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⑶あれ?ヤバい?逃げよう!

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エメラルダが 隣国へ旅立って、1ヶ月 この頃サファイヤの様子がなんだかおかしい。

お茶会をしていても ため息ばかり。

デートをしても、私に向ける笑顔が以前とは違うものに見える。

私の腕に自らの腕を絡め、甘えてくるような事も無い。

学園でも婚約者のいる 男性とばかり仲良くしていると 噂されるようになった。

そして、ある日 サファイヤの友人 キャサリン嬢とサファイヤが学園の裏庭で 言い争っていると聞いて 慌てて駆けつけると、

「サファイヤ、どう言うつもりなの?マイク様と2人きりになるなんて、あなたにも婚約者がいるのよ!アクオス様に悪いと思わないの?」

「なぁに?キャサリン、もしかして嫉妬してるの?マイク様が 私に夢中だから···」

「なっ!?」

「うふふ···マイク様が言っていたわよ。キャサリンはつまらないって···あなた、他の人の悪口ばかり言っているんですって?そりゃあ つまらないわよねぇ」

「なっ!このっ!!」
女がサファイヤを叩こうとしたので、私は慌てて 2人の間に割って入ったが、

「アクオス様?どうしてここに?まさか 
私の事を付けて来たのですか?」

いかにも迷惑そうに、サファイヤが私に向かって言った。

「はっ?私はサファイヤが友人と言い争いになっていると聞いて、心配で···」

「心配?心配する必要なんてありませんわ。」

「婚約者の事を心配するのは当たり前だろう?」

「うふふ···婚約者ねぇ···」

「サファイヤ?」

サファイヤの含みある笑いに不安を感じる

サファイヤはそのまま、私に興味を無くしたように その場を去ろうとしていた。

「キャサリン、邪魔が入ったからこの続きは今度ね。」

「サファイヤ!私を邪魔者扱いするのか?」

私は思わず、去ろうとするサファイヤの腕を掴んだ。

「痛いですわ、アクオス様。何をなさいますの?その手を離して下さいませ。」

サファイヤの琥珀の瞳が 嫌悪感をあらわにして、細められる。

何だ?その目は?

サファイヤの瞳には、もう 私など写っていない。

あの 私に甘える様な、縋るような、私が愛しいと思っていた彼女は何処に行ってしまったんだ?

今、眼の前にいるこの女は誰なんだ?

一体、サファイヤは何を考えているんだ?

その後もサファイヤは私とのお茶会よりも他の男とのお茶会を選び。

私とのデートよりも他の男とのデートを選んだ。

「あなたといても 何だかつまらないの。」

たった一言で 彼女は私を切り捨てた。

あの時の情熱は一体何だったんだ?
私の浮気で姉のエメラルダとの婚約を白紙にしたのに、このまま 妹とも別れたりしたら、私の評判はどうなるんだ?

偽りの愛に曇っていた目が晴れると同時に、エメラルダを酷く傷つけてしまった事に 目の前が真っ暗になったような気がした。

私は 一体どうすればいいんだ?

このまま、愛のない結婚を しなければいけないのか?

いや、貴族なのだから、愛のない結婚もあるのだが···

いや、むしろ その方が普通かもしれない、だが···

他の男に いちいち目移りして、他人の婚約を 潰して回るようなこの女と、私は結婚しなければいけないのか?

だからと言って、エメラルダに続いて、今度はサファイヤを捨てるのか?

姉を捨てて、妹まで···

それこそ 私は、社交界に居られなくなるだろう。

今更 後悔しても もう遅い···

「私がいなくなれば、あなたにも私の言っている言葉の意味がわかるでしょう。」

エメラルダの最後の言葉が頭をよぎる。

エメラルダは隣国へ行ってしまった。

もう、誤りたくとも、やり直したくとも、彼女はもういないのだ。

最悪だ。

どんなに考えても、最悪のシナリオしか思い浮かばない。

浮気ばかりする女。

私の事を、ゴミでも見るような目で見るくせに、贈り物はしっかりと強請って、我が家の財産を食い潰す女。

私はどうすれば良い?

あんな女と結婚して、外に出せば我が家が恥をかくだけだろう。

いっそ、地下牢にでも 監禁しようか?

学園では、「真実の愛」を邪魔するエメラルダを退け、愛を貫いた奇跡のカップルとして、有名になってしまった。

まさか こんなにも早く破綻するなんて、誰が思う?

私はどうして、エメラルダの悪い評判を放置してしまったんだろう。

私はどうして、悲劇のヒロインぶって 自分の境遇に酔いしれている サファイヤの手を取ってしまったんだろう。

今更 後悔しても もう遅い。

このまま、結婚しても地獄。

姉妹を捨てた男として、生きるのも地獄。

どちらを選んでも地獄なら今すぐ別れた方がマシでは無いのか?

父上には 叱られるだろうが、私はたった1人の後継だ。廃嫡される事は無いだろう。

ならば、1日でも早い方が良いだろう。

しばらく 領地に引っ込んでいれば、そのうち皆んなも忘れるだろう。

新しい縁談は難しいだろうが、我が家は侯爵家だ。悪い噂が忘れられた頃に探せば、無いことも無いだろう。

どんな女性でも あの女よりは ましなはずだ。

それまでは領地に引き篭もって、真面目に暮らせば良い。

都合の良いことばかりを言っている事はわかっている。だが、あんなに愛していたサファイヤが今は、気持ち悪くてしかたが無い。

そうだ、そうしよう。

父上は怒るだろうが、きっと解ってくれるはずだ。

1日も早く、サファイヤから逃げなければ!!








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