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積乱雲の向こうは夏空
10《翼視点》
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椅子に座りながら少しだけウトウトしたような気もするが、あまり休めた気はしなかった。
朝日が完全に昇ったようだったので、スマホで時間を見れば朝の五時、いつもなら気持ちよく寝ている時間だ。
とにかく気力がない。とりあえずパソコンのスイッチを入れれば、父親に【今日無理。明日にする。】と短いメールを送った。
父親から少しずつプログラミングを習うようになり、カエルの子はカエルと言うべきか、自分の性によく合っていると翼は感じていた。
命令を入れればその通りに反映される、命令が間違えていれば正しく機能しないというシンプルさは翼にとってはわかりやすくて、少しずつ反映させる内容が難しくなっていくのも、ゲームのレベルアップと一緒で集中しやすい。
楽しさを感じていたそれを、今日はやりたくないと思う程度には荒んでいた。
結局朝食は食べる気も起きなくて、かといって部屋に閉じこもり続けて気分が落ちていくのにも耐えられず、朝から街中に下りようとバス停に向かった。
まだ朝といえる時間なのに日差しはキツくて、夕べの雨のせいで湿気が身体にまとわりつく。それだけのことが翼を苛立たせた。
じっとりと肌を滑る汗に不快感を感じつつ日陰で座っていると、先に反対方向のバスがやってきた。
パラパラと部活に向かう生徒が足早に校内に向かう中、一人だけ制服を纏った人物が降りてきた。
「げ。」
それは翼の天敵でもあり、昴希の元恋人の千彰だった。
目があった瞬間に露骨に顔を歪められたが、翼はとくに気にならない。むしろ相手をするほうが余計に苛立ちそうだし、面倒くさそうだと考えて、何も言わずに視線を逸らす。
翼の内心を知ってか知らずか、千彰は翼の腫れた顔を指さしてバカにしたような声で話しかけてきた。
「えー、モジャ何その顔。もしかして昴希くんとケンカした?」
「だから何?」
千彰からすれば冗談のつもりだったが、翼にとっては図星で、取り繕うことなく刺々しい声で返事をする。
その声色と表情をじっくり観察した千彰は、「ふーん。」と意味ありげに反応し、翼と視線を合わせるようにしゃがんできた。
「僕、補講で来たんだけど、時間あるからちょっとなら話聞いてあげる。どうせ暇でしょ?」
暇だと断定されることには腹がたったが、街に行ってもどうせ暑いだけだ。
それに結局のところ解決策の一つも分からない中、昴希を知っている人間に話をしたかったのもあるのかもしれない。
話を聞いてくれるのならこの際千彰でも良いと、翼は結局ついて行くことにした。
吹奏楽部が練習している音を聞きながら千彰のあとについて校内を進んでいく。
廊下のエアコンはいつもより弱いのか、空気は生ぬるくじめっとしていた。
美術室の主のようになっている千彰は、何の躊躇いもなく扉を開けると顎で翼に座るよう促す。
そのわりに翼が座ろうとすれば「そこは昴希くんの席。そっち行って。」と小うるさいことを言ってきた。
「一時間くらいで補講始まるから、それまでね。お前、昴希くんに何したの?」
ケンカの原因が翼にあると言わんばかりの態度は面白くはないが、それでも実際そうなので、翼はぐっと堪えた。
それからポツポツと昨日の話をしはじめる。
昴希の言葉や表情を思い出すだけで翼は痛みを感じずにはいられない。
だが初めは興味津々で聞いていた千彰は、昴希が大学の先輩と二人きりだった下りから明らかに飽きてきた態度を見せてくる。
「で、こーちゃんにオレだけって約束してって言ったのに何にも言ってくんなくて。…………チビ、聞く気あんの?」
これまで昴希の友達でもあるので、一応程度に我慢してきた翼だが、爪やら髪を気にしだす千彰の態度を非難するような口調で尋ねた。
強い翼の口調や、イライラとした雰囲気をものともしない千彰は呆れたようにため息をついて翼に向き合う。
「聞いてたけど予想以上にくっだらない話で飽きた。」
「は?」
「だって結局モジャが何にも分かってないって話でしょ?昴希くんとの別れ話ならもっと真剣に聞くって。」
