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結婚してみますか?
ストーリー10
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ピンポーン……
呼び鈴を鳴らすとインターホン越しに『どうぞ』と母の声がしたので、合鍵を使って部屋の中へ入る。
「……想定外の人物だわ」
リビングへ行くと、母がソファーに足を組んで座っていた。そして、相沢さんを見て呟く。
「どうも編集長……いやお義母様。本日はお時間を頂きありがとうございます」
相沢さんは深々と丁寧にお辞儀をする。
「知ってると思うけど、相沢 智章さんです」
私は取り敢えず紹介する。
「えぇ、よく知ってるわ。まさか恋の結婚相手が相沢とは……」
母はソファーから立ち上がり、私と相沢さんの前に来た。何だか母と相沢さんは戦闘態勢に入ったように見える。
「ねぇ、いつ恋と知り合ったのかしら?」
「……数ヶ月前くらいですかね」
「知り合って数ヶ月? それならまだ結婚は早いんじゃないかしら?」
「確かに早いかもしれませんが、恋ちゃんとずっと一緒に居たいと思いました。俺の結婚相手は恋ちゃんしか考えられないです」
「まさか、恋が私の娘って知って手を出したんじゃないわよね?」
「いやだなぁ。出会った時は恋ちゃんのお母様が編集長とは思いもよらなかったし、それに……まだ恋ちゃんに手は出してないですよ」
「手を出す意味が違うしそんな生々しい報告は要らんわ! っていうか今後一切、私の可愛い娘に指一本触れるなぁ」
「そんな無理っす。どうやって子供作るんですか?」
「コウノトリに運んでもらいなさい!」
……。
何か話がずれてきているのは気のせい? もしかして、会社でも二人はこんな感じなのかな。
子供の喧嘩みたいにぎゃーぎゃー言い合っている。
取り敢えず、話に入れない私は勝手にキッチンを借りて三人分のお茶を入れた。
「お茶入れたから、飲みましょう」
私が二人に声をかけると、子供の喧嘩みたいなやりとりはピタッと終わり、ソファーに座ってお茶を飲み始める。
お茶を飲んで落ち着いたのか、母は今度は私に質問してきた。
「ねぇ恋。今まで恋愛に興味なかったあなたが、何で急に結婚しようと思ったの?」
「相……智章さんの事、いいなと思ったから。結婚は急かも知れないけど、私にしては珍しくちゃんと考えて決めたし、後悔もしない」
母の前だから名前呼びにしたけど、結構恥ずかしいな。
「……まぁいっか。相沢にも恋にも聞きたい事も言いたい事も山程あるけど、二人がちゃんと話して決めたのなら何も言わないわ」
母は大きなため息をしてそう言うと、お茶を一口飲んだ。
「結婚、認めてもらえるんですか?」
相沢さんはソファーから勢いよく立ち上がり、母の顔をジッと見る。
「えぇ。でもね、相沢。恋の事100%幸せにする自信がないのなら……結婚は諦めなさい」
「それなら大丈夫です。100%どころか1000%自信がありますよ」
「何処からそんな自信が湧いてくるのかしら。仕事にもそのくらい自信が欲しいわね」
「うわっ仕事の話はまた今度にして下さい」
苦笑しながら相沢さんはまたソファーに座った。
何はともあれ、結婚の承諾を得た私達はひとまず安心する。
この後も三人で色々話をして、この日は終わった。
「会社に結婚の報告しなきゃ」
母に結婚を認めてもらい、今度は次の行動に移る。結婚ってするまでも大変なんだな。面倒くさいとか言ってられない。
いつもの地味子スタイルで出社すると、まずは詩織に声をかける。
「おはよう。あのさ、話あるんだけど……」
「おはよう、恋ちゃん。話って何?」
「あ、えっと……」
何だか変に緊張して言葉を詰まらせてしまった。話づらそうにしている私を見た詩織はコロコロのついた椅子で私に近づき、コソッと小声で話をする。
「ここじゃ言い難い感じ? 場所変える?」
「そんなに大した話じゃないから。えっと、私……結婚する事になりました」
詩織に合わせて私も小声で話す。すると、詩織は勢い良く立ち上がって驚いたような表情になった。
「結婚!? えっ……恋ちゃんが?」
詩織の声はフロア中に響き渡り、他の社員達も一斉に私と詩織を見てきた。
「詩織、声大きいから」
「あっ」
状況を把握した詩織は、軽く咳払いをして椅子に座る。
「大した事ないって、大した事しかない話だよ。でも恋ちゃん、彼氏いるの秘密にするなんて寂しいじゃない。色々と恋話したかったのに~」
「まぁ詳しい話は後で話すから」
「じゃあさ、今日お祝いしよう」
詩織はお酒を飲む仕草をして、にっこりしながら私の返事を待つ。
「了解。さっ仕事しましょう」
「はぁい……あっ、大事な事言うの忘れてた」
「何?」
「恋ちゃん、結婚おめでとう」
「ありがとう」
