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魔術学園-6
しおりを挟む学園に入学して、3ヶ月が経ちました。
悪い噂に、嫌がらせ、階段から突き落とされ、お茶会で毒を盛られ、散々な3ヶ月でしたが、私とリオの距離はどんどん縮まり、リオに愛されて私はとても幸せでした。
王妃様もお茶会の度に私を心配してくださり(王妃様の心配はとても分かりにくくて、リオは相変わらず王妃様を嫌っていますが…)
私は少しでも王妃様を理解出来るようになりたいと思うようになりました。
毒入りケーキ事件から2週間が経ったある日、私はアメリー子爵令嬢からの呼び出しの手紙を受け取りました。
「行く必要なんてありません!あの方達のせいで、どれだけ危険な目に遭った事か、無視するべきです!」
シンディがアメリー子爵令嬢の手紙に目を吊り上げて怒っています。
「でも、シンディ、結局、誰が毒を入れたのか?私を狙ったのか?無差別だったのか?事件の真相は分からないままでしょう?罠かもしれないけれど、行ってみる価値はあると思うのよ」
「私もシンディの言う通りだと思います。姫様は警戒心がなさ過ぎます!」
「ビビアン…」
「学園に同行出来るのが護衛一人、侍女一人だなんて少なすぎます!ただでさえ姫様は狙われていると言うのにこれで一体何度、危険な目に遭っていると思うのです?もうこれ以上クロス令嬢の派閥に付き合う義理はありません!」
シンディとビビアンも私の言うことは聞いてくれません。
「ねぇ、二人共、お願いよ、決して無茶はしないし、もちろんシンディもエリオ様も一緒に付いて来てもらうし、リオに言われているように、危ないと思ったらちゃんと遠慮なく反撃するわ。だからお願いよ、私は真実が知りたいの」
「姫様…」
「だって、今までの事全て主犯はクロス侯爵令嬢のようになっているけれど本当にそうなのかしら?クロス侯爵令嬢は思い込みが激しくて、確かに私を酷く嫌っていて、とても私に攻撃的だけれど、誰かが彼女をそんな風に誘導しているような気がするの。ウッズ男爵令嬢についてもそう、たった一人だけ完璧にアリバイが無いなんて都合が良すぎるわ、別の犯人がいて、上手く誘導されているような気がするの。そして、今回の呼び出し…アメリー子爵令嬢が何をするつもりなのかは分からないけれど真犯人に近づくチャンスだと思うの、だからお願い、行かせて…」
私は両手を組んでシンディに懇願するように訴えました。
「無茶はしませんか?」
「絶対しない」
「危ないと思ったら必ず反撃して下さいますか?」
「ええ、約束するわ」
「しょうがないですね…」
「シンディ?!」
「ありがとうシンディ!ありがとうビビアン!」
根負けしたシンディの言葉に驚いたビビアンが何かを言う前に私はありがとうとお礼を言いました。
ビビアンが不服そうな表情で私を見ていましたが、諦めたのか、エリオ様にしっかり護衛をするように釘をさしていました。
「エリオ!あなたもしっかりと姫様をお守りするのよ!姫様に怪我なんてさせたら承知しないんだからね!!」
「肝に銘じます…」
ビビアンの言葉に真摯に返事をするエリオ様でした。
そうして私はしっかりと心の準備をして、呼び出された奥庭の噴水に向かいました。
噴水の前には既にアメリー子爵令嬢が来ていて、私達に背を向けて肩を震わせながら泣いているようでした。
「アメリー子爵令嬢、お話とは一体何でしょう?」
ぐすぐす……
「シルビア王女殿下…私…もう我慢出来なくて…キリエ様に言われて今まで殿下に酷い事を…」
私はアメリー子爵令嬢を警戒しながらゆっくり、一歩また一歩と距離をつめていきます。
「たとえば?噂ですか?嫌がらせですか?毒入りケーキも貴女がやったことですか?」
「いいえ!いいえ!私は何も…でも本当の事を言う勇気も無くて、でも、キリエ様の事はやり過ぎだと…私、もう耐えられなくて…私は謝りたくて…」
そう言って涙を流す彼女の横顔を見たその時!
