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第五章 再会
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港での仕事を終えた後、勝を心配する男たちに囲まれてしまった。
二日連続で慌てた様子の波多野の家の者が来たのだから男たちの反応は自然なものだ。
「それで、坊っちゃんはケガでもしたんか?!」
「うちの母ちゃんは枝みてえな身体で帰ってきたって言うとったぞ。」
次々に心配を口にする様子に清一郎も圧倒されながら、皆を落ち着けようと手を前に出してなだめていく。
そろそろ仕事でかいた汗も引きそうな頃なのに、男たちの熱量は夏の気温よりも高い。
「少し疲れとるみたいです。しばらく休めばここまで歩けるようになると思います。」
勝はまだ混乱をしているし余計な心配をかけるものでもないだろうと、断片的な情報だけを皆に伝えて清一郎はそれ以上は話さなかった。
特に年配の男たちは勝が歩き出す前から成長を見守ってきたのだから、自分の子どもと同じように感じている者もいるだろう。
皆が散り散りになると、律儀に待っていた和夫が少し周りを気にしながら清一郎に話しかけてきた。
「いい町ですね。」
「そうじゃなあ。みんな気のいい人じゃ。」
「……俺は、こんな風に出迎えられなくて、三日も故郷にいられねえで、ここに来ちまった。」
ここも食糧に余裕はないが仕事はある。
和夫の故郷は食い物も仕事もないような場所だったのだろう。
「そのうち、勝に会わせたい。お前さんと同じ満州におったんじゃ。和夫にしか分からんこともあるじゃろ。」
同じように和夫の悲しみの半分は、勝にしか分かってやれないのだろう。
時々こうして故郷を懐かしむ弟分はあまり満州にいた時のことは口にしない。勝の姿を見た清一郎は、その理由がなんとなくわかる気がした。
「……そうかも、しれねえです。」
「俺と同い年だから歳も近い。きっと気が合う。」
少し不安定な気持ちにさせてしまった和夫を置いていくのは気が引けたが、代わりに弥七が和夫を飯に誘ってくれたので、清一郎は約束通り真っ直ぐ勝の家に向かった。
今は人に甘えたい時期のようだから金平糖の一つも買ってやりたいが当然のように町では手に入らない。
闇市に行けばあるのかもしれないが、それも隣町にしかなく、バスも本数が限られている今、金はかけられても手に入れる手段がなかった。
今度米軍が来たときにチョコレートを売ってもらえないか頼んでみようと考えながら、暗くなりはじめた道を急ぐ。
「清一郎、来てくれたか。」
ちょうど波多野家の食事の時間だったらしい。
温かい粥か雑炊のいい匂いを漂わせる家の前に来てしまったと思ったが、引き返して遅くなっては勝も心配するだろうと、清一郎は玄関をくぐった。
「飯時だったか。すまんな。」
勝は顔をほころばせてくれたが、他人の家の飯時はどうも居心地が悪く、腰をどこに落ち着けようか考えていた。
すると家長でもある勝の父が静かに「座りなさい。」と言った。
すでに茶碗の中は空になっており、食事も終わった頃のようだった。
「清一郎くんも食べていきなさい。」
「いや、俺は……。」
清一郎が遠慮しているうちに勝の母が雑炊を一杯よそってきてくれた。
その温かな香りに思わず清一郎の腹が鳴ってしまい、恥ずかしさがこみ上げてくる。
両手で腹を隠した清一郎に勝は吹き出して笑いだし、声を抑えられないまま清一郎の服を引っ張って座らせようと合図した。
仕事でくたくたなせいで出た自分の生理的な声をごまかすことも出来ず、手を合わせてありがたくご相伴に預かることにした。
きっと勝の胃に配慮したのだろう。かなり柔らかめに炊いた雑炊を胃に流し入れて、後片付けを手伝ってから勝を寝室へと連れていく。