分かっているような調子で話す千彰の言いたいことが見えず翼は首をかしげた。自分は何を分かっていないと言うつもりなのか。
「お前さあ、昴希くんに約束してほしいって、具体的に何してほしかったの?うんいいよで解決する程度の気持ちだった?それとも指輪でもねだるつもりだった?どうせもらっても不安なの変わんないじゃん。」
まくし立ててくる千彰の言葉は翼には図星すぎて、怒りを通り越して少し冷静になってしまった。
確かにどんな約束をもらったって、同じことがあれば絶対不安になっていたに違いない。結局昴希がいなくなるかもしれない可能性は消しようがないのだから。
「大体あの理性しかなさそうな昴希くんが、出会ってたかだか数十分の見ず知らずの男と何かあるわけないじゃん。僕だって一年付き合って、一回もキスしたことないのに。」
「え、マジ?」
「なんで嬉しそうなの、キモ。」
思いがけず昴希のファーストキスが自分だと分かって、空気も読まずにニヤけて喜びの声が口をついてしまった。
そんな翼をゴミを見るような目で見る千彰は、なんだか機嫌が良くなった様子にため息をつく。
「モジャは年中発情期でエロいことしか考えてないだろうけど、昴希くんは全然そんなことないから。どうせ信用してないのが怒られた原因でしょ?」
「…………いや、無理やりキスしたら殴られた。」
この空気で言うのはさすがの翼も躊躇われたが、素直に白状すれば、案の定千彰は「うわー……。」と翼から身体を引いて距離をとった。
「お前、分かってたけど最低。」
「めっちゃ嫌がられたし、やんなきゃ良かったって思ってる。」
昴希の嫌がることは何だってしたくないし、もう二度としないと昨日から何度も誓っている。そうしたところで昴希が自分と関わってくれなければ意味はないのだが。
「これは僕の話だから、昴希くんとちょっと違うかもしれないけど。」
頭を抱えだす翼を見かねて、千彰はそう前置きをした。そのうえで、翼が聞く態勢になっているのを確かめてから先ほどの勢いとは正反対に慎重に口を開く。
「僕ってかわいいから、ヒートのときでもそうじゃなくても結構連れ込まれそうになるんだけど、何回同じようなことあってもやっぱ怖いよ。」
千彰が色々な人間を惹きつけているらしいことは翼も知っていた。よく話すクラスメイトにも千彰のファンはいる。
強気で口も悪く、怒るとすぐ手が出る千彰にそこまでの魅力があるとは思ってもいなかったが、思い出すだけで声が震えるほどの経験をしていることは翼は想像もしてなかった。
「昴希くんだってオメガだし色々あっただろうから、どんなに仲良くても無理やりは怖かったと思う。」
「い、色々って?」
「知らない。僕はずっとアルファの昴希くんの恋人だったんだから。それにオメガ同士でも一番深いとこの話はしないよ。」
再び考え込むように目を伏せる千彰を見て、確かに自分は何も分かっていなかったと翼は感じた。
結局知っていることと言えば、昴希がパイロットになれず辛い思いをしてきたことと、自分が昴希のことを好きだということだけだ。
昴希がどんな苦労をしてきたのか、今何を考えているのか、嫌なことは何で、してほしいことは何なのか、全然知らなかった。
それが分かっても八方ふさがりに変わりはないのだが。
「モジャが喜ぶからあんまり言いたくなかったけど、僕は昴希くんに怒られたこと一回もないよ。」
「……オレがダメって言いたいの?」
「それもあるけど、僕もゴリラも昴希くんをそんな風にできないよ。悔しいけど、昴希くんの気持ちに一番近いのってモジャなのかもしれない。」
昴希が初めての友人で、その周りとしか関わりを持ったことがない翼にはそれが本当かどうか判断ができずに黙り込んでしまう。
「ま、お前がめげずに謝り倒したら許してくれるかもね。……アドバイスはこれでおしまいっ。」
まだ少し時間はあるのにも関わらず無理やり話を切り上げると、千彰は翼を美術室から追い出した。
昴希を挟んでライバル関係であるはずの千彰がきちんと話を聞いてくれて、昴希のためとはいえ深い話までして翼を諭した理由をまだ的確な言葉にできない。
だが、うるさくて昴希のことを取ろうとする面倒くさいヤツという少し認識を改めても良いのかもしれないと感じた。
「あんまり酷いことしたら、僕が取りに行くから。」
そう言い残して千彰は補講へと向かっていく。
廊下はやっぱり蒸し暑く、それを不快だと思いながらも翼は寮に向かって走り出した。
朝日が完全に昇ったようだったので、スマホで時間を見れば朝の五時、いつもなら気持ちよく寝ている時間だ。
とにかく気力がない。とりあえずパソコンのスイッチを入れれば、父親に【今日無理。明日にする。】と短いメールを送った。
父親から少しずつプログラミングを習うようになり、カエルの子はカエルと言うべきか、自分の性によく合っていると翼は感じていた。
命令を入れればその通りに反映される、命令が間違えていれば正しく機能しないというシンプルさは翼にとってはわかりやすくて、少しずつ反映させる内容が難しくなっていくのも、ゲームのレベルアップと一緒で集中しやすい。
楽しさを感じていたそれを、今日はやりたくないと思う程度には荒んでいた。
結局朝食は食べる気も起きなくて、かといって部屋に閉じこもり続けて気分が落ちていくのにも耐えられず、朝から街中に下りようとバス停に向かった。
まだ朝といえる時間なのに日差しはキツくて、夕べの雨のせいで湿気が身体にまとわりつく。それだけのことが翼を苛立たせた。
じっとりと肌を滑る汗に不快感を感じつつ日陰で座っていると、先に反対方向のバスがやってきた。
パラパラと部活に向かう生徒が足早に校内に向かう中、一人だけ制服を纏った人物が降りてきた。
「げ。」
それは翼の天敵でもあり、昴希の元恋人の千彰だった。
目があった瞬間に露骨に顔を歪められたが、翼はとくに気にならない。むしろ相手をするほうが余計に苛立ちそうだし、面倒くさそうだと考えて、何も言わずに視線を逸らす。
翼の内心を知ってか知らずか、千彰は翼の腫れた顔を指さしてバカにしたような声で話しかけてきた。
「えー、モジャ何その顔。もしかして昴希くんとケンカした?」
「だから何?」
千彰からすれば冗談のつもりだったが、翼にとっては図星で、取り繕うことなく刺々しい声で返事をする。
その声色と表情をじっくり観察した千彰は、「ふーん。」と意味ありげに反応し、翼と視線を合わせるようにしゃがんできた。
「僕、補講で来たんだけど、時間あるからちょっとなら話聞いてあげる。どうせ暇でしょ?」
暇だと断定されることには腹がたったが、街に行ってもどうせ暑いだけだ。
それに結局のところ解決策の一つも分からない中、昴希を知っている人間に話をしたかったのもあるのかもしれない。
話を聞いてくれるのならこの際千彰でも良いと、翼は結局ついて行くことにした。
吹奏楽部が練習している音を聞きながら千彰のあとについて校内を進んでいく。
廊下のエアコンはいつもより弱いのか、空気は生ぬるくじめっとしていた。
美術室の主のようになっている千彰は、何の躊躇いもなく扉を開けると顎で翼に座るよう促す。
そのわりに翼が座ろうとすれば「そこは昴希くんの席。そっち行って。」と小うるさいことを言ってきた。
「一時間くらいで補講始まるから、それまでね。お前、昴希くんに何したの?」
ケンカの原因が翼にあると言わんばかりの態度は面白くはないが、それでも実際そうなので、翼はぐっと堪えた。
それからポツポツと昨日の話をしはじめる。
昴希の言葉や表情を思い出すだけで翼は痛みを感じずにはいられない。
だが初めは興味津々で聞いていた千彰は、昴希が大学の先輩と二人きりだった下りから明らかに飽きてきた態度を見せてくる。
「で、こーちゃんにオレだけって約束してって言ったのに何にも言ってくんなくて。…………チビ、聞く気あんの?」
これまで昴希の友達でもあるので、一応程度に我慢してきた翼だが、爪やら髪を気にしだす千彰の態度を非難するような口調で尋ねた。
強い翼の口調や、イライラとした雰囲気をものともしない千彰は呆れたようにため息をついて翼に向き合う。
「聞いてたけど予想以上にくっだらない話で飽きた。」
「は?」
「だって結局モジャが何にも分かってないって話でしょ?昴希くんとの別れ話ならもっと真剣に聞くって。」
分かっているような調子で話す千彰の言いたいことが見えず翼は首をかしげた。自分は何を分かっていないと言うつもりなのか。
