悲しい恋 【完結】

nao

文字の大きさ
29 / 29
悲しい恋 〜if こぼれ話〜

④ ノアール【面白い婚約者】

しおりを挟む
妹、アリスの親友、アンジェリカ-カーティス。

彼女はカーティス辺境伯の末の娘で、この度 私の婚約者となった。

彼女に初めて会ったのは、王家が主催する騎士剣術大会の闘技場だった。

私は、優勝者に褒賞を授与する為、王族席で試合を見ていた。

そして、アンジェリカ嬢は兄を応援する為、妹のアリスと共に、カーティス家の家族席で試合を観戦していた。

試合は白熱したまま進んで行き、残り3試合という所で事故が起きた。

1人の騎士が剣を相手に弾き飛ばされ、その剣がアリスに向かって飛んで行ったのだ。

「アリス!!」

私は、王族席から立ち上がり、アリスに向かって、

「危ない!!」と叫んだ!

その時、アリスの隣に座っていたアンジェリカ嬢が、ドレスの裾をたくし上げ、飛んで来た剣を、見事に蹴り返したのだ。

蹴り返された剣は、そのままクルクルと回転しながら、持ち主である騎士の目の前の地面に突き刺さった。

あまりの出来事に、会場中が静まり返り、次の瞬間、あたりが、騒然とざわめいた。

皆、彼女の行動に呆気に取られていた。
もちろん私も。
しばらく、呆然としてしまった。
我に返った私は、すぐさまアリスの様子を王族席からうかがった。
幸い、アリスに怪我は無いようだ。

私は、側近のジョエルに医者の手配を指示して、アリスの元へ向かわせ、何事も無かったかのように、試合の続きを観戦していた。

私の指示でアリスの元へ向かったジョエルは「大丈夫」だと言い張るアンジェリカ嬢を「殿下の命令です。」と言って、医務室に連れて行った。

診察の結果は右足の甲の打撲。
剣を、蹴り上げた右足の甲が赤く腫れていたらしい。
しっかり治療を受けさせて、彼女の家族にも、御礼と謝罪をしてきてくれた。

全ての試合か終わり、優勝者に褒美を与え、全ての行事を見届けて、急いでアリスの元へ向かった。

「アリス、大丈夫か?怪我は?」

「お兄様 私は大丈夫です。アンジェが守ってくれましたから。」

アリスの無事を確認し、私はカーティス伯に頭を下げた。

「カーティス辺境伯すまない。大事な御令嬢にケガをさせてしまった。」

そして、アンジェリカ嬢に向き合った。

「アンジェリカ嬢、足の具合はどうだろうか?ケガをさせてしまって申し訳ない。アリスを助けてくれてありがとう。感謝する。」

「頭を上げて下さい、ノアール殿下。恐れ多い事です。アリス殿下を守る事が出来て良かったですわ。こんなのケガのうちに入りません。どうかお気遣い無く。」

そう言って、何でも無い事のようにニッコリと笑う彼女を面白いとおもった。

どこにでもいるような普通の令嬢だ。
この国ではありふれた明るい栗色の髪と、こげ茶の瞳。
女性にしては少し高めの背は姿勢が良く、立ち姿が美しいと思った。

とても、あのような蹴りを繰り出せるようには見えなかった。
私はジョエルに彼女の事を調べるように命令した。

彼女は、辺境伯の末っ子で、学園に入るまでは、領地で父や兄と共に剣を習い、森に入って魔獣の討伐等もしていたそうだ。
今でも身体の鍛錬を欠かさないらしい。
性格はおおらかで、正義感が強い。

あの日から、アンジェリカ嬢の事を色々調べた。
アリスのお茶会にも乱入して、アンジェリカ嬢と交流もしてみた。

気さくで、女性特有の媚びた所が1つも無い。
化粧も、香水も控えめで、好ましい。
学園時代の成績も、Aクラスの中ほどを常にキープ。
淑女教育も行き届いている。
時々、失敗しているが、そのおっちょこちょいな仕草も可愛らしいと思う。

「決めたぞ、ジョエル。今夜、父の所へ行く。」

「アンジェリカ様の件ですか?」

「我が幼馴染はいつもながら察しがいいな。」

「まぁ、今回に限っては、殿下の行動は非常にわかりやすいものでしたからねェ、女性の姿を目で追う殿下を初めて見ましたよ。」

「ふん!父に先触れを出しておいてくれ。夕食後、執務室に行く。」

「かしこまりました。」

クスクス笑うジョエルが腹立たしい。

その夜、父の元へ向かい、アンジェリカ嬢を妃にしたいと父に告げた。

「アンジェリカ-カーティス?カーティス辺境伯の末っ子か?アリスの友達の?」

「はい。承認いただけますか?」

「まぁ、お前が決めたのなら私に依存は無いが···アンジェリカ嬢にはもう伝えたのか?」

「いえ、これからです。」

「ふむ、近いうちに、辺境伯とアンジェリカ嬢を呼ぼう。」

「ありがとうございます。」




3ヶ月後、私達の婚約が国中に知らされた。

やっと私がその気になったと言うことで、父は急いでカーティス辺境伯を呼び出し、アンジェリカ嬢を王太子妃にしたいと告げた。
始めは渋っていた辺境伯も私の熱意(脅したとも言う)に負け、最後は王命まで発して、了承を得た。

