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黄色
しおりを挟むまた、どこかで会えるかしら。私の王子様。
王子様は数日後、自らの足で私のもとに訪れたのだ。現実的に言うと、私の働くクリニックに患者として来院した。
「初めての方ですね、かしこまりました。」
と、普段と同じように新患の対応をする。そして、受付をするぞ!とキーボードに手を置いたとき、ふと思った。私この人の個人情報見たら危険な気がする。
私は隣に座っている医事さんに、この患者の登録お願いしますと保険証を渡した。私は彼のことを隣の医事さんに任せ、他の業務にとりかかる。
今日のクリニックはそこまで混んでおらず、患者様を長く待たせることもなく進んだ。彼は今診察室に入っている。困ったことに彼は待ち時間中度々こちらを見ていた。私を見ていたのかな?自意識過剰かもしれないけど…
彼が診察室から出てきた。「空町さん、お会計お願いしていいですか?」と声をかけられたので、私は彼の会計をすることになった。
大野 侑人っていう名前なのね…。
「お会計お呼びいたします。大野様。大野 侑人様。」
「はい。」
彼とまたご対面。私は平然を装い、彼のお会計を済ませる。
彼がクリニックから出ていくと、へとへと~っと椅子に座った。
なんで今まで考えなかったのだろう。私と寝た男が、私の働くクリニックに患者として来る可能性があることを。大野さんが何か言ってこなくて良かった。私が飲み屋でGETした男と寝てるなんて誰も知らないもの。
それにしても…今日も綺麗だったなあ~。金曜のこともあるから、なんだか彼を見るだけで興奮してしまうわ。
私がほんの数秒自分の世界に入っていると、隣の医事さんにしっかりしないと注意された。
今日はいつもより空いていたので、他の作業も捗りお手隙になった。なんとなく大野さんの次の来院日を確認してみた。
次は来週の土曜か…多分これは毎週土曜に来院する気がする。私しばらく毎週土曜いるなあ…。もしや運命?なんて馬鹿なことを考えていた。
仕事が終わり、ロッカーで着替えをしていると友人から連絡がきていた。
『ごめーん!子供が熱出しちゃって今日会えなくなっちゃった!今度埋め合わせするからごめんね。』
私は仕方がないことはわかっているが、がっかりした。
私の周りの人たちの半分が結婚をした。子供がいるとこもある。私も結婚を全く考えていないわけではないし、いつまでもこんな遊びを続けるつもりもない。ただ、結婚を考えて付き合えるほどの男性に会えていないだけだ。
ロッカーを閉めるパタン…という音が余計に孤独を感じさせ、沈んだ気分になる。
クリニックを出たあと、まっすぐは帰らず駅チカのカフェに入った。お昼ご飯を外で済ませようと思い、アボカドとバジルソースのパスタを注文した。
昼時なので空いてる席は少なく、カウンター席に座った。
ここのお店のバジルパスタは濃厚なバジルソースがモチモチのパスタによく絡んでて絶品なのよね。私は自分にご褒美と思いながらパスタを食べた。
パスタを食べてる最中なんだか隣から視線を感じる。チラチラ見られていると思えば、今はかなりガン見されている気がする。私は少し睨みつけるように顔を向けてた。
すると、隣には大野さんがいた。こんにちはとペコリとする大野さんにつられて、私もペコリとした。
「何してるんですか?今までずっといたんですか?」
「今日は仕事がなかったので、クリニックの後は買い物や色々店を見てたりしてました。それで、この店に入る貴女が見えて、僕もここでお昼を食べようかと…」
「もう!隣でずっと見られてたら怖いじゃないですか!話しかけてくださいよ。」
「ごめんなさい。なんて話しかけようかなと考えていて…」
特に話すこともなく、しーんと気まずい空気が流れる。会って初めましてでヤって、しかも患者として再会を果たしたばかりだから気まずいのは当たり前か。
本当はせっかく会えたのだから今日もホテルへなんて思ったけど、大野さんの足元には買い物をしたのだろうパンパンのエコバッグが置いてある。この荷物で来られてもね…。関係ないけど、エコバッグ使う派なのね可愛い。
「私は食べ終わったので帰ります。失礼します。」
と言い席を立つと大野さんが口を開いた
「あの!これも何かの縁ですし、良ければ連絡先交換しませんか?」
帰り道、スマホの画面を見ながら「あ~あ」とため息をつく。結局、彼の笑顔と前回の行為の思い出補正に負け連絡先を交換してしまったのだ。
ヤった男と連絡先を交換するなんて初めてだから正直どうすればいいのかわからない。話すことなんてないし、用もない。ホテルにでも誘えばいいのだろうか。
そう考えてると、大野さんから電話がきた。
『はい、空町です。』
『こんばんは、大野です。空町さん、来週の土曜は仕事終わった後空いてますか?』
『はい…今のところは空いてます。』
『よければ、また飲みに行きませんか?』
『昼間からですか?!別にいいですけど…』
『なら、それでお願いします。では、また来週。失礼します。』
1分にも満たない電話は終了した。この人意外と大胆なんだなあと私は感心したと同時に、なんだか自分にも春が来たような気がして少し浮かれた気分になっていた。
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