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第一章
1-2 「はい、じゃあ二人組作って」
しおりを挟む――うわ、俺が女子だったら絶対落ちてた……
見とれたくなるのをなんとか堪えて前を向く。同じ男にライン交換しようと言われる。それでこんなに嬉しくなるなんて。
こんな顔面で生きるってどんな人生なんだろ。やっぱもてもてなんだろうな。……彼女、前の学校にいるのかな? ってことは遠距離?
柔軟体操を終えて、体育の授業のルーティンとなっている筋トレと走りこみをおこなう。その頃には作られた二人組はなんとなく自然解散していて、ほかのやつらに話しかけられて緒川との距離がどんどん離れていくのを俺はさびしく感じた。
……いや、これが当然なんだ。
急いで走っているようには見えないのに緒川のペースははやい。みるみるうちに彼の背中が離れていく。
そして彼の横にいるのは、いわゆるカースト上位のクラスメイトたちで――だよな、と俺はそのずっと後ろをひとりで走りながら思った。
緒川はああいうやつらと一緒にいるのが自然なんだ。俺みたいな人付き合いが苦手なぼっちとつるむ理由がない。さっきのだって俺がぽつんとしてたから可哀想に思って話しかけてくれただけ。ラインだって社交辞令だろう。
勘違いしちゃダメだ、と俺は自分に言い聞かせる。
今日の体育はサッカーだった。
俺は司令塔の伊藤――サッカー部のキャプテンで、さっき緒川と一緒に走りこんでいたちょっとチャラめのやつ――に「綿辺のポジションはそこな」とコートの外をあごでしゃくられた。見学してろということだ。
「おまえ下手すぎて邪魔だからさ。せいぜい心込めて応援してて。頼むわ」
「……わかってるよ」
せめてなにか言いかえせればいいのに、口の中でもごもごとつぶやくことしかできないのがつらい。
もっとも伊藤の言葉は事実だけど。俺がいたら戦力どころか邪魔しかできないんだけど。
ゲームの中でならいくらでも動けるんだけどな……。
「聖夜はどこやる? フォワード?」
「ん……、そうだな」
伊藤も緒川には一目置いているらしい。「好きなポジションやっていいよ」と俺とはぜんぜんちがう態度で言われて、「じゃあ――」と緒川は考えこんだあとで答える。
なんでか伊藤じゃなくて隅っこにいた俺の目を見つめて。
「フォワードやろうかな。そしたら、夏稀にたくさん応援してもらえるよね?」
……ん? とその場にいた全員が思ったはずだ。なんで俺?
「え? え、っと……」
? という視線がたくさん俺に向けられる。俺だってそうだ。緒川がなんでそんなことを言うのかわからない。
フォワードをやったら俺にたくさん応援してもらえる?
……そりゃ、緒川のことなら応援するけど。それでフォワードやりたがるって――なんで?
「おぉ、そうだそうだ」
離れたところでミーティングを見守っていた矢崎がずかずか俺の横に来る。そしてばしっと背中を叩いてきた。俺はよろける。
「応援だって立派な仕事だからな。ちゃんと声出せよ、綿辺!」
「は、はい……」
「よし、じゃあ緒川はフォワードで決まりとして――」
待っているのが面倒になったのだろう、矢崎は伊藤のところへいって「ほかはどうだ」と問いかける。伊藤は運動な得意なやつから順当に振りわけていって、それに除外された俺たち応援団が見守る中試合がはじまった。
緒川は驚くほどサッカーが上手かった。
ドリブルが上手い。相手の逆をつくのが上手い。難なく敵陣をすりぬけていって、
開始、一分。
見事なハットトリックを決めていた。
「うぉ……」
コートの外で見ていた俺の口から言葉にならない声が漏れる。初めて見た、ハットトリックなんて。
シュートを決めた緒川の周りに敵味方関係なくクラスメイトたちが集まっていく。「なんだよいまの!」「緒川、サッカーやってたの?」「サッカー部入れよ!」と興奮したように口々に言われて、緒川は――
――緒川は、みんなのことを完全に無視して俺を見ると。
にこ、と笑って手を振ってきたのだった。
「え、あ、はい……?」
反射的に手を振りかえす俺。
それを確認すると緒川は「いや、偶然だよ」とみんなに向けて謙遜しはじめる。彼が手を振ってきたのは俺の見間違いかと思うくらい、自然に。
「いま、緒川くん綿辺くんに手振ってきたよね……?」
「……う、うん……たぶん……?」
隣で試合を見ていた田村がこそっと言ってくる。それで見間違いじゃないことはわかったけれど。
「なんか緒川くんって綿辺くんのこと気に入ってる? なんで?」
「……そんなことないだろ」
「え、でも」
「緒川はみんなにやさしいんだって」
そうだ。これはきっと、サッカー(というか運動全般)が苦手でクラスの輪に入れない俺を気にかけてやってくれているだけだ。俺のことを気に入ってるなんてそんなはず。
そのあとも緒川は見事なチームプレイで得点を決めた。
緒川ってほんとにすごいんだな、と俺はあらためて感動した。
シュートを決めるたびに俺のほうを見て手を振ってくれるのは、なんというか、こそばゆかったけど。
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