婚約発表の夜会にて、緊張で赤い顔をした彼女は、ガチガチで、私と目を会わせる事もむずかしそうだ。

「これからよろしく頼む。」

彼女の目の前に立ち、彼女の右手の甲にキスをして、彼女の視線を捉え、そう告げた。

彼女の顔が増々赤くなるのを見て、笑みがこぼれる。

そのまま、彼女の手を取り、ダンスホールの中央へ向かった。

2人で始めのダンスを踊り、会場を埋める人々に彼女をお披露目した。

一曲踊って落ち着いたのか、彼女の客人対応は素晴らしいものだった。
外国の賓客にも、堂々と対応している。
そんな彼女が私の前でだけ見せる、真っ赤になって、あわてる様子や、楽しげに大笑いする様子が可愛らしい。

彼女となら、これからの長い人生、退屈せずに楽しめそうだ。

私の視線に気付いた彼女の顔が少し赤くなっているのがわかる。

「殿下、ニヤけてますよ。お客様の前です。気を引き締めて下さい。」

ジョエルにからかわれて、「コホン!」と1つ咳をして誤魔化す。
嫌なヤツだ。

「可愛らしい方に来ていただいて良かったですね。」

急に真面目な顔をして、ジョエルが姿勢を正し、私に向かい合う。

「ノアール王太子殿下、ご婚約つつが無く成りました事、まことにおめでとうございます。」

「ああ、ありがとうジョエル。これからも、彼女共々、よろしく頼む。」

「もったいないお言葉です。誠心誠意 努めさせていただきます。」

彼女の元へ向かい、その手を取り、「もう一曲。」と、ダンスに誘う。

顔を赤く染めて、私の手を取り、微笑むアンジェリカ。

会場中の暖かい視線の中で、ダンスを踊る。

いずれ、父の跡を継ぎ、彼女と2人、王と王妃としてこの国を治めて行く。




彼女となら、きっと、どんな困難も、蹴り飛ばして乗り越えて行けるだろう。


初めて会ったときの彼女の蹴りを思い出し、ニヤリと笑う。

これから、楽しくなりそうだ。











           ~ fin ~







******************

ここまで読んでいただきありがとうございます!
これにて、一旦完結とさせていただきます。

しおりを挟んで下さった方。
お気に入りにして下さった方。
応援して下さった方。

本当にありがとうございました。🥹

たくさんの方に読んでもらえて、感想をいただいて、本当に嬉しかったです。

レオとレミィを愛していただいて本当にありがとうございました。







            nao
しおりを挟む
感想 84

この作品の感想を投稿する

みんなの感想(84件)

ash
2024.05.09 ash

ifがあって本当に良かったです。本編はあまりにも悲しい…。

2024.05.09 nao

読んで頂いてありがとうございます。
iffがあって良かったと よくお声をかけてもらいます。
作者としては、嬉しい限りです。
ありがとうございました。

解除
ahmama
2024.04.29 ahmama

ifがなければ悲しすぎる。特にレオ、理不尽な王命で、引き離されてすぐ次の、しかもにくい王女を好きになると思っているところが愚か。いくら国王でも、ひど過ぎ。王女のわがままを諌めなければならないのに、クーデター起こされても仕方ないわ。王女にはもっときつい処罰をしてほしかった。でもレミは、短い一生だったけどそれなりに幸せだったことで救われました。切なく涙して読みました。

2024.04.30 nao

読んでいただきありがとうございます。
この作品を投稿して、1年以上になりましたが、時々こうして読んでもらえて、感想をいただいて、とても嬉しく、はげみになります。これからもよろしくお願いします🙇

解除
紫陽花
2023.06.04 紫陽花

ifストーリー、ありがとうございました。
幸せになれて良かった!

お疲れ様でした!

2023.06.04 nao

最後まで読んでいただきありがとうございました!

