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第十六話 白馬の王子様じゃなくって白馬に引きずられるペンギン
しおりを挟む崖をずるずる滑り降りると、アニーとエニーが手や足に擦り傷を作って泣いていた。
エマは泣いてはいないけど、双子が泣いているのでつられて泣きそうになっている。
「ペンペン・・・・・・?」
オレが三人に近づいていくと、エマが真っ先に気がついて、なんだかキョトンとした顔をしていた。
まあこんな森の中に自分の家のペットがいたらびっくりするわな。
それに気がついて双子の娘も驚いたように泣き止んだ。
オレはまず、泣いていた双子のところに行って腕や足の擦り傷を見た。
その他多少の打ち身もあったが、二人とも骨折とか大きな怪我ではなさそうだ。
ついでエマの様子を見てみる。やはり打ち身はあるみたいだが、それだけで擦り傷もなさそうだ。
オレはなんて声をかけていいかわからなかったが、三人とも半べそだったので励ましてやろうと、エマの頭に手を置いて、声をかけてやった。
「グエ~(よく頑張ったな)」
何を探して頑張ったのかさっぱり判らないけど、エマが双子を励ましてここまで来たのはよく判ってる。
まあ言葉は通じないが、気は心ってやつだ。
「ペンペ~~~~ン~~~ッ!」
突然目に大粒の涙を浮かべたと思ったら、大きな声で泣き出してオレに抱きついてきた。
なぜ泣く?
褒めてあげたのに。
やはり人間嫌いでコミュ症だったオレには理解できんな。
と思っていたら、双子まで抱きついて泣き出した。
あっ、もしかしてオレの気付かない場所に怪我をしていてそこが痛むのか?
内臓が怪我をしているのか? ふむ、そうに違いない。
だが弱ったな。内臓の破裂とかだとオレの手に負えないぞ。
生前のオレならツバでもつけときゃ大抵の怪我は治ったもんだが、なんかいい方法ないかな。
……そうだな、あいつに頼むかなぁ。来てくれるかどうかわからんが。
オレは、抱きついて泣き続ける三人娘はそのままに、幻獣を呼び出すべく詠唱を行う。
「ガーガー…略…(獅子と永遠に闘う運命に有る草原の勇者、清らかな少女の守護者ユニコーンよ。我声が聞こえたならば、その姿を現し我願いを聞き入れたまえ)」
唱えた後、暫くそのまま様子を見る。
三人娘は泣き続ける。
周囲に変化はない。やはり幻獣ユニコーンは男、ってかオスの呼びかけには出てこないか……。
と半ばあきらめかけたとき、不意に背後から野太い声がかけられた。
『オレ様を呼んだのは貴様か……』
振り向くとそこには、長い鬣、額に一本角を生やした白馬、ユニコーンが不機嫌そうな面をしてこちらを睥睨している。
こいつは回復魔法が使えるらしいから、契約できれば回復し放題になる、便利な幻獣だ。
「グエー…略…(ああ、こんなにすぐに来てくれるとは思わなかった。よかった。実はお前と契約を――)」
『は? オレ様はたまたま近くにいただけだ。それをなんだ、キサマが? 汚いオスの分際でオレ様と契約!? ハッ、バカも休み休みに、ペンギンの居候が飯のお代わりをするみたいに遠慮しながら言え』
なぜオレのメシ事情を知ってる?
お前と契約したいんだと言おうとしたが、そのすべてを言わせずユニコーンは、はき捨てるように言った。
やはりこのバカ馬は女の言うことしか聞かないようだ。
「ペンペンがお馬さんとお話してる」
「ペンペンすごい……」
「エニーも話したい……」
三人娘はユニコーンが現れてオレと話しているのをみて、驚いて泣き止んでいた。
なんかオレ、ユニコーンと話をして尊敬されてるみたいだけど、ホントは単にバカにされてるだけなんだけどね。三人娘が言葉がわからないようでよかった。
「白馬が来たって事は、ペンペンは白馬の王子様? 」
「王子様? すごいね~」
三人娘が改めてオレに抱きつく。
「でも想像してた王子様とちょっと違うね」
そりゃそうだろ。ペンギンはさすがに白馬の王子様にはなれないよ。
そんなことよりも、ここはバカにされただけで引き下がるわけにはいかない。
普通、男の呼びかけには絶対、ぜったい、ゼ~~ッタイに出てこないはずの女好きのユニコーンだが、それでも姿を現したということは、この三人娘が気になっているはず。
ならば少しは可能性が有るはずだ。
『オレと契約する必要は無いんだ、ここにいる三人の娘と契約してくれればいいんだ』
オスのオレと契約しなくとも、この女の子三人と契約すればいいのだ。
ユニコーンは、フンフンと三人の顔に鼻を近づけて匂いを嗅いでいる。
ウーン、人間がやったら間違いなくヘンタイって呼ばれそうだな。
だが三人娘は喜んで、くすぐったいとか言って笑ってる。
『フン……まあ、いいだろう。契約はしないが、今日は特別に何か願いを聞いてやろう。オレ様を呼び出したのは何か願いがあったのだろう』
おお、お許しが出ました。
やはりユニコーンは女好き、しかも清らかな少女しか興味が無い変態だってのはホントだったな。
その時ユニコーンがギロリとオレを睨んだ。
『何か無礼な事を考えているのではないか』
「ハハ、グエー(はは、まさか)」
おおっと、このユニコーン、人の、いやペンギンの心が読めるのか、気をつけねば。
『願いは、この三人の怪我を治して欲しいんだ、オレには分からないがどこか怪我をしてるらしいんだが、お前だったらその角で怪我や病気を治せるんだろ』
ユニコーンの角には、あらゆる病気や怪我を治す力が宿っていると言われている。それを見込んでユニコーンを呼び出したのだ。
『怪我? 』
ユニコーンは三人の匂いを嗅ぎながら怪訝な顔をする。
『ああ、そのかすり傷と内臓に大きな怪我が――』
かすり傷と、内臓に大きな怪我をしてるらしいからそれを治してくれ――、と言う前に、ユニコーンは額の一本角を三人に向けている。
その角が淡い光を纏ったかと思うと三人のかすり傷が瞬く間に消えていく。
『怪我など何処に有るのだ』
ユニコーンがにやりと笑う。
うっわ~、キザな野郎だ。気色悪っトリハダたちそう……鳥だけに。
だがそのキザな行動も三人娘には通じない。何が起こったのか分からないようにキョトンとしている。
『プッ、気づいてもらえないようだ――テッ!? 』
ユニコーンは口をへの字にして前脚をオレの頭の上に落としてきた。
三人娘は、理由は分からないながらも怪我が治ったことに気がついたようで、不思議そうな顔で自分の手足を見ていた。
仕方なく、オレが三人娘に声をかけて、ユニコーンの体をペシペシとたたいてあげた。
「グエー……略……(怪我を治したのはこいつだよ)」
言葉が通じた訳では無いと思うが、それでも怪我を治したのがユニコーンのおかげだと分かったようで、「お馬さん、ありがとう」とお礼を言っていた。
ユニコーンもお礼を言われてまんざらでもない様だ。
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