ゼニスは視界の隅で笑う~争いはバトルで裁かれる、監視社会の現代版コロッセオ~

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第71話:撮影クルー

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((──遥、気が付いてる?))

「えっ!?なにが?」

((──調停センターから、黒のワゴン車がずっと
  タクシーの後を付いてきていたよ。))

「あっ、そうなの?」

((──うん。管理官が何かを仕掛けてくる可能性もあるから、
  気を付けた方がいいかもね。))

「うん、そだね。用心はしておこう。」

ヒヨリナに向けて歩き出すと、
うしろから男性が声を掛けてくる。

「七瀬さん。」

振り返ると、
黒のパーカーに黒いパンツ、
黒一色で統一された服装に身を包んだ
男性2人と女性1人が立っていた。

「わたしですか?」

3人に向け声を発すると、
1人の男性が近づいてくる。

「管理官から、お話は伺っていると思います。
 私共は、七瀬さんの撮影を担当させていただくクルーになります。
 以後、お見知りおきを。」

「あっ、そんなこと言ってましたね。」

彼は名刺を差し出し、
丁寧な自己紹介をしてきた。

「撮影のリーダーを務める佐藤です。
 七瀬さん、宜しくお願い致します。」

「はい、ご丁寧にありがとうございます。
 七瀬遥です、よろしくお願いします。」

「七瀬さんの日常を撮影させていただきます。
 その後に編集をして、専用チャンネルで放送する形になります。」

「なるほど、もしかして調停センターから付いてきてました?」

「はい。急に出掛けると聞かされまして、
 急いで準備をしたものでご挨拶が遅れてしまいました。
 調停センターを出る前にお伝えしておけばよかったですね。」

「いえ、大丈夫ですよ。」

((撮影クルーだったみたいね。管理官の差し金は、ふふっ))

((──うん。遥に危害を加えるような輩でなくて良かった。))

((その辺も用心はした方がいいのかな?))

((──用心する事に越したことはないからね。))

((うん、わかった。))

「七瀬さんは、いつも通りにしてくだされば、大丈夫ですので。
 撮影されているといった意識はなさらないでくださいね。」

「はい、わかりました。いつも通りですね。」

佐藤を始めとするクルーに会釈をし、
ヒヨリナへと歩みを進める。

((ゼニスと話すときは、脳内の方がいいよね?
  いつも通りだと、独り言の多い人みたいになるでしょ、ふふふ))

((──うん。そうだね。
  遥が独り言の多い人だと思われても良いなら別だけど。))

((う~ん、どっちでもいいかな。))

((──遥らしいね。))

ヒヨリナへ入り、
エスカレーターに乗り2階へと向かう。

後を振り返ると、
小型のカメラを持ち、撮影しているのが見えた。

((めっちゃ、撮影されてるんですけど~。))

((──うん。))

((なんか、芸能人になった気分、ふふっ))

((──ダークヒロインだからね。))

((うん、なんか微妙だよね......ダークヒロインってさ。))

((──うん。遥のイメージとはかけ離れているかもね。))

((でしょ。なんだろ......もっと明るい感じがよかったな。))

((──そうだね。でも、遥の明るいイメージのギャップを狙うと
  ダーク寄りにするのは必然かもね。))

((なるほど、普段は白で、調停は黒みたいな?))

((──うん。普段と調停は別物といったところを
  狙っているんだろうね管理官は。))

2階のフロアに到着し、
以前ワンピースを購入したお店へと向かう。

((前にワンピ買ったときは、高くて買うか迷ったけどさ......
  今は無料だから、値段気にしなくていいもんね。ふふっ))

((──うん。))

店内へ入り、
トップスやワンピースなどを見て回る。

((う~ん、どうしようかな。))

大きめの花柄が描かれた透け感のあるブラウスを手に取り、
広げてみる。

「これ可愛いね。」

((──遥、独り言出てるよ。))

((あっ、そうだった。))

((──遥に似合う確立84%だよ。))

((えっ、うん、残り16%が気になるよ、わたしは。))

((──......))

((でた、無言。ふふ))

((──遥が所持している服との親和性の問題だよ。))

((おぉ~、いいこと言うね~。))

((──うん。))

((じゃ~、このブラウスに合わせたパンツも買えばいいよね?))

((──そうだね。))

ブラウスを手に持ったまま、
パンツコーナーへと移動。

「どんなのが合うかな~......」

((──遥、声出てるよ。
  シンプルなスカートやクロップドパンツが合わせやすいよ。))

((ついついね、忘れちゃうんだよ。うふふ))

((──うん。いつもの遥だね。))

((なにそれ~、呆れてるなゼニス。))

((──......))

((無言は肯定でしょ。ホントひどいな~。))

「あっはは、もう。」

((──それが、遥なんだよね。))

「なんだろ、独り言の人って思われてもいいような気がする。」

((──遥らしい考えだね。))

「うん。でしょ。」

ゼニスと会話を楽しみながら、
スカートとクロップドパンツを1枚ずつ手に取る。

その時、
撮影クルーの佐藤さんが声を掛けてきた。

「七瀬さん、独り言多いですね。」

「はい、わたし頭で考えていることが、
 口に出ちゃうタイプなんですよね。」

「七瀬さんの特徴ということですね。
 教えてくださり、ありがとうございます。」

「いえいえ、変な奴だと思われないですかね?」

「大丈夫です。七瀬さんの楽しそうな姿が撮影できていますし、
 編集して良い部分を放送するので、ご心配なさらないでください。」

「ありがとうございます。」

佐藤さんにお礼を伝え、
会計へと向かう。

スマホサイズの端末で会計をサッと済ませ
店内を後にした。
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