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第88話 武闘大会 第4回戦①

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師匠と別れた後、俺はそのまま森林フィールドに向かった。

”魔力念操作”の理解を深めるためだ。



魔鎧はある程度完成したので、次は魔力を武器に纏わせる訓練をしようと思う。

これは魔器と名付けることにした。



まずは念じることで魔力の形を自由に変形できるようになる必要がある。

もし太い魔力の塊を剣に纏うと頑丈さを増すが斬撃力を失うため、薄く鋭い形にして纏う必要があるのだ。



『なかなか難しそうだな…』



残念なことに、その予感は的中した。

午後を全て使って訓練したものの、まだ10cmほどの厚みが残ってしまう。



『何かコツとかないか…?』



この訓練は特に場所や道具不要なので、屋敷に帰ってからも自室で行った。

しかし、結局それ以上薄くすることができずに眠った。



翌朝、俺は減ったMPを回復しながら闘技場に向かった。



「お前ら元気かーーーー!!!」



「おおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!」



「今日は第4回戦!!残り32人、ここから熾烈な戦いが始めるぞー!!!」



「おおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!」



今日の試合で勝てればベスト16入りするので昇格試験合格だ。



『絶対に負けられないな…!!』



俺は4試合目なので、それまで闘技場の外で魔器の練習をした。

すると、試合前で集中力が高まっていたおかげかついに成功した。



「よっしゃ!!」



試しに”アイテムボックス”から海王の鱗を取り出し、斬りつけてみると、綺麗に真っ二つになった。



『おぉ!!同じ素材でこうも違いが出るのか…!』



魔器の効果が思っていたよりもあり、俺はびっくりした。



『これを任意に操作できるようになるまで頑張ろう!!』



そう意気込んだが、そろそろ試合が近づいていたので急いで控室に戻った。



「それではユージン選手とダグラス選手は入場してください。」



俺は一息つき、落ち着いてから入場した。



「ダグラス選手が入場しましたー!!!さぁ今日も圧倒的な力を見せてくれるのかーー!!!」



「おおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!」



「頑張れーーー!!!!」



観客から応援されて少し恥ずかしくなった。



「ユージン選手も続いて入場!!!!彼は今まで全く攻撃を食らわずに勝ち続けています!!果たして継続されるのかーー!!!」



「ユージン勝てーーー!!!!」



ユージン選手の速攻攻撃に警戒し、バフ全快でがっしり構えた。

闘技場には緊張感が漂っている。



「それでは試合開始!!!!」



ユージン選手の汗が地面に落ちると同時に高速で移動し始めた。

彼の卓越した素早さで俺を翻弄しようという魂胆だろう。



「俺の速さについて来られるか?まあ無理だろうな!!」



対する俺は観察に徹し、ユージン選手の動きを完全に見切った。

この速さだと鉱山都市で戦ったインプの1/2にも満たないだろう。



「おーっと!!ダグラス選手でもこの速さにはついていけないのかーー!!!」



「いいぞユージン!!!」



俺は左脇腹にスペースを作って攻撃を誘った。

そこを攻撃してきたところでカウンターを入れるという思惑だ。



すると、ユージン選手はすぐに素早さ頼りの攻撃をしてきた。

俺は狙い通りにすれ違いざまにカウンターを食らわせた。



「っ!?ぐはっ!!」



「おーっと!!!ユージン選手、持ち前の素早さで圧倒していたように見えましたが倒れこみましたーー!!!」



「くっ!!まだまだぁ!!!」



「これで終わりだ!!」



俺は倒れこんだユージン選手にとどめの蹴りを入れ、気絶させた。



「試合終了ーーー!!!!ダグラス選手、ユージン選手の素早い攻撃を打ち破り見事勝利ー!!」



「おおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!」



「ナイスファイトだったぞユージンーーー!!」



「それにしてもダグラス選手の誘い方は上手かったですね!!ユージン選手は完全にダグラス選手の掌の上で踊らされていましたね。」



「ええ。今後の試合も大いに期待できます!!」



俺は試合を終え、フィールドにはいかず控室に戻った。

そろそろ初見で戦うのは厳しいと思ったからだ。



『不意打ちでやられたら嫌だしな…一応対戦相手になる選手のステータスは”鑑定”しておこう。』



俺を除いて1番ステータスが高いのはやはりダントツで師匠だった。

他の選手のステータスはそこそこ高いが、取るに足らないほどだ。



『…ん?あれはなんだ?』



俺は今までに見たことが無い”影縫い”というスキルを発見した。

効果を調べると、影を操ることができるようだ。

ちなみにその選手はこの後戦う師匠の対戦相手だった。



『まあ師匠なら心配要らないか。』
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