明日は明日の恋をする

春野いろ

文字の大きさ
80 / 85
クリスマスの夜に……

ストーリー80

しおりを挟む
「……クリスマスの夜に悪かったな。後は何とかなるから帰っても大丈夫だ」

 飲み終わったコップを流しに置き、ボーっとした顔で私に言う。

 何とかなるって言っても全然大丈夫そうに見えないし。

「変な気を使わなくてもいいですよ。どうせクリスマスの予定なんてないし。進藤さんこそ……美玲さんと約束とかしてないんですか?」

「約束があったらそもそもイルミネーションなんて見に行かねぇよ。じゃあ遠慮はしない。朝まで看病よろしくな」

 進藤さんはニィッと笑みを浮かべて自分の部屋に戻った。

 朝まで!? 様子を見て帰ろうと思ってたのに。

 美玲さん呼べばいいじゃない、と思いながらも本当は必要とされて嬉しかった。多分、美玲さんには弱い部分を見せられないから呼ばないのだろうけど。

 それにしても私がなかなか前に進めないのは、こうやってたまに進藤さんと会ってしまうからなのかも。

 私の気も知らないで。進藤さんも高瀬さん達もみんな自由過ぎるよ。

 食材買い出しの帰りにそんな事を思いながら歩いた。

「あっ」

 外を歩いていると冷たいものが顔に触れた。私は立ち止まりゆっくりと空を見上げると、真っ暗な空から白い雪がひらひらと舞い降りてくる。

「ホワイトクリスマスだぁ」

 私は片手を前に出し、ゆっくりと舞い降りてくる雪を捕まえた。そしてしばらく雪を眺めて進藤さんが待つマンションへ戻った。

「大丈夫かな?」

 買ってきた食材を片付け、進藤さんの部屋に様子を見に行く。寝てたらいけないのでそっとドアを開けて中に入り、ベッドの前に行った。

 顔色良くないなぁ。寝ている進藤さんのおでこに手を当て熱が上がってないか確認する。

「……!?」

 私がおでこに手を当てると、進藤さんが驚いた表情でガバッと勢いよく起き上がった。それに驚き、私もパッとおでこから手を離す。

「ど、どうしました? 具合が悪くなりましたか?」

 恐る恐る進藤さんに声をかける。

「いや……明日香の手か。突然氷のようで氷じゃない冷たいものが顔に乗ってきたからビックリした。何でそんなに冷たいんだ?」

「ご、ごめんなさい。さっき買い物で外に出たら雪が降ってきて、それに触ったからかな。」

「俺の人生でこんなに驚いた事はそうないぞ」

 そう言って進藤さんは笑った。私も一緒に笑ってしまった。

「手を貸せ」

 進藤さんは私の手を取ると、自分のおでこに当てる。さっきは正体不明の冷たいものに驚いたみたいだけど、今度は冷たい私の手で気持ち良さそうにしていた。

「お粥作りますけど食べれそうですか?」

 私は手を当てたまま尋ねる。

「食欲はないが食べる」

「じゃあ作ったら薬と一緒に部屋に持ってきますね」

「いや、リビングに食べに行く」

 進藤さんはベッドから降りリビングへ行く。私がお粥を作っている間、進藤さんはソファーに横になっていた。

「出来ました」

 完成したお粥を少しだけ茶碗に入れて、ダイニングテーブルに置いた。進藤さんはソファーからダイニングテーブルへ移動してお粥を口にする。

「……美味いな」

 良かった。ちゃんと食べてくれた。お粥を食べ終えた進藤さんは自分の部屋に戻らず、窓から外を眺めていた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

還暦の性 若い彼との恋愛模様

MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。 そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様。 その後、結婚、そして永遠の別れまでを描いたストーリーです。 全7話

不遇な令嬢は次期組長の秘めたる溺愛に絡め取られる。

翼 うみ
恋愛
父の会社を立て直す交換条件のため、ほぼ家族に身売りされた形で関東最大級の極道・桜花組の次期組長に嫁入りしたジェシカ。しかし母を亡くして以降、義母と義妹に虐げられていたジェシカは実家を出られるなら、と前向きだった。夫となる和仁には「君を愛することはない」と冷たく突き放される。それでもジェシカは傷つくことはなく、自分にできることを探して楽しんでいた。 和仁には辛い過去がありそれ故に誰のことも愛さないと決めていたが、純真で健気なジェシカに段々と惹かれてゆき――。 政略結婚から始まる溺愛シンデレラストーリー。

降っても晴れても

凛子
恋愛
もう、限界なんです……

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

思い出さなければ良かったのに

田沢みん
恋愛
「お前の29歳の誕生日には絶対に帰って来るから」そう言い残して3年後、彼は私の誕生日に帰って来た。 大事なことを忘れたまま。 *本編完結済。不定期で番外編を更新中です。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

彼の言いなりになってしまう私

守 秀斗
恋愛
マンションで同棲している山野井恭子(26才)と辻村弘(26才)。でも、最近、恭子は弘がやたら過激な行為をしてくると感じているのだが……。

いちばん好きな人…

麻実
恋愛
夫の裏切りを知った妻は 自分もまた・・・。

処理中です...