パーフェクトワールド

木原あざみ

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第三部

パーフェクト・ワールド・エンドⅥ ①

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[6]


「生徒会?」

 ちょっと話があるんだけど、なんて、あの笑顔で呼び止められたときから嫌な予感はしていたが、やっぱりろくでもなかった。
 それでもあからさまに嫌な顔をしなかったのは、食堂の一角だったからにほかならない。

「なんでまた、……っていうか、なんで俺なの」
「皓太が適任だって思ったからかな」
 
 にこ、といつもの調子でほほえまれて、皓太は閉口した。
 いや、だから俺が聞きたいのは、「なんで適任なのか」という理由のほうなんだけど。っていうか、無理に俺を勧誘しなくても、やりたがる人いくらでもいるでしょ。二年にでも、三年にでも。
 また面倒なことに巻き込まれてるなぁ、と思いながら、ちらと周囲に意識を向ける。居残っている寮生の数は多くないものの、それでもいくつもの視線がちくちくと突き刺さっている。
 気にしなくてもいいのかもしれないが、最近の櫻寮の雰囲気がよろしくないものだから、つい意識してしまうのだ。
 
 ――まぁ、聞かせたくないなら、こんな場所は選ばないだろうけど。

 つまり、知らしめたいということだ。そう理解した上で、皓太はもうひとつを問いかけた。この寮の空気が変わってしまった原因のふたつめを。

「その、……それって、向原さんが辞めるからってこと?」

 この噂が出回り始めたころから、榛名の一件で浮ついていた寮の空気が、またひとつ変わった。
 あからさまになにがどうと変わったわけではない。けれど、この寮の主要な歯車が、みんな「普通」を演じているような違和感が、皓太にはある。
 なにかがひとつでもずれた瞬間に壊れてしまいそうな、そんな前兆を感じ取っている、といったほうが正しいのかもしれないが。

 その歯車のひとつである幼馴染みが、困ったような笑みを浮かべた。

「その噂、もう皓太の耳にも届いてるんだ」

「そりゃ、まぁ」

 あっさりと認められてしまって、皓太は曖昧に言葉を濁した。そりゃ、なるに決まっている。なにせ、ものすごくこの学園で目立っている人たちの異変なのだ。
 辞めたらしいという噂は、自分たちが「つがい」だと宣言したあの日の午後には出回っていた。ついでに言うと、皓太のクラスでは「このままだと本当にハルちゃんを取られてしまいそうだ」なんてものも心配顔で噂されているのだが。

「成瀬さんも向原さんも、目立つから」
「あいつの場合、好きで目立ってるわけじゃないとは思うけどな」

 変わらない調子であっさりと苦笑してから、成瀬は話を戻した。

「まぁ、そんなわけで、補選ってかたちになるのかな。さっきも言ったとおりで、俺も、篠原も、皓太がいいんじゃないかなって話してたんだけど」
「はぁ……」
「もちろん無理にとは言わないけど、どうかな。やってみる気ない?」

 と言いながらも、まちがいなくこの人は俺が頷くと踏んでいる。
 なんだかんだで、この学園にいる誰よりも長い付き合いなのだ。そのくらいのことはわかる。最後の抵抗で、皓太は眉間に皺を寄せた。

「ほかにもいるでしょ。手を上げたがってる人。ちゃんと公募したらいいのに」
「公募もするし、出たい子がほかにもいたら投票戦になるとは思うけど。でも、通らないとどうにもならないしな」

 つまるところ、俺にさえ出る気があれば、通るように裏から手を回してくれるということか。
 本当にこの人のいったいどこが誠実で公平なのか。盲目すぎるきらいのある同室者を問い詰めたい気もしたが、それよりも、と一度頭を切り替える。
 自分が口を出すことではないとわかっていたが、噂を耳にしたときから気にかかってはいたのだ。なにより、榛名もきっと気にしている。
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