解除

あなたにおすすめの小説

片想い婚〜今日、姉の婚約者と結婚します〜

橘しづき
恋愛
 姉には幼い頃から婚約者がいた。両家が決めた相手だった。お互いの家の繁栄のための結婚だという。    私はその彼に、幼い頃からずっと恋心を抱いていた。叶わぬ恋に辟易し、秘めた想いは誰に言わず、二人の結婚式にのぞんだ。    だが当日、姉は結婚式に来なかった。  パニックに陥る両親たち、悲しげな愛しい人。そこで自分の口から声が出た。 「私が……蒼一さんと結婚します」    姉の身代わりに結婚した咲良。好きな人と夫婦になれるも、心も体も通じ合えない片想い。

僕の婚約者は今日も麗しい

蒼あかり
恋愛
公爵家嫡男のクラウスは王命により、隣国の王女と婚約を結ぶことになった。王家の血を引く者として、政略結婚も厭わないと覚悟を決めていたのに、それなのに。まさか相手が子供だとは......。 婚約相手の王女ローザもまた、国の安定のためにその身を使う事を使命としていたが、早い婚約に戸惑っていた。 そんなふたりが色々あって、少しづつ関係を深めていく。そんなお話。 変わり者の作者が、頑張ってハッピーエンドを目指します。 たぶん。きっと。幸せにしたい、です。 ※予想外に多くの皆様に読んでいただき、驚いております。 心よりお礼申し上げます。ありがとうございました。 ご覧いただいた皆様に幸せの光が降り注ぎますように。 ありがとうございました。

禁断の関係かもしれないが、それが?

しゃーりん
恋愛
王太子カインロットにはラフィティという婚約者がいる。 公爵令嬢であるラフィティは可愛くて人気もあるのだが少し頭が悪く、カインロットはこのままラフィティと結婚していいものか、悩んでいた。 そんな時、ラフィティが自分の代わりに王太子妃の仕事をしてくれる人として連れて来たのが伯爵令嬢マリージュ。 カインロットはマリージュが自分の異母妹かもしれない令嬢だということを思い出す。 しかも初恋の女の子でもあり、マリージュを手に入れたいと思ったカインロットは自分の欲望のためにラフィティの頼みを受け入れる。 兄妹かもしれないが子供を生ませなければ問題ないだろう?というお話です。

泣きたいくらい幸せよ アインリヒside

仏白目
恋愛
泣きたいくらい幸せよ アインリヒside 婚約者の妹、彼女に初めて会った日は季節外れの雪の降る寒い日だった  国と国の繋がりを作る為に、前王の私の父が結んだ婚約、その父が2年前に崩御して今では私が国王になっている その婚約者が、私に会いに我が国にやってくる  *作者ご都合主義の世界観でのフィクションです

お姫様は死に、魔女様は目覚めた

悠十
恋愛
 とある大国に、小さいけれど豊かな国の姫君が側妃として嫁いだ。  しかし、離宮に案内されるも、離宮には侍女も衛兵も居ない。ベルを鳴らしても、人を呼んでも誰も来ず、姫君は長旅の疲れから眠り込んでしまう。  そして、深夜、姫君は目覚め、体の不調を感じた。そのまま気を失い、三度目覚め、三度気を失い、そして…… 「あ、あれ? えっ、なんで私、前の体に戻ってるわけ?」  姫君だった少女は、前世の魔女の体に魂が戻ってきていた。 「えっ、まさか、あのまま死んだ⁉」  魔女は慌てて遠見の水晶を覗き込む。自分の――姫君の体は、嫁いだ大国はいったいどうなっているのか知るために……

【完結】ジュリアはバツイチ人生を謳歌する

ariya
恋愛
エレン王国の名門貴族・アグリア伯爵家に嫁いだジュリア・アグリア(旧姓ベルティー)。 夫のアベル・アグリア伯爵は、騎士として王妃の護衛任務に没頭し、結婚翌日からほぼ別居状態。 社交界のパーティーでは妻のエスコートを代理人に任せ、父の葬儀にも顔を出さず、事務的な会話と手紙のやり取りだけの日々が続く。 ジュリアは8年間の冷遇に耐え抜いたが、ある朝の食事中、静かに切り出す。 「私たち、離婚しましょう」 アベルは絶句するが、ジュリアは淡々と不満を告げる。 どれも自分のしでかしたことにアベルは頭を抱える。 彼女はすでに離婚届と慰謝料の用意を済ませ、夫の仕事に理解を示さなかった「有責妻」として後腐れなく別れるつもりだった。 アベルは内心で反発しつつも、ジュリアの決意の固さに渋々サイン。 こうしてジュリア・アグリアは、伯爵夫人としての全てを置き去りにし、バツイチ人生を開始する。

不機嫌な侯爵様に、その献身は届かない

翠月 瑠々奈
恋愛
サルコベリア侯爵夫人は、夫の言動に違和感を覚え始める。 始めは夜会での振る舞いからだった。 それがさらに明らかになっていく。 機嫌が悪ければ、それを周りに隠さず察して動いてもらおうとし、愚痴を言ったら同調してもらおうとするのは、まるで子どものよう。 おまけに自分より格下だと思えば強気に出る。 そんな夫から、とある仕事を押し付けられたところ──?

なくなって気付く愛

戒月冷音
恋愛
生まれて死ぬまで…意味があるのかしら?

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。