…」



「そうじゃったか…何か手がかりがあるとしたら、ダンジョンじゃな。魔法書は歴史のある集落にも残っておるが、たいていはダンジョンで得たものだからのぅ。」



「確かに本にそう記載されていたな…ダンジョンにある理由は知ってるか?」



「うむ!ダンジョンは古の時代、悪魔族が神達の攻撃から身を守るために召喚した、巨大な魔物なんじゃよ。」



「なっ…!」



王都に着き、初めてダンジョンに来た時の違和感はそれが原因だったようだ。

やはりあのただならぬ気配は魔物のものだったか…



「…ならダンジョンは危険なんじゃないか?」



「それが、そうではないんじゃ。ダンジョン型の魔物は自身を動かすことができないんじゃよ。」



「じゃあ生きていくための糧はどうやって…あっ、そうか。」



ダンジョンで死んだ冒険者達の死体はその場に残ることがなく、ダンジョンに吸収される。

それがダンジョン型魔物の生存方法なのだろう。



『…なるほどな。色々合点がいったよ。』



例えばどうしてダンジョンの規模に差があるのか…

侵入する冒険者の数が多いほど大規模で、少ないほど小規模であることから、食事量の差によるものだろう。

ダンジョン変動などでダンジョンの規模が変化するのもこれが原因だ。



例えばどうしてスタンピードが起こるのか…

スタンピードで殺した人間をダンジョンに引きずり込む点から、おそらく自身の規模に対して食事量が足りず、食事を欲するからだ。



『まじか…これ人族側では永遠の研究課題として扱われてるのにな…』



やはり種族間で差別せず、手を取り合えば色々な真理を探究でき、そしてより良い生活が手に入るだろう。



「ダグラス殿、ダンジョン攻略をしたらどうかの?」



「それは有りだな…」



ダンジョンの最深部には何があるのか?

どのような宝を入手できるのか?

どれほど攻略が難しいのか?



ダンジョンは未知なことばかりなので、ロマンで溢れている。

死神と神々に叛逆するためにも、ちょうど良いレベリング場だろうし、当面は世界中のダンジョン攻略を目標に活動しよう。



そうと決まれば早速行動だ。

俺は図書館でダンジョンに関する書物を集めて読むと同時に、ヴァルハラ帝国の統治体制の引き継ぎを行った。



ちなみに俺は国王代理はグレイ、国王代理補佐にリリスとルカ、チェイスを任命した。



二週間後



見送られるのはあまり得意ではないので、こっそり国を出ようと早朝に玉座から離れるとそこにはグレイとグリムが立っていた。



「ダグラス様の性格ですから抜けるならこの時間だと思いましたよ…」



「儂でも気付いたわ!!」



「ばれてたか…」



日頃から俺を見てくれている証拠だ。

本当にいい配下を持った。



「ヴァルハラ帝国のことは我々にお任せください。このグレイ、ダグラス様の代理として死ぬ気で務めます!」



「死なない程度にしてくれ…だが、頼りにしてるぞ。」



「はっ!ありがたき幸せ…」



「グリム、守護は任せたぞ。要塞都市から要請が来たときは手助けしてやってくれ。」



「うむ!任せるのじゃ!」



「…じゃあ行ってくる。」



「ええ!行ってらっしゃいませ。」



「気をつけるんじゃぞー!!」



俺は風属性魔法で空高く飛翔し、移動を始めた。



『さて…こう言っちゃなんだが肩の荷が降りたから自由に動き回れるな。』



図書館で見つけたダンジョンに関する書物は、司書から持ち出しの許可を得たので持ってきた。



特に“ダンジョンの場所と歴史“という本を持ち出せたのは非常に助かる。

この本はタイトル通り世界中のダンジョンの場所とそのダンジョン型魔物が召喚された歴史について記載されているため、ダンジョンを探す手間が省けた。



『まずは蟲のダンジョン…行くか!!』
しおりを挟む
感想 14

あなたにおすすめの小説

異世界に召喚されて2日目です。クズは要らないと追放され、激レアユニークスキルで危機回避したはずが、トラブル続きで泣きそうです。

もにゃむ
ファンタジー
父親に教師になる人生を強要され、父親が死ぬまで自分の望む人生を歩むことはできないと、人生を諦め淡々とした日々を送る清泉だったが、夏休みの補習中、突然4人の生徒と共に光に包まれ異世界に召喚されてしまう。 異世界召喚という非現実的な状況に、教師1年目の清泉が状況把握に努めていると、ステータスを確認したい召喚者と1人の生徒の間にトラブル発生。 ステータスではなく職業だけを鑑定することで落ち着くも、清泉と女子生徒の1人は職業がクズだから要らないと、王都追放を言い渡されてしまう。 残留組の2人の生徒にはクズな職業だと蔑みの目を向けられ、 同時に追放を言い渡された女子生徒は問題行動が多すぎて退学させるための監視対象で、 追加で追放を言い渡された男子生徒は言動に違和感ありまくりで、 清泉は1人で自由に生きるために、問題児たちからさっさと離れたいと思うのだが……

