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第二十話 Side 黒狼
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そぼ降る雨の中、黒い巨体を引きずる様に、数頭の狼の群れが森へと現れた。
『懐かしい匂いだな』
狼の群れは、なれた足取りで森へと入っていく。
雨は獣の匂いを洗い流す。匂いを追って狩りをする狼にとっては不利な状況ではあるが森になれた狼にとっては関係なかった。
『そこの斜面で地肌がむき出しになった場所は、よくモグラやネズミが巣を作る。穴があったら覗いてみるがいい』
ひときわ巨体なリーダーと思われる狼が命じると、待ってましたとばかりに両脇にいた若い二頭の固体が駆け出していく。
『見えたよ』
『でもずいぶん奥にいるね、脚が届かないや』
穴を見つけた若い双子の狼たちは必死になって穴を広げようと土をかき出すが、そう簡単に穴が広がるものではない。巣穴の奥にいた獣はさらに奥へと逃げてしまった。
『見えなくなっちゃった』
『チエッ、お腹すいたな』
そう言って情けない顔を上げた次の瞬間、彼らの耳に獣の短い絶叫が聞こえ、すぐに消えた。
声がした方を見ると、彼らよりも一回り大きな灰色の狼が、少し離れた所でモグラと思しき獲物を咥えて此方を睨んでいた。
『巣穴の出入り口は一箇所じゃないのよ』
口に咥えた獲物を若い固体に放ってよこして、軽く説教をする。この固体だけは身体の色が黒というよりも灰色に近い。
どうやら捕まえたモグラは、若い固体に追い立てられて、別の穴から飛び出したところを灰色狼に捕まったらしい。
『だがそれは囮で、本命はこっちだ』
その声に若い双子の狼が反対方向を振り向くと、リーダーの狼が、別のモグラを前脚で抑えていた。
どうやら二匹のモグラは別々の穴から逃げ出そうとしていたらしい。
『あら、そっちが囮でこっちが本命よ。だってこっちの方が大きいもの』
胸を張って自慢げに言うリーダー狼に対して、カチンときたのか灰色狼が棘のある物言いで反論する。
『ふざけた事を、こっちの方が大きい』
『あら、アンタは目が節穴のようね。私が捕まえたのはオスよ』
『お前は何も分かっちゃいない。そのオスはメスを逃がすためにワザと捕まったんだ。だから本命はこっちだ』
『バカね。オスごときにメスを守ろうだなんて気概があるわけないじゃない』
灰色狼はおかしなことを言うとばかりにせせら笑う。
『おかしなことを言う、メスなんてオスが守らないとすぐ死んじまうだろ』
『ちゃんちゃらおかしいわ。守られたことなんてあったかしら』
『今まで散々守ってやっただろ、この間も我が守ってやった。狩った獲物を分けてやった事もあるし、忘れたわけではあるまい』
『役割分担でしょ、私が獲物を見つけてあげたんじゃない』
話が横道にそれたことにも気付かず、みるみる険悪な雰囲気になっていく灰色狼とリーダー狼。それを見て若い双子の狼が情けない顔をする。
『父ちゃんも母ちゃん今日も熱々だね』
『ケンカするほど仲良しこよし? だね』
子供たちのあきれた声が聞こえたのか、母親狼も父親狼も我に返ったようだ。
『『フンッ! 』』
リーダー狼は足元にあった獲物を双子狼に放ってから、ついて来いといって尻を向けた。
『この先に洞窟がある。四頭でねぐらにするにはちょうどいい大きさだ』
この森はリーダー狼にとっては生まれ育ったかつて知ったる我が森だった。
『ふむ、あいつはまだここにいるかな』
小さく口角をあげ、リーダー狼は巨体をゆすって森を奥へと入っていった。
その様子を少し離れたところから見かけた男がいた。
「大変だ、あんな大きな狼がいるなんて知らなかったぞ」
雨の日で良かったと男は思った。
もし晴れた日であれば、風に乗った匂いで気付かれたかもしれない。また雨音が男の足音を消さなければこっそり逃げることも出来なかっただろう。
