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悲しい知らせ
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その日は 朝から 気分がすぐれなかった事を覚えている。
私は 午前中の公務を終え、昼食後、本日 開かれる、アリス様の誕生日を祝う夜会の準備をしていた。
アリス様は今年、25才になられる。もうすぐ公爵家へ降嫁される予定で、王族として、アリス様の為に開かれる最後の夜会という事で、陛下も、王妃様も、ノアール様も、とても入念に準備されていた。
私も心を込めて、プレゼントを用意した。
この国に来た時から、私を気遣い、本当の姉妹のように 接して下さった。
優しいアリス様の心遣いに、どれ程 慰められただろう。
大きな夜会という事で、自国だけでなく、他国からも、多くのお客様が訪れ、アリス様の誕生日をお祝いした。
もちろん、私の祖国、クロノス王国からも、外交大臣が訪れていた。
私の結婚式にも、参加してくれた方だ。
「皆に、変わりはありませんか?」
「はい、妃殿下のお父君である公爵様も、ご家族の皆様も元気で過ごしておりますよ。お土産をたくさん預かって来ております。後で、お受け取り下さい。私も妃殿下のご様子を知らせるよう、申し使っております。お幸せにお暮らしのようで、安堵致しました。」
そう言って、なおも、物言いたげにノアール様の方に、目配せする。
何だろう?
「大臣?」
何か言いたいのかと、問う前に、ノアール様が、大臣に声をかけた。
「どうした?何か言いたい事があるなら、遠慮なく申せ。」
「ありがとうございます。実は、ヴィトゲンシュタイン家から 手紙を預かって来ておりまして…」
そう言って、大臣は 懐から白い封筒を出した。
私の胸が、早鐘を打ち、手が震える。(レオ…)
胸の内でレオの名を呼ぶ。
「構わぬ、妃に渡してやってくれ。妃も、かの家の事は、ずっと気にかけていたのだ。」
「王太子殿下のお心遣い、感謝いたします。では、妃殿下、こちらを…」
侍従を介して、手紙がわたしの手に渡される。
宛名を確かめると、それは、レオではなく、レオの兄、ライノルドからのものだった。
「ライ兄様から?」
手が震える。
ライ兄様からの手紙だなんて、一体何だろう?
「後ほど、ごゆっくりお読み下さい。出来ればお2人で、ライノルド殿からは返事は不要だからと、言いつかっております。」
「2人で、ですか?」
大臣の瞳に暗い影が差したようで、いぶかしげに思ったけれど
「わかりました。後で、2人で、ゆっくり見せていただきます。」
「ご苦労だった。後はゆっくり 楽しんでくれ。」殿下が大臣をねぎらうと、
「ありがとうございます。それでは、御前 失礼致します。」
大臣は、そう言って、頭を下げ、その場を後にした。
夜会が終わり、湯浴みを終え、夜着の上にガウンを羽織って、2人、ソファーに座り、大臣から渡された手紙を見つめていた。
テーブルに アンが 夜酒を用意して、部屋から退出したのを待って、手紙の封を切った。
突然 手紙を出す事の非礼と私を気遣う言葉の後
「レオナルドが死にました。」
その言葉に、私は我を失った。
身体が震える。
「どうして?!」
そこには、私が国を離れてからのレオの事が、書かれていた。
レオがどんなふうに過ごしてきたか。
レオの地獄のような日々が、
そして、レオの最後が…
涙が溢れる…
身体の震えが止まらない…
ノアール様が私をしっかりと、抱き止めてくれる。
王女はレオの死を、病死として処理させたが、地下牢の牢番を、ヴィトゲンシュタイン家の手の者にしていたおかげで、レオの最後が 隠蔽される事なく、ヴィトゲンシュタイン家に伝えられたと書いてあった。
レオの最後の手紙も、牢番が、確保してくれたそうだ。
そして、彼の最後の言葉も…
「レミィ…愛してる…」
苦しい息の下、最後にレオが呟いたことば…
私は 目の前が真っ暗になって、そのまま ノアール様の腕の中で気を失った。
目が覚めると、私は寝台に寝かされ、その隣には 心配そうに私を見つめるノアール様の瞳があった。
「ノアール様?」
「大丈夫か?もう少し眠るといい、まだ夜は深い。」
「ごめんな…さ…い… 私…」
「かまわん。泣きたいなら思いきり泣けばいい。お前にとって、レオナルドという男が、どれ程大切な存在だったかという事は、私も理解している。我慢しなくていい。」
そう言って、私を胸に抱き込み、優しく背中を撫でてくれる。
この方は優しい、何も知らない者達は、冷酷王太子と言うが、本当はとても優しく、包容力のある方だ。
彼は、私を泣きたいだけ、泣かせてくれた。私の涙で彼の胸元は大変な事になっていた。泣きつかれて、子供のように眠ってしまった私を、ずっと、ずっと、抱きしめていてくれた。
この温もりがあって良かった。
レオ、あなたは 私と別れてからの5年をどんなふうに過ごして来たのだろう。
きっと、あの手紙に書ききれない事もあっただろう。
王女との結婚からまだたった1年。
死んで自由を手に入れたあなたは、最後の瞬間、少しは幸せだったのだろうか?