酒好きおじさんの異世界酒造スローライフ

天野 恵
ファンタジー
酒井健一(51歳)は大の酒好きで、酒類マスターの称号を持ち世界各国を飛び回っていたほどの実力だった。 ある日、深酒して帰宅途中に事故に遭い、気がついたら異世界に転生していた。転移した際に一つの“スキル”を授かった。 そのスキルというのは【酒聖(しゅせい)】という名のスキル。 よくわからないスキルのせいで見捨てられてしまう。 そんな時、修道院シスターのアリアと出会う。 こうして、2人は異世界で仲間と出会い、お酒作りや飲み歩きスローライフが始まる。

異世界転移からふざけた事情により転生へ。日本の常識は意外と非常識。

久遠 れんり
ファンタジー
普段の、何気ない日常。 事故は、予想外に起こる。 そして、異世界転移? 転生も。 気がつけば、見たことのない森。 「おーい」 と呼べば、「グギャ」とゴブリンが答える。 その時どう行動するのか。 また、その先は……。 初期は、サバイバル。 その後人里発見と、自身の立ち位置。生活基盤を確保。 有名になって、王都へ。 日本人の常識で突き進む。 そんな感じで、進みます。 ただ主人公は、ちょっと凝り性で、行きすぎる感じの日本人。そんな傾向が少しある。 異世界側では、少し非常識かもしれない。 面白がってつけた能力、超振動が意外と無敵だったりする。

最強の異世界やりすぎ旅行記

萩場ぬし
ファンタジー
主人公こと小鳥遊 綾人(たかなし あやと)はある理由から毎日のように体を鍛えていた。 そんなある日、突然知らない真っ白な場所で目を覚ます。そこで綾人が目撃したものは幼い少年の容姿をした何か。そこで彼は告げられる。 「なんと! 君に異世界へ行く権利を与えようと思います!」 バトルあり!笑いあり!ハーレムもあり!? 最強が無双する異世界ファンタジー開幕!

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

異世界転生、防御特化能力で彼女たちを英雄にしようと思ったが、そんな彼女たちには俺が英雄のようだ。

Mです。
ファンタジー
異世界学園バトル。 現世で惨めなサラリーマンをしていた…… そんな会社からの帰り道、「転生屋」という見慣れない怪しげな店を見つける。 その転生屋で新たな世界で生きる為の能力を受け取る。 それを自由イメージして良いと言われた為、せめて、新しい世界では苦しまないようにと防御に突出した能力をイメージする。 目を覚ますと見知らぬ世界に居て……学生くらいの年齢に若返っていて…… 現実か夢かわからなくて……そんな世界で出会うヒロイン達に…… 特殊な能力が当然のように存在するその世界で…… 自分の存在も、手に入れた能力も……異世界に来たって俺の人生はそんなもん。 俺は俺の出来ること…… 彼女たちを守り……そして俺はその能力を駆使して彼女たちを英雄にする。 だけど、そんな彼女たちにとっては俺が英雄のようだ……。 ※※多少意識はしていますが、主人公最強で無双はなく、普通に苦戦します……流行ではないのは承知ですが、登場人物の個性を持たせるためそのキャラの物語(エピソード)や回想のような場面が多いです……後一応理由はありますが、主人公の年上に対する態度がなってません……、後、私(さくしゃ)の変な癖で「……」が凄く多いです。その変ご了承の上で楽しんで頂けると……Mです。の本望です(どうでもいいですよね…)※※ ※※楽しかった……続きが気になると思って頂けた場合、お気に入り登録……このエピソード好みだなとか思ったらコメントを貰えたりすると軽い絶頂を覚えるくらいには喜びます……メンタル弱めなので、誹謗中傷てきなものには怯えていますが、気軽に頂けると嬉しいです。※※

ちっちゃくなった俺の異世界攻略

ちくわ
ファンタジー
あるとき神の采配により異世界へ行くことを決意した高校生の大輝は……ちっちゃくなってしまっていた! 精霊と神様からの贈り物、そして大輝の力が試される異世界の大冒険?が幕を開ける!

独身貴族の異世界転生~ゲームの能力を引き継いで俺TUEEEチート生活

髙龍
ファンタジー
MMORPGで念願のアイテムを入手した次の瞬間大量の水に押し流され無念の中生涯を終えてしまう。 しかし神は彼を見捨てていなかった。 そんなにゲームが好きならと手にしたステータスとアイテムを持ったままゲームに似た世界に転生させてやろうと。 これは俺TUEEEしながら異世界に新しい風を巻き起こす一人の男の物語。

処理中です...