14 / 24
第十話 ペンギン、情けをかける(情けは人のためならずって話) その2
しおりを挟む「一体何があったんだね」
「いや実はね、この子がスットロさんに薬草を売ってたんだけど――」
「そうなんです。あたしがスットロさんに薬草を売ってたんです」
理由を聞いてきた名主に、仲買商の男が説明を始めたが、そこに割り込むようにデミが答えた。
「それで解毒作用のあるこの薬草と交換に、薬草の目利きを教えてもらってたんです、スットロさんに。雑草も混ざってるかもしれないけど良かったらどうぞ、って」
デミは“交換”というところを強調する。
「交換って……これはけっこう高級な物なんだよ」
納得しがたい表情の仲買商の男に、デミは首を振りながら答えた。
「高級な品だからこそです。今日は麻袋一袋をおじさんにタダであげて、損したって思うかもしれないけど、でもそれはあたしの知識としてずっと残ります。そしたら今度はずっとこの高級薬草を採る事ができるから、むしろおじさんには感謝してるんです」
「デミ……」
詐欺師の薬師は言葉も出ないようだ。
「フフフ……そうだな、ウチはスットロさんの薬には世話になってるし。な、兄貴」
「ハハハ、デミには困ったもんだ。紛らわしい事しちゃだめだぞ」
そういってシルベスタは太い腕をつかってデミの頭をなでた。
デミもシルベスタもアーノルドも、なんてお人好しなんだ。
そんな甘ちゃんじゃ、この世知辛い世の中騙され続けることになるぞ。
それに、そんなんじゃこの詐欺薬師のオヤジも改心しないぞ。
オレは心の中で毒つく。
「ペンペン、お前人の言葉がわかるの? 」
「お前、号泣してるよ」
いかん心の汗が……、でも、エエ話やな~。
それに、そういうジョシュアもジョアンも半泣きだった。
すると反対隣に立っていたメグも半泣きで、ハンカチを差し出して涙を拭いている。
なんだよ、みんな泣いてんジャン。
まあ、心の中では毒ついてもやっぱり、オレも鬼じゃないし、みんなもあの薬師の娘の泣き顔は見たくないようだ。
みんながそれで良いって言うならよしとするか。
「まあ当事者が良いって言うなら、罪に問う事は無いけど、スットロさんにはもう少し話を聞かせてもらうよ」
なんとなく事情を察した名主も、事を荒立てない方向で話をまとめた。
名主に連れて行かれるスットロと、手を引かれたその娘がトボトボと広場を離れようとしている。
オレは娘を追いかけると、その寂しそうな肩に手をかけた。
「ペ、ペンギン? なんでここに? 」
娘は初めてオレに気が付いたようで、かなり驚いた顔をしている。
なぜここにペンギンがいるのか? それはオレも知りたい。気がついたら、近くの森に居たんだからな。
そんな娘の言葉を無視して、オレはジョシュアに買ってもらった飴を娘に差し出した。
娘に罪は無いからな。オレにできるのはこれくらいしかないけど、飴でも舐めて元気出せよ。
娘は突然差し出された飴を見て少し驚いたようだが、一口舐めて「甘い」と呟いた。
それを見ていた薬師が、半泣きの変な笑顔でオレに声をかけてきた。
「ピグエモン・・・・・・だったかな」
しまった、このオヤジはデミから、変な名前を聞いていたんだった。
「グエッ!? 」
「ピグ…エ…え? 変な名前」
突然、変な名前で呼びかけられて、オレは違うぞと言ったが、返事をしたと勘違いされたようだ。娘はオレの名前をピグエモンで認識してしまったらしい。
「ピグエモン、キミはやさしいね。良かったら娘の友達になってくれるかい? この子はまだ友達がいないんだ」
「そういえば薬師のおじさん、奥さんが亡くなって、つい最近こっちに引っ越してきたばかりだったな」
デミが独り言を呟いた。
飴をあげただけで友達と認められるなんて、いいのか?
相手はペンギンだぞ? 人間じゃないんだぞ?
まあ、オレとしては渡りに船だから、断る理由は無いけどね。
娘のために情けをかけてあげたら、自分に返ってきた。
情けは人のためならず、ってワケだ。うん、計算どおり。
「グワッ(わかった)」
「フフフ、ピグエモンよろしくね」
それをみていたジョシュアたち姉弟がオレに飛びついてきた。
「え、ずるいピグエモン、あたしたちも友達だよね」
「何言っちゃってるんだよ姉ちゃん、ポコペンって名前付けたの僕だよ、僕こそ友達だよ」
「何言ってるの、僕がペンペンの友達なんだよ」
三人がケンかを始めた。薬師の娘はあきれている。
ケンカをやめて、オレのために争わないで。……なんて寒いことは言いたくないが、お前らケンカする必要ないだろ。
友達って一人しかいないモンじゃないんだから。
そこに双子の妹アニーとエニーと従妹のエマが来てアリシャと何かおしゃべりを始めた。
アリシャもこの村で友達が出来たようで良かったな。オレもその内の一人だよね?
これで友達が四人出来たって、ことでいいのかな。
テレッテレッテッテ~~ンンンンン♪
どこかで何か効果音が聞こえたような気がした。
これでレベルアップしたってことになるのか?
これでレベル四かな。レベル百まで先は長いな。
ちなみにこの後、薬草は改心した薬師が適正価格で買い取ってくれるようになった。
ドクキエ草を含めると今までよりもだいぶ高い値段になって、デミや家族はすごくビックリしていたが、それはまた別の話だ。
0
あなたにおすすめの小説
異世界に召喚されたが「間違っちゃった」と身勝手な女神に追放されてしまったので、おまけで貰ったスキルで凡人の俺は頑張って生き残ります!