彼女が私に向かってにんまりと笑ったように見えました。
そして私に向かって何かの液体をかけようとしたのが見えました。
その瞬間、私は咄嗟に氷の壁を彼女と私の間に出現させ、氷壁に阻まれた彼女は私にかけようとした液体を自分が被ってしまったのです。
「ギャーーーーッ!!!痛い!痛い!誰か助けて!!」
彼女は痛みに耐えきれず液体を洗い流そうと傍にあった噴水に飛込みました。水の中で暴れる彼女の背中は毒液がかかり、皮膚が火傷をしたように爛れてケロイド状になっていました。
首から肩、そして背中…
エリオ様が暴れる彼女を噴水の中から引き上げ、私は火傷のようになった肌を冷やす為氷魔法と浄化と癒やしの魔法をかけました。
でも、私は癒やしの魔法があまり得意ではないので少し痛みを和らげる程度の事しか出来ません。
アメリー子爵令嬢は痛みに顔を歪め、痛い痛いと涙を流しています。
騒ぎを聞きつけた先生達がやって来て、保健医の先生がアメリー子爵令嬢の傷に癒やしの魔法をかけました。
痛みは引いたようですが傷は引きつったような火傷痕を残し、綺麗に完治する事は出来ませんでした。
これ以上の癒しは神殿で治すしかないようです。
アメリー子爵令嬢はそのまま捕らえられ、王都の警備隊に引き渡されることになりました。
これからじっくり取り調べが始まるのでしょう。
先ずは先生に事情を説明する為に私は学園長室に向かいました。
先生に事情を説明していると、そこに顔色を変えたリオがやって来ました。
バーーーンッ!!と大きな音を立てて学園長室の扉が開かれたと思うと、私は
「シルビア!」
と叫んだリオの腕の中にあっという間に囲われていました。
学園長、カーネギー先生、シンディ、エリオ様、たくさんの人達の面前で私を抱き締め離さないリオに私はもうどうすれば良いのか分かりません。
「心配かけてごめんなさい。リオ…ごめんなさい…」
リオに抱き締められたまま私はそう言うのが精一杯でした。
エリオ様とシンディに私から引き剥がされたリオは、シンディから事情を詳しく聞いて、鬼の形相でアメリー子爵令嬢を殺さんばかりの勢いで部屋を出て行こうとした所をエリオ様とアンドレ様、そしてオスカー様に取り押さえられて、やっと落ち着いた所で、冷静に、これからの事を指示し始めました。
アメリー子爵令嬢とその関係者の拘束と取り調べ。
毒の入手経路の特定。
ウッズ男爵令嬢、クロス侯爵令嬢の再調査。
私はすぐに王城に返され、しばらく学園を休む事になりました。
今回の事件の事情聴取は私の代わりにシンディとエリオ様がする事になり、今迄の私に対する事件、噂なども、どんな状況でどんな事が行われていたのか詳しく調べられる事になりました。
私は王妃様にも
「安全が確認されるまでは、しばらく王妃宮を出てはいけません」
と外出禁止が言い渡され、グレース先生が何度か本を持ってお見舞いに来て下さいました。
陛下にも心配をかけてしまい、お見舞いの花がたくさん届けられ、私の部屋がカラフルな花で一杯になりました
私はそうして10日ほど、自室で軟禁状態のような日々をすごしたのです。
事件の真相が分かったとリオが尋ねてきたのは事件から12日目の午後でした。
主犯はアメリー子爵令嬢。
クロス侯爵令嬢の性格を利用して、私を襲い、婚約者のジャック子爵令息を使って毒を準備し、ウッズ男爵令嬢を誘き出してアリバイを無くし、罪を被せました。そして被害者を装いクロス侯爵令嬢の命令と匂わせて私を傷付けようとした。
それが事件のあらましだったそうです。
王族を直接害しようとした、アメリー子爵令嬢とジャック子爵令息は処刑。
既に刑は執行されたそうです。
「アメリー子爵令嬢はどうして私を執拗に狙ったのでしよう?」
「あの女、リオネル殿下にご執心だったそうです。彼女の部屋はリオネル殿下の肖像画で埋め尽くされていたそうですよ。全く気のない素振りをして、実はリオネル殿下の想い人になりたいと、かなり執着していたようです。」
エリオ様がそう教えてくれました。
アメリー子爵家、ジャック子爵家は没落。
両家の両親は平民に落とされ、強制労働行きとなりました。
クロス侯爵令嬢とウッズ男爵令嬢は貴族籍を抜かれ、修道院へ送られました。
クロス侯爵家は伯爵位に降格、次代を嫡男に譲り、夫妻は領地で謹慎が言い渡されました。
そして、事件から1ヶ月が過ぎて、私はやっと学園に戻る事が出来ました。
ナビエ様、ハンナ様、ミランダ様が笑顔で迎えて下さいました。
そうして、やっと平和な日常が戻って来たのです。
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