明日は明日の恋をする

春野いろ

文字の大きさ
79 / 85
クリスマスの夜に……

ストーリー79

しおりを挟む
「……悪い。少し座ってもいいか?」

 空いているベンチを見つけると、進藤さんはそのベンチに座った。私も隣に座り時折進藤さんをチラ見する。

 それにしても何だか進藤さんの様子がおかしい。少しの間沈黙が続く。

「あの、進藤さん……」

 私が話しかけようとしたその時、進藤さんが私の肩に寄りかかってきた。

 香水がふわっと香る。私はドキドキしながら顔を進藤さんの方に向けた。

 あれ?

 進藤さん熱い。よく見ると冷や汗をかき、呼吸が早くなっている。

「だ、大丈夫ですか?」

 様子がおかしかったのは具合が悪かったんだ。私は進藤さんの前に立ち、顔を覗き込む……辛そうだ。そっとおでこに手を当てるとかなり熱い。

「……疲れているだけだ。少し休めば良くなる」

「強がってもダメです。帰りましょう。タクシー呼びますね」

 私はスマートフォンを取り出しタクシー会社に連絡しようとしたが、進藤さんは私の手を掴み連絡しようとするのを止めた。

「車で来てるんだ」

「でも、車を運転できる状態じゃないですよ」

「……ナオトに連絡してくれ。一緒にここに来たんだ。多分まだ鈴里さんとこの敷地内にいるはずだ」

「分かりました」

 私は高瀬さんに連絡して状況を説明する。五分くらいして高瀬さんと真彩さんが走って私達の元へやってきた。

「おいケイスケ、大丈夫か?」

「あぁ、大丈夫……と言いたいところだが頼む」

 そう言って進藤さんは高瀬さんに車のキーをポンっと投げた。それを高瀬さんはキャッチしてOKと言うと、私達は車へと歩いた。

「明日香、今日はゴメンね」

 車の中で運転する高瀬さんの横から真彩さんが申し訳なさそうに謝ってきた。

「私、いまいち状況が掴めてないんだけど」

 私と進藤さんは車の後部座席へ座った。そして前にいる二人にどういう事か聞いた。

「明日香ちゃんイルミネーション好きそうだし、ケイスケも最近仕事で疲れてたから、少しでも綺麗なものを見て癒されればなぁと俺とマイで考えたクリスマスプレゼントのつもりだったんだ」

 二人がそんな計画を立ててたなんて。

 そして進藤さんが住むタワーマンションへ到着し、全員車から降りる。

「じゃあ明日香ちゃん、後はよろしくね」

「え?」

「俺とマイはクリスマスデート楽しんでくるから。バイバーイ」

 高瀬さんはニッコリ笑って真彩さんとのデートに戻った。真彩さんは手を合わせてゴメンと口パクで言った。

「ちょっと二人とも」

 冬の冷たい風が吹く中、立ち去る二人の姿を見送る。

「明日香、部屋行くぞ。風邪引く」

 熱が上がってきたのかボーっとしながらも進藤さんはマンションの中へ入っていく。

「もう風邪引いてるじゃない」

 私はフラフラしながら歩く進藤さんを支えながら部屋の中へと入った。

 久しぶりだ。懐かしさを感じつつ、取り敢えず進藤さんをベッドへ連れて行く。

「着替えてベッドに横になって下さいね」

 そう言い残し、私は進藤さんの部屋を出る。そして冷蔵庫に食材があるか確認した。

「……空っぽ」

 お粥でも作って食べてもらおうと思ったが、食材が何一つない。

「もう、どうやって生活してるのよ」

 買い出しに行こうとクルッと後ろを振り向くと、着替え終わった進藤さんが立っていた。

「ひゃああ」

 まさか後ろに立っているとは思わず、悲鳴を上げてしまった。もう声をかけてくれればいいのに。

「水くれ」

「は、はい」

 まだ心臓がバクバクしている。私はコップに水を入れて進藤さんに渡した。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

還暦の性 若い彼との恋愛模様

MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。 そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様。 その後、結婚、そして永遠の別れまでを描いたストーリーです。 全7話

不遇な令嬢は次期組長の秘めたる溺愛に絡め取られる。

翼 うみ
恋愛
父の会社を立て直す交換条件のため、ほぼ家族に身売りされた形で関東最大級の極道・桜花組の次期組長に嫁入りしたジェシカ。しかし母を亡くして以降、義母と義妹に虐げられていたジェシカは実家を出られるなら、と前向きだった。夫となる和仁には「君を愛することはない」と冷たく突き放される。それでもジェシカは傷つくことはなく、自分にできることを探して楽しんでいた。 和仁には辛い過去がありそれ故に誰のことも愛さないと決めていたが、純真で健気なジェシカに段々と惹かれてゆき――。 政略結婚から始まる溺愛シンデレラストーリー。

降っても晴れても

凛子
恋愛
もう、限界なんです……

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

思い出さなければ良かったのに

田沢みん
恋愛
「お前の29歳の誕生日には絶対に帰って来るから」そう言い残して3年後、彼は私の誕生日に帰って来た。 大事なことを忘れたまま。 *本編完結済。不定期で番外編を更新中です。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

彼の言いなりになってしまう私

守 秀斗
恋愛
マンションで同棲している山野井恭子(26才)と辻村弘(26才)。でも、最近、恭子は弘がやたら過激な行為をしてくると感じているのだが……。

いちばん好きな人…

麻実
恋愛
夫の裏切りを知った妻は 自分もまた・・・。

処理中です...