異世界転生録~死と隣り合わせのこの世界で死なないため、力を付けます!!~

島津穂高

文字の大きさ
173 / 188

第173話 蟲のダンジョン 下層ボス戦

しおりを挟む
俺は”隠蔽”を解除し、死の魔力を開放した。



『…よし、行くか。』



巨大な扉に触れると、突然扉に魔力が吸われた。

それも、結構な勢いで。



『くっ…!?罠か…!?』



しかし罠ではなかったようで、数秒後魔力の吸収が終わった。

結果的には最大MPの十分の一ほどしか吸収されなかった。

そして扉に紋章のような模様が光り始めた。



『なんだ…これは?』



本を開いて調べていると、この紋章に関する記述があった。



「ダンジョン型魔物の一番の養分は、悪魔が用いている死の魔力である。階層主の扉に右の紋章が現れるほど死の魔力を吸収させた場合、その階層主は一段と強くなっていることだろう。同時に、得られる報酬も良くなる。尚、強さが変わるのは階層主だけである。」



つまり、ボスが強くなる分ドロップも期待できるということだ。

念願の装備品ドロップを得られるかもしれない。



『…一応万全を期して挑むか。』



死の魔力が吸収されてから、扉の向こうから並々ならぬ気配がだだ洩れている。

舐めてかかったら怪我をしそうなほど強化されているようなので、自身に持ちうる全てのバフをかけた。



『…行こう。』



扉を開けると、目の前には何も居なかった。



『…上か!!!』



”気配察知”に反応があり、見上げると巨大な蜘蛛が巣のところにいた。



”鑑定”によると、個体名はビッグポイズンスパイダーで体長は十メートルほど。

ステータス値はそこまで死の魔力を吸われていなかったためかグレイの五分の一程度だが、ユニークスキル”腐蝕”が厄介だろう。



ビッグポイズンスパイダーは俺に気付くや否や毒性のある糸を口から吐いて攻撃してきた。

俺は自身の周りに結界魔法”絶対不可侵結界”を展開してそれを難なく防いだ。

…はずだった。



『なっ…!!結界が…溶かされた…!?』



結界がボコボコと音を立てながら溶けていき、溶けた液体が地面に垂れた。

すると、その液体が落ちた地面もまた溶け始めた。



『これが”腐蝕”の効果か…』



思っていた以上に厄介なようだ。

今まで海龍の規格外れな古代魔法以外どんな攻撃も防いだ”絶対不可侵結界”が、いとも簡単に破られてしまった。



俺は対応策として自身の周りに”絶対不可侵結界”を数十枚展開し、防御を固めた。

ビッグポイズンスパイダーの糸攻撃が終わると同時に、相手の防御力を試すため風属性魔法”ウインドカッター”を放った。



『ステータス差は大きいから流石に効くだろ。』



…そう思っていたが、浅はかだった。

”腐蝕”の効果は攻撃だけでなく自身の身体にも付与されていたようで、足の一本で軽々無効化されてしまった。



『くっ…!すぐに溶かされないほどの威力が無いと直接攻撃は通じないか…』



ならば範囲攻撃をするまでだ。

俺は風属性魔法限界突破Lv.1”暴風球”を右手にストックした。



”暴風球”はまるでハリケーンそのものを凝縮したようだ。

以前山に向かって行使したところ、木々がなぎ倒されて宙に浮くだけでなく、山肌は酷く抉れて一部では溶岩が漏れ出した。



『…ボス部屋壊れたりしないよな?』



本には”ダンジョン内の物は全て”破壊不能”の効果が付与されているらしいが、少し心配だ。

…しかしいつまでも攻めあぐねていたらこちらがやられてしまう。



『…なんとでもなれ!!!』



俺はビッグポイズンスパイダーに向かって”暴風球”を行使した。

規模と威力が大きいため”腐蝕”しきれなかったようで、見事直撃させることに成功した。



『よし…!!』



周囲の瞬間最大風速はえげつないほどになっていそうだが、俺は”絶対不可侵結界”のおかげでなんともない。

…今でも”絶対不可侵結界”がまるでバターのように溶かされたことが信じられない。



『…って”絶対不可侵”じゃなくね?”腐蝕”に浸食されてるじゃん…』



そんなことを考えていると、”暴風球”で粉々になったビッグポイズンスパイダーの欠片が降って来た。

一撃で倒せたようでよかった。

魔人化を恐れて最近は控えていたが、使い道が多そうなので”鑑定&略奪”で”腐蝕”を習得した。



そして肝心のドロップアイテムは、”ストレングスリングS”という指輪だった。

効果は攻撃力60%上昇、防御力10%低下だった。



『マイナス効果が付いてるのか…でも比率で考えたら大したことないか!!』


とりあえず先にある転移門開通してから安全地帯で休もう。

食事をとりながら”アイテムボックス”を整理していると、今まで読んでいた”ダンジョンの場所と歴史”とは別に”〇〇ダンジョン攻略法”と言った攻略本を見つけた。



『こんなの持ってたっけ?…まあいいか。』



試しに”蟲のダンジョン攻略法”を読んでみた。



「蟲のダンジョンは全31層で構成されており、階層主はそれぞれ10層ごとに現れる。30層と31層は連戦になるので、気を付けるように。では1層の魔物の攻略法を書き記そう。個体名は…」