とにかく村に知らせなければ、と男はすぐに村にかけ戻っていった。
『懐かしい匂いだな』
狼の群れは、なれた足取りで森へと入っていく。
雨は獣の匂いを洗い流す。匂いを追って狩りをする狼にとっては不利な状況ではあるが森になれた狼にとっては関係なかった。
『そこの斜面で地肌がむき出しになった場所は、よくモグラやネズミが巣を作る。穴があったら覗いてみるがいい』
ひときわ巨体なリーダーと思われる狼が命じると、待ってましたとばかりに両脇にいた若い二頭の固体が駆け出していく。
『見えたよ』
『でもずいぶん奥にいるね、脚が届かないや』
穴を見つけた若い双子の狼たちは必死になって穴を広げようと土をかき出すが、そう簡単に穴が広がるものではない。巣穴の奥にいた獣はさらに奥へと逃げてしまった。
『見えなくなっちゃった』
『チエッ、お腹すいたな』
そう言って情けない顔を上げた次の瞬間、彼らの耳に獣の短い絶叫が聞こえ、すぐに消えた。
声がした方を見ると、彼らよりも一回り大きな灰色の狼が、少し離れた所でモグラと思しき獲物を咥えて此方を睨んでいた。
『巣穴の出入り口は一箇所じゃないのよ』
口に咥えた獲物を若い固体に放ってよこして、軽く説教をする。この固体だけは身体の色が黒というよりも灰色に近い。
どうやら捕まえたモグラは、若い固体に追い立てられて、別の穴から飛び出したところを灰色狼に捕まったらしい。
『だがそれは囮で、本命はこっちだ』
その声に若い双子の狼が反対方向を振り向くと、リーダーの狼が、別のモグラを前脚で抑えていた。
どうやら二匹のモグラは別々の穴から逃げ出そうとしていたらしい。
『あら、そっちが囮でこっちが本命よ。だってこっちの方が大きいもの』
胸を張って自慢げに言うリーダー狼に対して、カチンときたのか灰色狼が棘のある物言いで反論する。
『ふざけた事を、こっちの方が大きい』
『あら、アンタは目が節穴のようね。私が捕まえたのはオスよ』
『お前は何も分かっちゃいない。そのオスはメスを逃がすためにワザと捕まったんだ。だから本命はこっちだ』
『バカね。オスごときにメスを守ろうだなんて気概があるわけないじゃない』
灰色狼はおかしなことを言うとばかりにせせら笑う。
『おかしなことを言う、メスなんてオスが守らないとすぐ死んじまうだろ』
『ちゃんちゃらおかしいわ。守られたことなんてあったかしら』
『今まで散々守ってやっただろ、この間も我が守ってやった。狩った獲物を分けてやった事もあるし、忘れたわけではあるまい』
『役割分担でしょ、私が獲物を見つけてあげたんじゃない』
話が横道にそれたことにも気付かず、みるみる険悪な雰囲気になっていく灰色狼とリーダー狼。それを見て若い双子の狼が情けない顔をする。
『父ちゃんも母ちゃん今日も熱々だね』
『ケンカするほど仲良しこよし? だね』
子供たちのあきれた声が聞こえたのか、母親狼も父親狼も我に返ったようだ。
『『フンッ! 』』
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『この先に洞窟がある。四頭でねぐらにするにはちょうどいい大きさだ』
この森はリーダー狼にとっては生まれ育ったかつて知ったる我が森だった。
『ふむ、あいつはまだここにいるかな』
小さく口角をあげ、リーダー狼は巨体をゆすって森を奥へと入っていった。
その様子を少し離れたところから見かけた男がいた。
「大変だ、あんな大きな狼がいるなんて知らなかったぞ」
雨の日で良かったと男は思った。
もし晴れた日であれば、風に乗った匂いで気付かれたかもしれない。また雨音が男の足音を消さなければこっそり逃げることも出来なかっただろう。
とにかく村に知らせなければ、と男はすぐに村にかけ戻っていった。
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