明日は明日の恋をする

春野いろ

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私の運命

ストーリー7

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「何で私だけがこんな目に……」

 さっき使い果たしたかと思った涙がまた溢れ出す。大好きな彼氏には振られ、住む所も失った。今日はなんて日なんだ。

 それにしても明日からどうしよう。貯金もないから引っ越しも生活も出来ない。私の頭の中では不安だけがグルグル回る。

「取り敢えずここで仕事をするかしないかだが、どうする?」

 社長はテレビを消して私に聞いてきた。

 ハウスキーパー……家主に代わり家の事全般を行う人。果たして私に務まるのだろうか。いや、今の私には選んでる余裕はない。

「やります。詳しく話を聞かせて下さい」

 私は涙を腕で拭い、ゆっくりと立ち上がる。そして社長の前に立った。

「別に特別な事は何もない。俺がいない間に家の事をやってもらうだけだ。やる事やったら後は自由にして構わない」

「それだけ?」

 もっと小難しくて大変かと思っていたが、どうやら普通のハウスキーパーの仕事みたいだ。

「但し、条件がある」

 やっぱりか。

 心の中でそう思ったが、話の続きを聞いた。

「まず、俺の部屋は何もしなくていい。絶対に無断で入るな」

「はい」

「それからこの家に誰が訪ねてきても応対しなくていい。無視しろ」

「分かりました」

「最後に、ココで仕事をする事は誰にも言うな。知ってるのは俺と高瀬とお前だけだ。いいな」

 社長に念を押され、私は力いっぱい頷く。それを見た社長はソファから立ち上がり、奥の部屋へ入っていった。

「社長の事よろしくお願いしますね」

「はい、頑張ります」

 社長がいなくなると高瀬さんがこっそりと言ってきたので、私も小さな声で返事した。今日起きた不幸な出来事を忘れるくらいがむしゃらに働こう……そう思った。

 高瀬さんと話をしていると、社長が部屋から戻ってきた。そして一枚の紙を渡された。また借用書かな?と私は恐る恐る紙を受けとる。

「雇用契約書だ。問題なければサインしろ」

 社長はそう言ってテーブルの上にボールペンを置く。ちゃんと契約書を準備してくれだんだ。私は渡された契約書に目を通す。

「ん?」

目をこすりもう一度契約書をじぃっと見直す。

「あ、あの……社長……これ」

「何だ、給料に不満でもあるのか?」

「そうじゃなくて……ココ」

 給料には何の問題もない。むしろこんなに頂いて良いのかってくらいだ。私は契約書に書かれている気になる一文に指を指す。

『住み込み』

 何度見直しても住み込みで勤務すると書かれている。でもまさか……。

「住み込みで働くのが条件だ。嫌なら仕事を断ってもいいぞ?」

「いえ、住み込みで働かせて下さい。お願いします」

 今日何度目だろう。私はまた涙がでそうになる。でもこれは歓喜の涙。

 恐らく行くあてのない私を社長は拾ってくれた。社長のさりげない優しさが身にしみる。私は少し手を震わせながら契約書にサインをした。

 「これで契約成立だな」

 社長はサインした契約書を手に取り、軽く笑みを浮かべる。

「ついて来い」

「はい」

 社長はさっきから出入りしている部屋の一つ部屋の前で止まる。そしてドアを開けた。

「お前の部屋だ。ここを掃除して使うといい」

 私の部屋って、今まで住んでいたアパートより断然広いし綺麗だ。

「社長、そろそろ社に戻らないと」

「分かった。おい、携帯スマホを貸せ」

 私のスマートフォンを社長に渡す。すると何やらスマートフォンを操作し始めた。何してるんだろう?操作が終わると私にスマートフォンを返してきた。

「家に帰ってまで社長と言われたくないからな」

進藤しんどう 敬輔けいすけ

スマートフォンを見ると、社長の名前と携帯番号が登録されていた。名前で呼べって事なのかな?

「掃除用具はそこの部屋にあるから俺が帰るまでに掃除しとけよ」

 社長……いや、進藤さんは会社に戻るため高瀬さんと玄関へ向かう。私もお見送りのため2人の後をついていく。

靴を履き終えた2人。すると、高瀬さんがクルッと振り返り私の方を見た。

「私も携帯スマホをお借りして良いですか?」

 私はスマートフォンを渡す。そのスマートフォンを受け取ると高瀬さんは何やら操作をし始めた。

「ありがとうございました。私の番号も登録してますので、何かあればいつでも連絡して下さいね」

 高瀬さんは笑顔でスマートフォンを返してきた。

「はい、ありがとうございます」

 私も高瀬さんにつられて笑顔を返す。そして進藤さんと高瀬さんは会社へ戻った。
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