異世界転生録if～死と隣り合わせのこの世界で死なないため、力を付けます！！～

第143話 和解

翌朝

早いうちに支度を終えて俺とヨークは王宮に向かった。



「ダグラス様、本当に大丈夫でしょうか…？」



「…交渉の行方は分からんが、最悪命を狙われても俺とヨークの戦闘能力なら大丈夫だ。」



「それは…そうですね。」



それから門前に着き、ヨークが話をつけてついに玉座の扉の前に来た。

ヨークが横でそわそわしている。



「…ん？」



「な、何かございましたか？」



「いや、なんでもない。」



玉座に結界魔法”物理遮断シールド”が展開されているようだ。

クオリティーは低いが、人は通れないだろう。



「…入れ。」



これは国王のいたずらか…？

それとも俺とヨークを試しているのか…？



「お言葉ですが陛下、結界が展開されているようなのですが…」



「む…！よく気が付いたな！！では解除して入ってくるがよい！！」



「はっ！」



俺は少し強い魔力の塊を結界にぶつけ、穴を開けた。

そしてヨークを前に玉座に入った。



「…久しいなヨーク。」



「はい。キース殿下もお変わりがなく安心いたしました。」



「して…貴様は付き添いか？」



「はっ！ダグラスと申します。」



「そうか…ということは貴様が前回の武闘大会の優勝者だな？」



「…はい。」



まさか敵国であるはずの魔法国家の、しかも国王に知られているとは…

それより魔法国家の国王の方は落ち着いた人のようで良かった。



「…ひとまずダグラスのことはおいておこう。それでヨーク、何があった？」



「はっ！実は…」



それからヨークが先王アッシュの戦死と愚王イゴールが反逆による死を事細かに説明した。



「そうか…まさかアッシュが死ぬ日が来るとはな…人生何が起きるかわからないということか。」



「…それでキース殿下、私は戦争の中止をお伝えに参りました。」



「ほう…だがこちらも応戦の準備に色々とかかってしまった。それはどうするつもりだ？」



「負債という形で返済させていただければと…」



「…それで良いだろう。始めていたら死者も出ていたであろうしな。」



「ありがとうございます…！！」



それからヨークとキース陛下で今後の詳細を話し合った。

ヴァルハラ帝国の国王として、これからこういった外交も必要になってくると思われるので非常に勉強になった。



考えていたよりもずっと順調に話が終わり、昨日考えたことは無駄になったがまあいいだろう。

変に争いになるよりはましだ



「…戦争の件はこれで終わりだ。してダグラスよ、先程はどうやって余の結界を見破ったのだ？」



「武闘大会の際にSランク冒険者フィオナ殿が結界を展開しなさり、その時と同じような魔力を感じたのです。」



「なるほど…」



嘘ではないが、俺が結界魔法を行使できることは伏せておいた方がいいだろう。

和解した今、俺の手の内を明かすだけ無駄になってしまう。



「ダグラス、貴様は武技だけではなく魔法にも才能があるようだな。」



「お褒めに預かり光栄です。」



「宮廷魔法師見習いとして雇われてみないか？ダグラスなら将来立派な魔法剣士になるだろう。」



「…お言葉ですが陛下、私の武技はまだまだ未熟です。二兎を追う者は一兎をも得ずと言いますし、大人しく武技の道を進もうと思っております故…」



「そうか…気が変わったらいつでも来い。」



「はっ！ありがとうございます。」



それから俺とヨークは魔法国家を出て武闘国家に戻ってきた。

結局のところ俺が付き添った意味は宮廷魔法師の推薦以外ほとんどなかった。



『…まあそれだけで十分か。』



正直キース殿下は是非配下に加えたい。

そう思ったとき、俺は非人道的なことを考えてしまった。



死体を利用してアンデッド化させればいいか…と。



『…何を考えてるんだかな。』



これは魔王因子が増幅している副作用だろうか。

今後警戒しておく必要がありそうだ。



「ダグラス様、この度は何とお礼を申し上げれば良いか…」



「気にするな。それで、ヨークはこれからどうするつもりだ？」



「私は武闘国家の政治体制を立て直そうかと。」



「そうか。じゃあここで別れだな。」



「はい。どうかお体ご自愛下さい。」



「ああ。ヨークもな。」



ヨークと別れた後、マルコの隠れ家に戻って来た。

移住の件は他のドワーフ達の意見も聞きたいとのことで一旦延期となった。



『次は…久々にメリルのところに顔を出すか。』