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第六十五章 捨てられた世界
これからも私を守ってください
しおりを挟む「お父様、お母様、私のために、いま少し残っていてください、伏して伏してお願いいたします」
「ではとにかく、天之御中主(あめのみなかぬし)様に嘆願してまいります」
ヴィーナスさん、わが身を幽子に分解、幽子定数群体として、『意識』だけの存在となり、第三天、無所有処(むしょうしょ)を念じたのです。
……微かな『ゆらぎ』を感じるわ、天之御中主(あめのみなかぬし)様ね……
ヴィーナスさんは知覚したようです。
『ゆらぎ』は何もいいません、むしろ『意識』などもない、そんな風に思えたヴィーナスさんです。
……創造の神、天之御中主(あめのみなかぬし)様。
どうか、神産巣日神、高御産巣日神のお二方の、『いずものおおやしろ』の中に微かに残る『意識』を、どうか、この私を監視するために、お残し願えませんか。
私は欲まみれ、このままでは、世界は私の色に染まってしまいます……
このとき、初めて『ゆらぎ』の『意識』を感じられました。
『ゆらぎ』はヴィーナスさんを抱くような感覚を残して、そして消えて行ったのです。
その瞬間、ヴィーナスさんの『意識』は、『いずものおおやしろ』の結界に戻っていたのです。
「ご両親様、ただいま戻りました、天之御中主(あめのみなかぬし)様は、私の嘆願を是としていただきました」
「汝は、私たちがどのようなものか、知っているのであろうな?」
「承知しております、しかしお体の一部ではありますが、私のご両親様、どうか娘に尽くさせてください」
「私たちは汝の知るように幽子定数群体、しかし本来の神産巣日神、高御産巣日神の一部ではある」
「ご本体は私たちを分けられ、汝を造れと私たちに命じられた」
「確かに汝は私たちの娘、そして私たちを通じて、お二方の『意識』を受け継いでいる」
「しかし本当の神々、ご本体は、汝が時を修正した時点で神(かみ)さられている」
……
「それがどうなのです、私にとってご、両親様は目の前に居られるお二人、どうか私を見捨てないでください!」
「私はお母様の鏡と、お父様のハーモニカを大事に持っております」
「心折れそうなとき、鏡とハーモニカを眺め、お二人がいつも見守ってくださっていたと、感じていました」
「幾度となく救われました、これからも私を守ってください、私の家族として、一緒に暮らしてください」
……
「あなた……私たちの娘に従いましょう、心静かに、娘を見守る幸せを味わいましょう」
神産巣日神が、ついにおっしゃったのです。
その言葉を受けて高御産巣日神も、
「娘が勧めるのだ、その通りにすべきだろう、娘よ、今後の話を決めるとしよう」
こうして三人は、今後の相談を始めたのです。
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