せめて、最後だけは、苦しむ事が無かったと思いたい。
気分が悪い。
頭が重い。
食事も喉を通らない。
心配したノアール様が、私を医者に見せた。
私は、妊娠していた。
私は 午前中の公務を終え、昼食後、本日 開かれる、アリス様の誕生日を祝う夜会の準備をしていた。
アリス様は今年、25才になられる。もうすぐ公爵家へ降嫁される予定で、王族として、アリス様の為に開かれる最後の夜会という事で、陛下も、王妃様も、ノアール様も、とても入念に準備されていた。
私も心を込めて、プレゼントを用意した。
この国に来た時から、私を気遣い、本当の姉妹のように 接して下さった。
優しいアリス様の心遣いに、どれ程 慰められただろう。
大きな夜会という事で、自国だけでなく、他国からも、多くのお客様が訪れ、アリス様の誕生日をお祝いした。
もちろん、私の祖国、クロノス王国からも、外交大臣が訪れていた。
私の結婚式にも、参加してくれた方だ。
「皆に、変わりはありませんか?」
「はい、妃殿下のお父君である公爵様も、ご家族の皆様も元気で過ごしておりますよ。お土産をたくさん預かって来ております。後で、お受け取り下さい。私も妃殿下のご様子を知らせるよう、申し使っております。お幸せにお暮らしのようで、安堵致しました。」
そう言って、なおも、物言いたげにノアール様の方に、目配せする。
何だろう?
「大臣?」
何か言いたいのかと、問う前に、ノアール様が、大臣に声をかけた。
「どうした?何か言いたい事があるなら、遠慮なく申せ。」
「ありがとうございます。実は、ヴィトゲンシュタイン家から 手紙を預かって来ておりまして…」
そう言って、大臣は 懐から白い封筒を出した。
私の胸が、早鐘を打ち、手が震える。(レオ…)
胸の内でレオの名を呼ぶ。
「構わぬ、妃に渡してやってくれ。妃も、かの家の事は、ずっと気にかけていたのだ。」
「王太子殿下のお心遣い、感謝いたします。では、妃殿下、こちらを…」
侍従を介して、手紙がわたしの手に渡される。
宛名を確かめると、それは、レオではなく、レオの兄、ライノルドからのものだった。
「ライ兄様から?」
手が震える。
ライ兄様からの手紙だなんて、一体何だろう?
「後ほど、ごゆっくりお読み下さい。出来ればお2人で、ライノルド殿からは返事は不要だからと、言いつかっております。」
「2人で、ですか?」
大臣の瞳に暗い影が差したようで、いぶかしげに思ったけれど
「わかりました。後で、2人で、ゆっくり見せていただきます。」
「ご苦労だった。後はゆっくり 楽しんでくれ。」殿下が大臣をねぎらうと、
「ありがとうございます。それでは、御前 失礼致します。」
大臣は、そう言って、頭を下げ、その場を後にした。
夜会が終わり、湯浴みを終え、夜着の上にガウンを羽織って、2人、ソファーに座り、大臣から渡された手紙を見つめていた。
テーブルに アンが 夜酒を用意して、部屋から退出したのを待って、手紙の封を切った。
突然 手紙を出す事の非礼と私を気遣う言葉の後
「レオナルドが死にました。」
その言葉に、私は我を失った。
身体が震える。
「どうして?!」
そこには、私が国を離れてからのレオの事が、書かれていた。
レオがどんなふうに過ごしてきたか。
レオの地獄のような日々が、
そして、レオの最後が…
涙が溢れる…
身体の震えが止まらない…
ノアール様が私をしっかりと、抱き止めてくれる。
王女はレオの死を、病死として処理させたが、地下牢の牢番を、ヴィトゲンシュタイン家の手の者にしていたおかげで、レオの最後が 隠蔽される事なく、ヴィトゲンシュタイン家に伝えられたと書いてあった。
レオの最後の手紙も、牢番が、確保してくれたそうだ。
そして、彼の最後の言葉も…
「レミィ…愛してる…」
苦しい息の下、最後にレオが呟いたことば…
私は 目の前が真っ暗になって、そのまま ノアール様の腕の中で気を失った。
目が覚めると、私は寝台に寝かされ、その隣には 心配そうに私を見つめるノアール様の瞳があった。
「ノアール様?」
「大丈夫か?もう少し眠るといい、まだ夜は深い。」
「ごめんな…さ…い… 私…」
「かまわん。泣きたいなら思いきり泣けばいい。お前にとって、レオナルドという男が、どれ程大切な存在だったかという事は、私も理解している。我慢しなくていい。」
そう言って、私を胸に抱き込み、優しく背中を撫でてくれる。
この方は優しい、何も知らない者達は、冷酷王太子と言うが、本当はとても優しく、包容力のある方だ。
彼は、私を泣きたいだけ、泣かせてくれた。私の涙で彼の胸元は大変な事になっていた。泣きつかれて、子供のように眠ってしまった私を、ずっと、ずっと、抱きしめていてくれた。
この温もりがあって良かった。
レオ、あなたは 私と別れてからの5年をどんなふうに過ごして来たのだろう。
きっと、あの手紙に書ききれない事もあっただろう。
王女との結婚からまだたった1年。
死んで自由を手に入れたあなたは、最後の瞬間、少しは幸せだったのだろうか?
せめて、最後だけは、苦しむ事が無かったと思いたい。
気分が悪い。
頭が重い。
食事も喉を通らない。
心配したノアール様が、私を医者に見せた。
私は、妊娠していた。
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