改めておめでとうと言われ、照れからか少しくすぐったい気持ちになった。
呼び鈴を鳴らすとインターホン越しに『どうぞ』と母の声がしたので、合鍵を使って部屋の中へ入る。
「……想定外の人物だわ」
リビングへ行くと、母がソファーに足を組んで座っていた。そして、相沢さんを見て呟く。
「どうも編集長……いやお義母様。本日はお時間を頂きありがとうございます」
相沢さんは深々と丁寧にお辞儀をする。
「知ってると思うけど、相沢 智章さんです」
私は取り敢えず紹介する。
「えぇ、よく知ってるわ。まさか恋の結婚相手が相沢とは……」
母はソファーから立ち上がり、私と相沢さんの前に来た。何だか母と相沢さんは戦闘態勢に入ったように見える。
「ねぇ、いつ恋と知り合ったのかしら?」
「……数ヶ月前くらいですかね」
「知り合って数ヶ月? それならまだ結婚は早いんじゃないかしら?」
「確かに早いかもしれませんが、恋ちゃんとずっと一緒に居たいと思いました。俺の結婚相手は恋ちゃんしか考えられないです」
「まさか、恋が私の娘って知って手を出したんじゃないわよね?」
「いやだなぁ。出会った時は恋ちゃんのお母様が編集長とは思いもよらなかったし、それに……まだ恋ちゃんに手は出してないですよ」
「手を出す意味が違うしそんな生々しい報告は要らんわ! っていうか今後一切、私の可愛い娘に指一本触れるなぁ」
「そんな無理っす。どうやって子供作るんですか?」
「コウノトリに運んでもらいなさい!」
……。
何か話がずれてきているのは気のせい? もしかして、会社でも二人はこんな感じなのかな。
子供の喧嘩みたいにぎゃーぎゃー言い合っている。
取り敢えず、話に入れない私は勝手にキッチンを借りて三人分のお茶を入れた。
「お茶入れたから、飲みましょう」
私が二人に声をかけると、子供の喧嘩みたいなやりとりはピタッと終わり、ソファーに座ってお茶を飲み始める。
お茶を飲んで落ち着いたのか、母は今度は私に質問してきた。
「ねぇ恋。今まで恋愛に興味なかったあなたが、何で急に結婚しようと思ったの?」
「相……智章さんの事、いいなと思ったから。結婚は急かも知れないけど、私にしては珍しくちゃんと考えて決めたし、後悔もしない」
母の前だから名前呼びにしたけど、結構恥ずかしいな。
「……まぁいっか。相沢にも恋にも聞きたい事も言いたい事も山程あるけど、二人がちゃんと話して決めたのなら何も言わないわ」
母は大きなため息をしてそう言うと、お茶を一口飲んだ。
「結婚、認めてもらえるんですか?」
相沢さんはソファーから勢いよく立ち上がり、母の顔をジッと見る。
「えぇ。でもね、相沢。恋の事100%幸せにする自信がないのなら……結婚は諦めなさい」
「それなら大丈夫です。100%どころか1000%自信がありますよ」
「何処からそんな自信が湧いてくるのかしら。仕事にもそのくらい自信が欲しいわね」
「うわっ仕事の話はまた今度にして下さい」
苦笑しながら相沢さんはまたソファーに座った。
何はともあれ、結婚の承諾を得た私達はひとまず安心する。
この後も三人で色々話をして、この日は終わった。
「会社に結婚の報告しなきゃ」
母に結婚を認めてもらい、今度は次の行動に移る。結婚ってするまでも大変なんだな。面倒くさいとか言ってられない。
いつもの地味子スタイルで出社すると、まずは詩織に声をかける。
「おはよう。あのさ、話あるんだけど……」
「おはよう、恋ちゃん。話って何?」
「あ、えっと……」
何だか変に緊張して言葉を詰まらせてしまった。話づらそうにしている私を見た詩織はコロコロのついた椅子で私に近づき、コソッと小声で話をする。
「ここじゃ言い難い感じ? 場所変える?」
「そんなに大した話じゃないから。えっと、私……結婚する事になりました」
詩織に合わせて私も小声で話す。すると、詩織は勢い良く立ち上がって驚いたような表情になった。
「結婚!? えっ……恋ちゃんが?」
詩織の声はフロア中に響き渡り、他の社員達も一斉に私と詩織を見てきた。
「詩織、声大きいから」
「あっ」
状況を把握した詩織は、軽く咳払いをして椅子に座る。
「大した事ないって、大した事しかない話だよ。でも恋ちゃん、彼氏いるの秘密にするなんて寂しいじゃない。色々と恋話したかったのに~」
「まぁ詳しい話は後で話すから」
「じゃあさ、今日お祝いしよう」
詩織はお酒を飲む仕草をして、にっこりしながら私の返事を待つ。
「了解。さっ仕事しましょう」
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「何?」
「恋ちゃん、結婚おめでとう」
「ありがとう」
改めておめでとうと言われ、照れからか少しくすぐったい気持ちになった。
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