布団に座らせる頃には少し眠たいような、ぼんやりとした顔で清一郎を見あげていた。
二日連続で慌てた様子の波多野の家の者が来たのだから男たちの反応は自然なものだ。
「それで、坊っちゃんはケガでもしたんか?!」
「うちの母ちゃんは枝みてえな身体で帰ってきたって言うとったぞ。」
次々に心配を口にする様子に清一郎も圧倒されながら、皆を落ち着けようと手を前に出してなだめていく。
そろそろ仕事でかいた汗も引きそうな頃なのに、男たちの熱量は夏の気温よりも高い。
「少し疲れとるみたいです。しばらく休めばここまで歩けるようになると思います。」
勝はまだ混乱をしているし余計な心配をかけるものでもないだろうと、断片的な情報だけを皆に伝えて清一郎はそれ以上は話さなかった。
特に年配の男たちは勝が歩き出す前から成長を見守ってきたのだから、自分の子どもと同じように感じている者もいるだろう。
皆が散り散りになると、律儀に待っていた和夫が少し周りを気にしながら清一郎に話しかけてきた。
「いい町ですね。」
「そうじゃなあ。みんな気のいい人じゃ。」
「……俺は、こんな風に出迎えられなくて、三日も故郷にいられねえで、ここに来ちまった。」
ここも食糧に余裕はないが仕事はある。
和夫の故郷は食い物も仕事もないような場所だったのだろう。
「そのうち、勝に会わせたい。お前さんと同じ満州におったんじゃ。和夫にしか分からんこともあるじゃろ。」
同じように和夫の悲しみの半分は、勝にしか分かってやれないのだろう。
時々こうして故郷を懐かしむ弟分はあまり満州にいた時のことは口にしない。勝の姿を見た清一郎は、その理由がなんとなくわかる気がした。
「……そうかも、しれねえです。」
「俺と同い年だから歳も近い。きっと気が合う。」
少し不安定な気持ちにさせてしまった和夫を置いていくのは気が引けたが、代わりに弥七が和夫を飯に誘ってくれたので、清一郎は約束通り真っ直ぐ勝の家に向かった。
今は人に甘えたい時期のようだから金平糖の一つも買ってやりたいが当然のように町では手に入らない。
闇市に行けばあるのかもしれないが、それも隣町にしかなく、バスも本数が限られている今、金はかけられても手に入れる手段がなかった。
今度米軍が来たときにチョコレートを売ってもらえないか頼んでみようと考えながら、暗くなりはじめた道を急ぐ。
「清一郎、来てくれたか。」
ちょうど波多野家の食事の時間だったらしい。
温かい粥か雑炊のいい匂いを漂わせる家の前に来てしまったと思ったが、引き返して遅くなっては勝も心配するだろうと、清一郎は玄関をくぐった。
「飯時だったか。すまんな。」
勝は顔をほころばせてくれたが、他人の家の飯時はどうも居心地が悪く、腰をどこに落ち着けようか考えていた。
すると家長でもある勝の父が静かに「座りなさい。」と言った。
すでに茶碗の中は空になっており、食事も終わった頃のようだった。
「清一郎くんも食べていきなさい。」
「いや、俺は……。」
清一郎が遠慮しているうちに勝の母が雑炊を一杯よそってきてくれた。
その温かな香りに思わず清一郎の腹が鳴ってしまい、恥ずかしさがこみ上げてくる。
両手で腹を隠した清一郎に勝は吹き出して笑いだし、声を抑えられないまま清一郎の服を引っ張って座らせようと合図した。
仕事でくたくたなせいで出た自分の生理的な声をごまかすことも出来ず、手を合わせてありがたくご相伴に預かることにした。
きっと勝の胃に配慮したのだろう。かなり柔らかめに炊いた雑炊を胃に流し入れて、後片付けを手伝ってから勝を寝室へと連れていく。
布団に座らせる頃には少し眠たいような、ぼんやりとした顔で清一郎を見あげていた。
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