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トルティア帝国-8
しおりを挟む【ケイトミラン=トルティア】
ケイト
君は素敵な女の子だよ
僕にとって一番大切な女の子だ
僕とは永遠に結ばれない運命だけれど僕は一生君だけを愛するよ
でもゴメンね
君が他の男と結婚する姿を見る事は僕には耐えられそうにない
だから僕はこの国を出て行くよ
ケイト
もう二度と君と会う事は出来ないだろう
だから僕の心を置いて行くよ
僕も君の心を奪って行くから
ゴメンねケイト
君の心に一生の想い出を刻み込んで行く僕を許して…
そして彼は私の唇を奪い、彼が肌身離さず嵌めていた指輪を私の中指に嵌めて、最後に私の髪を一房切り取って去って行った
私の心に一生消えない想いを残して…
手の中に残ったぶかぶかの指輪を握りしめて私はその場で泣き崩れた
彼とは学園で知り合った
トルティア帝国一の商会の跡取り息子
国でも上位10家に入るくらいの資産家の息子
でも彼は平民だった
公爵令嬢だった私とは一生結ばれるはずが無い
頭も良く成績優秀だった彼は平民にも関わらず中位貴族並みの魔力持ちだった為魔術学園のBクラスに席を置いていた
そして私も公爵令嬢にも関わらずBクラス並みの魔力しか持っていなかった
私達は運命のように同じクラスになり、席も隣同士に座るようになってあっという間に仲良くなっていった
彼はミルクティーのような優しい色の髪と瞳の持ち主でスラリと背の高い美しい男の子だった
話題豊富で人当たりが良く、機転が利いておよそ人を不快にさせるという事が無い
私は彼に恋をした
私はトルティア帝国筆頭公爵家の娘だった
兄が二人
当時、上の兄は20歳
次期公爵として既に結婚しており、お義姉様のお腹には新しい命が宿っていた
下のお兄様は18歳
学園卒業と同時にお父様が持つ伯爵位を継ぎ、領地をもらって婚約者と結婚して、領地へ行く事が決まっていた。
私は両親と兄二人に甘やかされ溺愛されて大切に育てられてきた
でもまだ婚約者はいなかった
なぜなら私は公爵令嬢としては非常に魔力が少なかったから
魔力の多い高位貴族と結婚しても後継を望めない
魔力の少ない下位貴族や平民との間なら子供も望めただろう
でも公爵家としてそんな結婚は許されるはずが無かった
娘が行き遅れる事に胸を痛めた父は妻に先立たれた高位貴族の後妻という政略結婚を取り付けてきた
相手は30歳
1年前に妻に先立たれ、小さな子供が二人いると言う事だった
そして私は18歳の時、心に彼との想い出を抱き締めたまま、後妻として政略結婚した。
二人の子供の面倒を見て、夜は旦那様の抱き人形になる日々、
私の感情はすり減り、表情の無い人形になっていく…
最初の結婚はたった3年で破綻した。
旦那様は屋敷に愛人を連れ込むようになり、二人で私を虐げるようになった。
そんな状態に気付いた兄が私と旦那様の離婚を取り付け、結婚から6年、私をあの辛かった屋敷から救い出してくれたのだ。
暫くは良かった。
家に引きこもり、穏やかな日々を過ごしていた。
でも父が引退して兄が公爵を継ぐと私は家で肩身の狭い思いをするようになった。
もちろん兄は
「ケイトはこの家の娘だ何も遠慮することなんて無い」
そう言ってくれたけれど、出戻りの娘がいつまでも家にいるのは、外聞が悪かった。
そんな私を心配した父は陛下に頼んで私と陛下との政略結婚を決めてきたのだ。
次は『白い結婚』だった
陛下は『白い結婚』のせいで私が肩身の狭い思いをしないようにとても気を使ってくれた。
いつでも、私を大切にしている事を周りに見せつけるように振る舞ってくれた。
28歳の時、王妃となり国の為に働く日々を送っていた、そんな時だった、彼の噂を聞いたのは…
私がただ一人愛した人
今でも愛している人
他国で大きな商会を建てたと言う
大きなキャラバンを率いて色々な国を巡り、商売をしていると言う。
胸が高鳴る
会いたい
彼にもう一度会いたい
一人になると寂しくて涙がこぼれた
でも、私はもう一国の王妃
今更彼に会う事なんて出来る訳がない
叶わぬ思いにゆっくりと心が死んでいく…
彼と別れて10年以上が経っていた
そんな時だった
王太子が妻となる娘を見つけたと…
しかもまだたったの15歳の少女だと言う
大国の王太子に望まれて断る事が出来なかったのかもしれない…
かつての私のように…
まだたった15歳だもの、しかも王女となれば政略結婚は当たり前
自分の意思など関係ないだろう…
もし、彼女がこの結婚を望んでいなかったら…
15歳の未成年の少女を、王太子と一緒の宮に入れるのは外聞が悪いと言って、私の元に預かる事を陛下に進言した。
初めて見た彼女はあどけなさが残る美しい少女で王太子に溺愛されて幸せそうに笑っていた。
私とは違うのね…
あの子は愛し、愛される幸せを手にしたんだわ
王太子は、私から少女を守ろうと、滑稽なくらい必死だった。
一体私の事を何だと思っているのか…
私がいとけない少女に危害を加えるとでも思っているのだろうか?
私はエマと、エマの選んだキャロルという侍女に少女の世話を任せた。
あれほど王太子に愛されているのだ、私が守る必要はないだろう
そう思っていた。
でもその考えは間違っていた。
まさかエマとキャロルが少女を虐待するなんて…
私の為になんて思っているようだが、私はそんな事全く望んでいない
なのにどうしてそんな勘違いをしたのか…
二人にもう少女の世話をする必要は無いと告げて、少女から二人を引き離そうとしたのに、彼女達はその言葉さえ曲解して少女を虐げていた。
私のせいだわ
少女をサロンに呼び、謝ろうと思ったけれど言葉が喉の奥で凍りついたようになって出てこない
『ごめんなさい』
そのたった一言が言えない…
王太子に愛される彼女が羨ましい
愛し、愛されるよろこびに想いのこもった眼差しを交わす二人に私は嫉妬している…
羨ましくて、羨ましくて、憎い…
何も知らない少女を憎んでしまう自分が嫌でしようがない…
素直に謝れない自分が嫌いだ
毎晩 自己嫌悪で気が狂いそうになる
何もかも投げ出して逃げてしまいたい
会いたい
愛しいあなた
彼の残した指輪を自分の指にはめてみる
どの指に通してもぶかぶかで
手を繋いた時の彼の手の大きさを思い出す
切ない
苦しい
悲しい
会いたい
大切な指輪をクローゼットの奥にしまい、今日も彼の事を思い眠りにつく
来世ではきっとあなたと一緒になれますように…
そう願いながら…
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