椿紅颯
ファンタジー
神乃勇人(こうのゆうと)はある日、女神ルミナによって異世界へと転移させられる。
しかしまさかのまさか、それは誤転移ということだった。
身勝手な女神により、たった一人だけ仲間外れにされた挙句の果てに粗雑に扱われ、ほぼ投げ捨てられるようなかたちで異世界の地へと下ろされてしまう。
そんな踏んだり蹴ったりな、凡人主人公がおりなす異世界ファンタジー!
美人同僚のおまけとして異世界召喚された私、無能扱いされ王城から追い出される。私の才能を見出してくれた辺境伯様と一緒に田舎でのんびりスローライ
さら
恋愛
美人な同僚の“おまけ”として異世界に召喚された私。けれど、無能だと笑われ王城から追い出されてしまう――。
絶望していた私を拾ってくれたのは、冷徹と噂される辺境伯様でした。
荒れ果てた村で彼の隣に立ちながら、料理を作り、子供たちに針仕事を教え、少しずつ居場所を見つけていく私。
優しい言葉をかけてくれる領民たち、そして、時折見せる辺境伯様の微笑みに、胸がときめいていく……。
華やかな王都で「無能」と追放された女が、辺境で自分の価値を見つけ、誰よりも大切に愛される――。
異世界に召喚されて2日目です。クズは要らないと追放され、激レアユニークスキルで危機回避したはずが、トラブル続きで泣きそうです。
もにゃむ
ファンタジー
父親に教師になる人生を強要され、父親が死ぬまで自分の望む人生を歩むことはできないと、人生を諦め淡々とした日々を送る清泉だったが、夏休みの補習中、突然4人の生徒と共に光に包まれ異世界に召喚されてしまう。
異世界召喚という非現実的な状況に、教師1年目の清泉が状況把握に努めていると、ステータスを確認したい召喚者と1人の生徒の間にトラブル発生。
ステータスではなく職業だけを鑑定することで落ち着くも、清泉と女子生徒の1人は職業がクズだから要らないと、王都追放を言い渡されてしまう。
残留組の2人の生徒にはクズな職業だと蔑みの目を向けられ、
同時に追放を言い渡された女子生徒は問題行動が多すぎて退学させるための監視対象で、
追加で追放を言い渡された男子生徒は言動に違和感ありまくりで、
清泉は1人で自由に生きるために、問題児たちからさっさと離れたいと思うのだが……
善人ぶった姉に奪われ続けてきましたが、逃げた先で溺愛されて私のスキルで領地は豊作です
しろこねこ
ファンタジー
「あなたのためを思って」という一見優しい伯爵家の姉ジュリナに虐げられている妹セリナ。醜いセリナの言うことを家族は誰も聞いてくれない。そんな中、唯一差別しない家庭教師に貴族子女にははしたないとされる魔法を教わるが、親切ぶってセリナを孤立させる姉。植物魔法に目覚めたセリナはペット?のヴィリオをともに家を出て南の辺境を目指す。
通販で買った妖刀がガチだった ~試し斬りしたら空間が裂けて異世界に飛ばされた挙句、伝説の勇者だと勘違いされて困っています~
日之影ソラ
ファンタジー
ゲームや漫画が好きな大学生、宮本総司は、なんとなくネットサーフィンをしていると、アムゾンの購入サイトで妖刀が1000円で売っているのを見つけた。デザインは格好よく、どことなく惹かれるものを感じたから購入し、家に届いて試し切りをしたら……空間が斬れた!
斬れた空間に吸い込まれ、気がつけばそこは見たことがない異世界。勇者召喚の儀式最中だった王城に現れたことで、伝説の勇者が現れたと勘違いされてしまう。好待遇や周りの人の期待に流され、人違いだとは言えずにいたら、王女様に偽者だとバレてしまった。
偽物だったと世に知られたら死刑と脅され、死刑を免れるためには本当に魔王を倒して、勇者としての責任を果たすしかないと宣言される。
「偽者として死ぬか。本物の英雄になるか――どちらか選びなさい」
選択肢は一つしかない。死にたくない総司は嘘を本当にするため、伝説の勇者の名を騙る。
神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします
夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。
アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。
いわゆる"神々の愛し子"というもの。
神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。
そういうことだ。
そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。
簡単でしょう?
えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか??
−−−−−−
新連載始まりました。
私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。
会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。
余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。
会話がわからない!となるよりは・・
試みですね。
誤字・脱字・文章修正 随時行います。
短編タグが長編に変更になることがございます。
*タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。
【長編・完結】私、12歳で死んだ。赤ちゃん還り?水魔法で救済じゃなくて、給水しますよー。
BBやっこ
ファンタジー
死因の毒殺は、意外とは言い切れない。だって貴族の後継者扱いだったから。けど、私はこの家の子ではないかもしれない。そこをつけいられて、親族と名乗る人達に好き勝手されていた。
辺境の地で魔物からの脅威に領地を守りながら、過ごした12年間。その生が終わった筈だったけど…雨。その日に辺境伯が連れて来た赤ん坊。「セリュートとでも名付けておけ」暫定後継者になった瞬間にいた、私は赤ちゃん??
私が、もう一度自分の人生を歩み始める物語。給水係と呼ばれる水魔法でお悩み解決?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる