ど天然田舎令嬢は都会で運命の恋がしたい!

上木 柚

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第二章

35 乙女の失態

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「ちょっと!起きて!」
「んー?もうちょっと…お願いルーシー…」
「誘拐された幌馬車の荷台で爆睡ってどういうことなの!?図太過ぎ!」

 幌馬車に乗せられ、手足を縛られたロザリンド。最初こそ、どこに連れて行かれるのかと警戒していたが、移動時間が長すぎて飽きてしまい、ついには揺れる幌馬車の荷台で居眠りをする始末だった。実行犯の少年も心底呆れている。

「ハッ!わたくし達をどこに連れて行くつもり!?」

 目が覚めたロザリンドは、くちの端に付いた涎を流れでサッと拭う。本人的には『自然に拭えたから絶対にバレてないわ!』と自信満々だが、起こされた時点で見られているので無駄な努力である。

「今さら取り繕っても、誘拐犯の馬車で涎垂らして居眠りした事実は消えないからね」
「な!完璧に拭ったはずなのに!鋭い観察眼なのね…」
「……アホの子なの?」

 辺りを見回すと、どうやら居眠りしている間に屋内に移動させられていたらしい。さほど広くない部屋の中にはベッドと小さなテーブルセットに、今ロザリンドが座らされているソファが一脚。窓には格子等は無いようだった。

「ここはどこ!?ウォーレン様はどうしたの!?」
「お兄さんは人質だから別の部屋にいるよ。ここは、どこだかは教えない」

 少年の言葉にロザリンドはムゥっと頬を膨らませる。少年は笑いながら膨らんだ頬を指で突くと、「まあ、足の縄だけは外したから、大人しくしててよ」と部屋を出ていった。鍵の音がし、少年の足音が遠ざかっていく事を確認したロザリンドは、少しでも情報を得るべく、窓の外の景色を観察した。

「街中とかではないみたいね」

 ロザリンドは、状況判断のために、窓辺に移動する。
 窓のすぐ下は峡谷となっていて、とても降りられそうにはない。対岸までは10メートル程離れており、正面には森、その奥には岩山が見えた。

「山岳地帯の側なのかしら。周りに岩山が多い気がする。正面の森はあんまり深くなさそうだけど、この峡谷は…だとすると…、隣国との国境と言うよりは…」

 ―――コンコンコン

 ノックの音がして振り返ると、少年と20代前半くらいだと思われる男が入ってきた。

「やあ、久しぶりだね!僕のリトル・エンジェル!」
「……やっぱり」

 男を見るなり、ロザリンドは顔をしかめた。
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