古代文字なのはさておき、非常に丁寧に、かつ抜け目なく書かれていた。

これを読めば完全攻略できること間違いなしだろう。



『まじか…でも前世からそうだけど攻略本は読まずに自分で答えを導き出したいんだよな。その方が楽しいし…』



行き詰ったときまでなるべく見ないようにしよう。

攻略後に読んで、レアアイテムやレア素材を見逃していたら二周目の攻略をすればいいだろう。

”魔王候補者”になったおかげで時間は無限にあるのだから。
しおりを挟む
感想 14

あなたにおすすめの小説

異世界に召喚されて2日目です。クズは要らないと追放され、激レアユニークスキルで危機回避したはずが、トラブル続きで泣きそうです。

もにゃむ
ファンタジー
父親に教師になる人生を強要され、父親が死ぬまで自分の望む人生を歩むことはできないと、人生を諦め淡々とした日々を送る清泉だったが、夏休みの補習中、突然4人の生徒と共に光に包まれ異世界に召喚されてしまう。 異世界召喚という非現実的な状況に、教師1年目の清泉が状況把握に努めていると、ステータスを確認したい召喚者と1人の生徒の間にトラブル発生。 ステータスではなく職業だけを鑑定することで落ち着くも、清泉と女子生徒の1人は職業がクズだから要らないと、王都追放を言い渡されてしまう。 残留組の2人の生徒にはクズな職業だと蔑みの目を向けられ、 同時に追放を言い渡された女子生徒は問題行動が多すぎて退学させるための監視対象で、 追加で追放を言い渡された男子生徒は言動に違和感ありまくりで、 清泉は1人で自由に生きるために、問題児たちからさっさと離れたいと思うのだが……

酒好きおじさんの異世界酒造スローライフ

天野 恵
ファンタジー
酒井健一(51歳)は大の酒好きで、酒類マスターの称号を持ち世界各国を飛び回っていたほどの実力だった。 ある日、深酒して帰宅途中に事故に遭い、気がついたら異世界に転生していた。転移した際に一つの“スキル”を授かった。 そのスキルというのは【酒聖(しゅせい)】という名のスキル。 よくわからないスキルのせいで見捨てられてしまう。 そんな時、修道院シスターのアリアと出会う。 こうして、2人は異世界で仲間と出会い、お酒作りや飲み歩きスローライフが始まる。

異世界転移からふざけた事情により転生へ。日本の常識は意外と非常識。

久遠 れんり
ファンタジー
普段の、何気ない日常。 事故は、予想外に起こる。 そして、異世界転移? 転生も。 気がつけば、見たことのない森。 「おーい」 と呼べば、「グギャ」とゴブリンが答える。 その時どう行動するのか。 また、その先は……。 初期は、サバイバル。 その後人里発見と、自身の立ち位置。生活基盤を確保。 有名になって、王都へ。 日本人の常識で突き進む。 そんな感じで、進みます。 ただ主人公は、ちょっと凝り性で、行きすぎる感じの日本人。そんな傾向が少しある。 異世界側では、少し非常識かもしれない。 面白がってつけた能力、超振動が意外と無敵だったりする。

最強の異世界やりすぎ旅行記

萩場ぬし
ファンタジー
主人公こと小鳥遊 綾人(たかなし あやと)はある理由から毎日のように体を鍛えていた。 そんなある日、突然知らない真っ白な場所で目を覚ます。そこで綾人が目撃したものは幼い少年の容姿をした何か。そこで彼は告げられる。 「なんと! 君に異世界へ行く権利を与えようと思います!」 バトルあり!笑いあり!ハーレムもあり!? 最強が無双する異世界ファンタジー開幕!

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

ちっちゃくなった俺の異世界攻略

ちくわ
ファンタジー
あるとき神の采配により異世界へ行くことを決意した高校生の大輝は……ちっちゃくなってしまっていた! 精霊と神様からの贈り物、そして大輝の力が試される異世界の大冒険?が幕を開ける!

【改訂版】槍使いのドラゴンテイマー ~邪竜をテイムしたのでついでに魔王も倒しておこうと思う~

こげ丸
ファンタジー
『偶然テイムしたドラゴンは神をも凌駕する邪竜だった』 公開サイト累計1000万pv突破の人気作が改訂版として全編リニューアル! 書籍化作業なみにすべての文章を見直したうえで大幅加筆。 旧版をお読み頂いた方もぜひ改訂版をお楽しみください! ===あらすじ=== 異世界にて前世の記憶を取り戻した主人公は、今まで誰も手にしたことのない【ギフト:竜を従えし者】を授かった。 しかしドラゴンをテイムし従えるのは簡単ではなく、たゆまぬ鍛錬を続けていたにもかかわらず、その命を失いかける。 だが……九死に一生を得たそのすぐあと、偶然が重なり、念願のドラゴンテイマーに! 神をも凌駕する力を持つ最強で最凶のドラゴンに、 双子の猫耳獣人や常識を知らないハイエルフの美幼女。 トラブルメーカーの美少女受付嬢までもが加わって、主人公の波乱万丈の物語が始まる! ※以前公開していた旧版とは一部設定や物語の展開などが異なっておりますので改訂版の続きは更新をお待ち下さい ※改訂版の公開方法、ファンタジーカップのエントリーについては運営様に確認し、問題ないであろう方法で公開しております ※小説家になろう様とカクヨム様でも公開しております

独身貴族の異世界転生~ゲームの能力を引き継いで俺TUEEEチート生活

髙龍
ファンタジー
MMORPGで念願のアイテムを入手した次の瞬間大量の水に押し流され無念の中生涯を終えてしまう。 しかし神は彼を見捨てていなかった。 そんなにゲームが好きならと手にしたステータスとアイテムを持ったままゲームに似た世界に転生させてやろうと。 これは俺TUEEEしながら異世界に新しい風を巻き起こす一人の男の物語。

処理中です...