ど天然田舎令嬢は都会で運命の恋がしたい!

上木 柚

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第一章

15 季節のフルーツケーキと迷探偵

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 これからどこに向かうべきか話し合う為に、一先ず西区にあるパーラーに入った3人。
 店内に入ると、中庭に面したテラス席に案内され、ロザリンドとトマスは庭を眺める形で隣り合って座り、ルーシーはロザリンドの後ろに控えた。

「さて、じゃあ改めて手紙を確認しようか」
「そうね!えーと、あら、この季節のフルーツケーキって、今は何のフルーツかしら……」
「……お嬢様」
「プッ!先に頼んじゃおうか。ごめんね」

 手紙を取り出そうとして、チラリと目に入ったメニューに気を取られたロザリンドを見て、トマスは笑いを堪えながら先に注文することにした。
 後ろでルーシーは額に手をあてながらため息をついている。
 当のロザリンドはトマスの提案に「あら、そう?そうよね、お店に入ったんだからまずは注文よね!」と目を輝かせながら、メニューを食い入るように見ている。


 注文が終わると改めて手紙を広げた。


「まず、手紙にはこの暗号文の他に何が書かれているの?」
「だいたいの内容はお祖父様からお祖母様へのラブレターね。お二人は政略結婚だったのだけど、顔合わせの際にお祖父様が一目惚れして、いつもすごく情熱的に口説いていらしたとか」
「へえ、親子でも現パスカリーノ辺境伯とは随分違うんだね」
「そうかしら?お父様もお母様にはそれはそれは情熱的だったらしいわよ。まあ、この話はおいておいて、それで、手紙の最後にはこうあるの『君に見せたいものがあるから、来てほしい。順番で回ると辿り着けるよ』ですって」


『女神が微笑む場所に 花は開く』

『黒き門には横から ただし近づき過ぎないで』

『真ん中から君と私を見下ろす尊老は 約束の刻を告げる』


 3人は暗号の書いてある便箋をじっと眺め、議論を始めた。ちょうどケーキが出てきたので、ロザリンドは一目散に食べ始め、ルーシーは小さく咳払いをするが、聞こえていない。

「あ!……『黒き門』というのは北区の入口の『黒竜門』ではないでしょうか?」
「そんなのがあるの?じゃあそうかも!?」
「じゃあ『女神が微笑む場所』は西区の聖堂かな?商売の女神が祀られている」
「へえ!商売の神様は女神さまなのね!じゃあそうかも!?」
「『真ん中から君と私を見下ろす尊老』はなんでしょうか…」
「……そんろうって何?賢いおじいさんみたいな感じ?」
「「………」」
「そこは一番最後に行く予定だし、取り敢えず西区にいるから聖堂に行ってみようか」
「そうね!探偵は足でかせぐものよね!まず行動!」
「お嬢様…」

 ロザリンドは発言は多いものの全く役には立たなかったが、一先ず商売の女神が祀られる聖堂に行こうと話がまとまった。

「トマス様!」

 パーラーを出るとふんわりとした黒髪をハーフアップでまとめた少女が小走りで駆け寄ってきた。

「あら!ジュリア様!ごきけんよう!」
「……ごきげんよう…。……ロザリンド様もいたんですのね」
「やあ、ジュリア嬢。こんな所で奇遇だね。買い物かな?」
「あー、買い物……ですわ!そうです」

 ジュリアはサッと扇子を開いて口元を隠そうとしたが、ロザリンドが目を輝かせて何かを言おうとしていたので咄嗟にやめた。

「でも、もう終わりましたの。お二人は何してらっしゃるの?わたくし時間を持て余しておりますのでご一緒しても構わないかしら?」

 ロザリンドは快諾したが、ルーシーは微妙な表情を浮かべていた。しかし「新しいお友達が出来るかも~」と浮かれていたロザリンドがそれに気付く事はなかった。
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