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第三部
パーフェクト・ワールド・エンドⅢ 17 ④
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つまるところ、なにかしら引っかかるものがあるらしい。それにしても、と。出てきた名前が気になって、成瀬は問いかけた。
「向原? 珍しいな、一年の子と関わるの」
「なんだ、聞いていなかったのか。本人いわく、たまたまそういうタイミングだった、というだけのことらしいが。絡まれているところを助けてやったらしいぞ。四谷本人が言っていたし、あいつも否定はしなかったから、そうなんだろう」
「へぇ、向原が」
「まぁ、向原が口を出したらしいことも意外は意外だったんだが。四谷がそういう迂闊なことをしていたほうが意外でな」
迂闊。判断をつけかねて、小さく頷くに留める。自分よりも確実に茅野のほうが理解しているはずなので、間違いはないのだろうが。
――そういう迂闊なことをしない子だから、近くで行人に学ばせたかったわけか。
行人、警戒心だけは強いけど、自分を守るために対人関係を動かすの苦手そうだからな。
そういうところが、かわいくはあるのだが。その納得を裏付けるような補足が続く。
「そういうタイプじゃないんだ。語弊はあるかもしれんが、どちらかというと、おまえや水城に近い、自分の容姿を自覚して、警戒心が強くて気も回る。頭も良い。この荒れているタイミングで、迂闊な行動をするとは思えない」
「今の水城みたいに?」
ふらふらしているという話のほうは、いろいろなところから聞いていた。ふっと笑った成瀬に、まぁ、そうだな、と茅野も小さく笑った。
「あれはあれで、さすがにわざとらしいと俺は思うんだが。真に受けて心配している者もいるからな。一概にわざとらしいとも言えないか」
「本気で心配してたみたいだったよ、行人も」
「人がいいな、あいつは。心配してやるようなことはされていないだろうに」
「そういう子なんだよ」
忖度なく、他人の心配をできる子。不器用ではあるけれど、根底にあるまっすぐさがかわいくて、きっと必要以上に構っていた。
「そうかもしれないな」
さらりとそう認めてから、茅野は話を戻した。
「四谷の話だが。おまえや水城に近いと言ったが、おまえたちのように、なにをされても問題ないというレベルまで割り切っているとは思わない」
「……」
「そういう意味で、変な行動はしないだろうと思っていた、ということだ。俺の主観だけどな」
「……そっか」
「榛名と仲良くやっているのも本心だと思っていたんだが」
思うところはあったかもしれないが、上手に吐き出しながら折り合いを付けているように見えていたんだけどな、と続いた台詞に、そっか、ともう一度成瀬は頷いた。
――人の心なんて、わからないよな。たぶん、誰にも。
思いやろうとしたところで、結局、それは、自分の価値感の延長線上のものでしかない。
「ここまで言っておいてなんだが、おまえはあまり気にするな」
その言いように、茅野を窺った。フォローのつもりなら、余計な世話だと思ったからだ。
「ようやく少しは肩の荷が下りたところだろう」
「……俺がなにしたわけでもないけど」
予想外に労わられてしまって、苦笑まじりに否定を返す。
「というか、いろいろしたつもりだったけど、今日の皓太見てたら、べつに本当に必要なかったなって。本当に、あっというまに大きくなるな」
「だから、子ども扱いしすぎるなと言っただろう」
「言ってたな」
茅野からだけではなく、至るところから言われていたことではあったのだけれど。
わかっていたのに改めなかったのは、面倒を見る自分でいたかったのかもしれない。そういう意味でも、「誰かに認めらないと、自分の価値を認められないのか」という向原の指摘は、的を得ていた。
本当に、嫌になるほど。
「向原? 珍しいな、一年の子と関わるの」
「なんだ、聞いていなかったのか。本人いわく、たまたまそういうタイミングだった、というだけのことらしいが。絡まれているところを助けてやったらしいぞ。四谷本人が言っていたし、あいつも否定はしなかったから、そうなんだろう」
「へぇ、向原が」
「まぁ、向原が口を出したらしいことも意外は意外だったんだが。四谷がそういう迂闊なことをしていたほうが意外でな」
迂闊。判断をつけかねて、小さく頷くに留める。自分よりも確実に茅野のほうが理解しているはずなので、間違いはないのだろうが。
――そういう迂闊なことをしない子だから、近くで行人に学ばせたかったわけか。
行人、警戒心だけは強いけど、自分を守るために対人関係を動かすの苦手そうだからな。
そういうところが、かわいくはあるのだが。その納得を裏付けるような補足が続く。
「そういうタイプじゃないんだ。語弊はあるかもしれんが、どちらかというと、おまえや水城に近い、自分の容姿を自覚して、警戒心が強くて気も回る。頭も良い。この荒れているタイミングで、迂闊な行動をするとは思えない」
「今の水城みたいに?」
ふらふらしているという話のほうは、いろいろなところから聞いていた。ふっと笑った成瀬に、まぁ、そうだな、と茅野も小さく笑った。
「あれはあれで、さすがにわざとらしいと俺は思うんだが。真に受けて心配している者もいるからな。一概にわざとらしいとも言えないか」
「本気で心配してたみたいだったよ、行人も」
「人がいいな、あいつは。心配してやるようなことはされていないだろうに」
「そういう子なんだよ」
忖度なく、他人の心配をできる子。不器用ではあるけれど、根底にあるまっすぐさがかわいくて、きっと必要以上に構っていた。
「そうかもしれないな」
さらりとそう認めてから、茅野は話を戻した。
「四谷の話だが。おまえや水城に近いと言ったが、おまえたちのように、なにをされても問題ないというレベルまで割り切っているとは思わない」
「……」
「そういう意味で、変な行動はしないだろうと思っていた、ということだ。俺の主観だけどな」
「……そっか」
「榛名と仲良くやっているのも本心だと思っていたんだが」
思うところはあったかもしれないが、上手に吐き出しながら折り合いを付けているように見えていたんだけどな、と続いた台詞に、そっか、ともう一度成瀬は頷いた。
――人の心なんて、わからないよな。たぶん、誰にも。
思いやろうとしたところで、結局、それは、自分の価値感の延長線上のものでしかない。
「ここまで言っておいてなんだが、おまえはあまり気にするな」
その言いように、茅野を窺った。フォローのつもりなら、余計な世話だと思ったからだ。
「ようやく少しは肩の荷が下りたところだろう」
「……俺がなにしたわけでもないけど」
予想外に労わられてしまって、苦笑まじりに否定を返す。
「というか、いろいろしたつもりだったけど、今日の皓太見てたら、べつに本当に必要なかったなって。本当に、あっというまに大きくなるな」
「だから、子ども扱いしすぎるなと言っただろう」
「言ってたな」
茅野からだけではなく、至るところから言われていたことではあったのだけれど。
わかっていたのに改めなかったのは、面倒を見る自分でいたかったのかもしれない。そういう意味でも、「誰かに認めらないと、自分の価値を認められないのか」という向原の指摘は、的を得ていた。
本当に、嫌になるほど。
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