「お前さあ、昴希くんに約束してほしいって、具体的に何してほしかったの?うんいいよで解決する程度の気持ちだった?それとも指輪でもねだるつもりだった?どうせもらっても不安なの変わんないじゃん。」
まくし立ててくる千彰の言葉は翼には図星すぎて、怒りを通り越して少し冷静になってしまった。
確かにどんな約束をもらったって、同じことがあれば絶対不安になっていたに違いない。結局昴希がいなくなるかもしれない可能性は消しようがないのだから。
「大体あの理性しかなさそうな昴希くんが、出会ってたかだか数十分の見ず知らずの男と何かあるわけないじゃん。僕だって一年付き合って、一回もキスしたことないのに。」
「え、マジ?」
「なんで嬉しそうなの、キモ。」
思いがけず昴希のファーストキスが自分だと分かって、空気も読まずにニヤけて喜びの声が口をついてしまった。
そんな翼をゴミを見るような目で見る千彰は、なんだか機嫌が良くなった様子にため息をつく。
「モジャは年中発情期でエロいことしか考えてないだろうけど、昴希くんは全然そんなことないから。どうせ信用してないのが怒られた原因でしょ?」
「…………いや、無理やりキスしたら殴られた。」
この空気で言うのはさすがの翼も躊躇われたが、素直に白状すれば、案の定千彰は「うわー……。」と翼から身体を引いて距離をとった。
「お前、分かってたけど最低。」
「めっちゃ嫌がられたし、やんなきゃ良かったって思ってる。」
昴希の嫌がることは何だってしたくないし、もう二度としないと昨日から何度も誓っている。そうしたところで昴希が自分と関わってくれなければ意味はないのだが。
「これは僕の話だから、昴希くんとちょっと違うかもしれないけど。」
頭を抱えだす翼を見かねて、千彰はそう前置きをした。そのうえで、翼が聞く態勢になっているのを確かめてから先ほどの勢いとは正反対に慎重に口を開く。
「僕ってかわいいから、ヒートのときでもそうじゃなくても結構連れ込まれそうになるんだけど、何回同じようなことあってもやっぱ怖いよ。」
千彰が色々な人間を惹きつけているらしいことは翼も知っていた。よく話すクラスメイトにも千彰のファンはいる。
強気で口も悪く、怒るとすぐ手が出る千彰にそこまでの魅力があるとは思ってもいなかったが、思い出すだけで声が震えるほどの経験をしていることは翼は想像もしてなかった。
「昴希くんだってオメガだし色々あっただろうから、どんなに仲良くても無理やりは怖かったと思う。」
「い、色々って?」
「知らない。僕はずっとアルファの昴希くんの恋人だったんだから。それにオメガ同士でも一番深いとこの話はしないよ。」
再び考え込むように目を伏せる千彰を見て、確かに自分は何も分かっていなかったと翼は感じた。
結局知っていることと言えば、昴希がパイロットになれず辛い思いをしてきたことと、自分が昴希のことを好きだということだけだ。
昴希がどんな苦労をしてきたのか、今何を考えているのか、嫌なことは何で、してほしいことは何なのか、全然知らなかった。
それが分かっても八方ふさがりに変わりはないのだが。
「モジャが喜ぶからあんまり言いたくなかったけど、僕は昴希くんに怒られたこと一回もないよ。」
「……オレがダメって言いたいの?」
「それもあるけど、僕もゴリラも昴希くんをそんな風にできないよ。悔しいけど、昴希くんの気持ちに一番近いのってモジャなのかもしれない。」
昴希が初めての友人で、その周りとしか関わりを持ったことがない翼にはそれが本当かどうか判断ができずに黙り込んでしまう。
「ま、お前がめげずに謝り倒したら許してくれるかもね。……アドバイスはこれでおしまいっ。」
まだ少し時間はあるのにも関わらず無理やり話を切り上げると、千彰は翼を美術室から追い出した。
昴希を挟んでライバル関係であるはずの千彰がきちんと話を聞いてくれて、昴希のためとはいえ深い話までして翼を諭した理由をまだ的確な言葉にできない。
だが、うるさくて昴希のことを取ろうとする面倒くさいヤツという少し認識を改めても良いのかもしれないと感じた。
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