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第三部
パーフェクト・ワールド・エンド19 ④
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どうにか、と言った茅野の視線は、自分の背後に注がれている。
「どうにかって、どいつもこいつもアルファは好き勝手言いやがって……」
舌打ちまじりの苛立った声に、ちらと視線を向ける。ベッドの上に座り込んだまま、成瀬が吐き捨てた。
「効かねぇんだよ、おまえのせいで!」
おまえのせいだ、という台詞をその口から聞いたのは、二度目だった。怪訝な視線に気がついたのか、顔を逸らす。次に取り出したのは、一見して多すぎるとわかる量の錠剤だった。おそらく、効かないと言い切ったばかりの抑制剤。
響いた噛み砕く音に、ぎょっとしたように茅野が問い質す。
「おい、どう考えても飲み過ぎだろう。なにを飲んだ」
「効く気しねぇけど抑制剤。あと避妊薬」
ぶっきらぼうに言い捨てるなり、成瀬が立ち上がった。ふわ、と甘い香りが立つ。
「ヤんのは仕方ないにしても、さすがにできたら困る」
「できたらって……」
「なんだよ。どうにかしろって言ったの、茅野だろ」
絶句した茅野を冷めた目で笑って、その横を通り抜けて出て行こうとする。その腕を、茅野が慌てて掴んだ。
「おい、こら! どこに行くんだ、おまえは!」
「いられるわけないだろ、こんなとこに」
そこで、ようやく成瀬がこちらを見た。ばちりと目が合う。
「べつに収まるなら誰とヤッてもいい。ただの本能だし、処理だと思えばそれでいい。でも、おまえだけは絶対に嫌だ」
「おい、成瀬!」
「おまえだって、寮内でヤられたくはないだろ。外でするって言ってんだ。これ以上文句言われる筋合いはない」
「筋合いって、おまえなぁ。そういう問題じゃないだろう」
「なら、どういう問題だよ」
「どういうって……」
困惑した顔のまま、助けを求めるように茅野が視線を飛ばしてくる。この状況で、言い諭そうとしたところで時間の無駄でしかない。馬鹿馬鹿しく思いながらも、向原は小さく頷いてみせた。
なにをどう言ったところで聞く耳を持たないのだ。納得なんてさせられるわけがないだろうとも呆れながら。
「成瀬」
いつもと変わらない調子で呼びかけると、妙に素直に成瀬が振り向いた。本当に、警戒心も危機感もあったものじゃない。
最低限の加減だけで腹に一撃を加えると、なんの警戒もしていなかった身体は簡単にぐらりと傾いだ。
平然とした顔を取り繕っていただけで、ろくに立てないような有様だったことを思えばあたりまえの結果だった。
抱きとめようと伸ばされた手を振りほどくように引き寄せたついでに同じ個所に膝を入れると、完全に身体が沈んだ。
「おい、……さすがに、おまえ、それは乱暴すぎないか」
「不可抗力だろ、この場合」
腕の中の身体は異常に熱いままだ。よく平気そうに問答を繰り返していたなと、その頑固さに呆れるくらいに。
「それとも、おまえ、これを外に出すつもりだったのか」
「まさか」
向原を一瞥した茅野が、溜息まじりに首を横に振った。
「遭遇したアルファが気の毒すぎる」
「どうにかって、どいつもこいつもアルファは好き勝手言いやがって……」
舌打ちまじりの苛立った声に、ちらと視線を向ける。ベッドの上に座り込んだまま、成瀬が吐き捨てた。
「効かねぇんだよ、おまえのせいで!」
おまえのせいだ、という台詞をその口から聞いたのは、二度目だった。怪訝な視線に気がついたのか、顔を逸らす。次に取り出したのは、一見して多すぎるとわかる量の錠剤だった。おそらく、効かないと言い切ったばかりの抑制剤。
響いた噛み砕く音に、ぎょっとしたように茅野が問い質す。
「おい、どう考えても飲み過ぎだろう。なにを飲んだ」
「効く気しねぇけど抑制剤。あと避妊薬」
ぶっきらぼうに言い捨てるなり、成瀬が立ち上がった。ふわ、と甘い香りが立つ。
「ヤんのは仕方ないにしても、さすがにできたら困る」
「できたらって……」
「なんだよ。どうにかしろって言ったの、茅野だろ」
絶句した茅野を冷めた目で笑って、その横を通り抜けて出て行こうとする。その腕を、茅野が慌てて掴んだ。
「おい、こら! どこに行くんだ、おまえは!」
「いられるわけないだろ、こんなとこに」
そこで、ようやく成瀬がこちらを見た。ばちりと目が合う。
「べつに収まるなら誰とヤッてもいい。ただの本能だし、処理だと思えばそれでいい。でも、おまえだけは絶対に嫌だ」
「おい、成瀬!」
「おまえだって、寮内でヤられたくはないだろ。外でするって言ってんだ。これ以上文句言われる筋合いはない」
「筋合いって、おまえなぁ。そういう問題じゃないだろう」
「なら、どういう問題だよ」
「どういうって……」
困惑した顔のまま、助けを求めるように茅野が視線を飛ばしてくる。この状況で、言い諭そうとしたところで時間の無駄でしかない。馬鹿馬鹿しく思いながらも、向原は小さく頷いてみせた。
なにをどう言ったところで聞く耳を持たないのだ。納得なんてさせられるわけがないだろうとも呆れながら。
「成瀬」
いつもと変わらない調子で呼びかけると、妙に素直に成瀬が振り向いた。本当に、警戒心も危機感もあったものじゃない。
最低限の加減だけで腹に一撃を加えると、なんの警戒もしていなかった身体は簡単にぐらりと傾いだ。
平然とした顔を取り繕っていただけで、ろくに立てないような有様だったことを思えばあたりまえの結果だった。
抱きとめようと伸ばされた手を振りほどくように引き寄せたついでに同じ個所に膝を入れると、完全に身体が沈んだ。
「おい、……さすがに、おまえ、それは乱暴すぎないか」
「不可抗力だろ、この場合」
腕の中の身体は異常に熱いままだ。よく平気そうに問答を繰り返していたなと、その頑固さに呆れるくらいに。
「それとも、おまえ、これを外に出すつもりだったのか」
「まさか」
向原を一瞥した茅野が、溜息まじりに首を横に振った。
「遭遇したアルファが気の毒すぎる」
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