ゼニスは視界の隅で笑う~争いはバトルで裁かれる、監視社会の現代版コロッセオ~

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第72話:ショッピングの余韻

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「せっかくだからさ、買った服に合うような靴も探そっ♪」

((──楽しそうだね、遥。))

((うん、そりゃ楽しいよ~。
  値段気にしないで買い物できるんだもん。ふっふふ))

((──うん。))

((前に厚底のサンダル買ったお店よくない?))

((──うん。品揃えも豊富だし、良いと思うよ。))

靴屋さんに到着すると、
大人びたサンダルがディスプレイされていた。

「ふ~ん、大人っぽい?感じ......
 歩いたらコツコツする系の靴持ってないな~。」

((──そうだね。
  遥は、スニーカーとサンダル1足ずつしか所持してないからね。))

((そうそう、スニーカーも1足買っちゃうか。ふふ))

((──うん。))

華奢なストラップが印象的な、
マットな質感の黒いハイヒールサンダルが目に入った。

「あっ、この黒のサンダル、大人っぽくて可愛い!
 ヒールは高いけど、ストラップがしっかりしてるから歩きやすそうかも。」

((──スムースブラックのサンダルだね。
  遥の足首のラインを強調し、
  かつ、先ほど購入したパンツとの親和性も90%を超えるよ。))

((うんうん、さすがの分析力だね。))

「あとは、ハイカットのスニーカー欲しいかも。」

((──うん。良い選択だね。))

視線の先にあるのは、
有名ブランドのハイカットスニーカー。

燃えるような赤と、
引き締まった黒のコントラストが印象的だ。

「これ、めっちゃカッコいいね!」

((──うん。履き心地と動きやすさを兼ね備えたスニーカーだね。
  商品レビューも星4.5と、かなり高評価だよ。))

「おぉ~、これにする。」

((──うん。))

2足分の箱を重ねて持ち、
会計を端末で手早く済ませる。

「調子に乗って買いすぎたかな......
 荷物多すぎだよね。あっはは」

((──可能ならサポートしたいけど、
  実体化はまだできないから。申し訳ない。))

((あはは、いつまで待ってもできないやつね。))

((──......))

((ありゃ、すねちゃったかな。ふふ))

その時、
後方で撮影を指示していた佐藤さんが近づいてきた。

「七瀬さん、よければお荷物お持ちしますよ。」

「えっ、いいんですか?」

「もちろんです。良いシーンを撮影させていただいているので、
 これくらいは遠慮なくお申しつけくださいね。」

そう言うと、
服屋さんと靴屋さんで購入した袋を手に取り
撮影クルーの元へ戻る。

((荷物持ってくれたよ、佐藤さん。))

((──良い仕事するね、佐藤。))

((佐藤さんね、ふふっ))

((──撮影クルーの佐藤。))

「あっはは~」

((──遥が楽しそうなのは、とても良い傾向だね。))

((うん。ホント楽しいよ。))

下りのエスカレーターに乗り、
1階へと降りる。

そのまま、
何度か購入しているケーキ屋さんに立ち寄った。

((ゼニスは、なんか食べたいものある?))

((──遥が食べたいものを買えばいいよ。))

((とか言って、チョコ食べたがるくせに。))

((──......))

((ふふっ、ゼニスが好きなものも買おう。))

((──うん。))

ケーキ屋さんの前で、
ショーケースを覗き込む。

((どのチョコケーキがいい?))

((──ザッハトルテが気になるかな。))

((ほぉ、なるほど。))

((──チョコレート風味のスポンジに
  溶かしたチョコレートをコーティングした、
  オーストリアを代表するケーキで......))

((スト~ップ、ゼニス辞書。
  だって説明長いんだもん、ふふ))

((──......))

「あっはは~」

((また、すねたね。))

((──いじける、ひねくれるといったニュアンスに近い。
  一般的にはムッとして口をきかなくなる行動。
  私は、口がないためそのような言葉は当てはまらない。))

「はいはい、わかってるよ~。」

ケーキをいくつか選び、
店員さんに声をかけた。

「すいません。
 ザッハトルテ4個とティラミスを4個お願いします。
 箱は2つにわけて欲しいんですけど、大丈夫ですか?」

店員さんは、
表情を一切変えることなく返答する。

「はい、ザッハトルテ4個、ティラミス4個ですね。
 ケーキは何個ずつお分けしましょうか?」

「ザッハトルテ3個とティラミス3個を一緒で、
 残りの1個ずつは同じにしてください。」

「はい、かしこまりました。」

ショーケースからケーキを取り出し、
黙々と箱に詰める。

会計を済ませて、
ケーキの入った箱を2つ受け取った。

((──ケーキの個数が多かったね。))

((うん、佐藤さんたちにあげようと思ってさ。))

((──遥らしい配慮だね。))

撮影クルーの方に向かい、
声を掛けた。

「佐藤さん、荷物持ってくれたお礼です。
 みなさんで、召し上がってくださいね。」

佐藤さんは、
こちらに視線を向け口を開く。

「七瀬さん、お気遣いいただきありがとうございます。」

「いえいえ、こちらこそありがとうございます。」

ケーキの箱を手渡した。

((買い物も楽しめたし、帰ろっか。))

((──うん。))

「佐藤さん、今日は帰りますね。」

「わかりました、七瀬さん。
 私共も戻って編集作業をします。」

佐藤さんはそう言うと、
外へと向かって歩いて行った。

「どんな感じに編集されるのか楽しみだね。うふふ」

((──うん。))

タクシー乗り場へ向かい、
先頭に停車しているタクシーに乗り込む。

ヒヨリナでの楽しいショッピングの余韻を残し、
タクシーは調停センターへと向けて走り出す。
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