ゼニスは視界の隅で笑う~争いはバトルで裁かれる、監視社会の現代版コロッセオ~

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第74話:トレーニングルーム

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部屋の中に、
朝日のような光が徐々に満ちていく。

手の込んだ照明システムのお陰で、
ゆっくり意識が覚醒する。

「ふぁ~......よく寝た~。でも、もう少し寝よう......」

布団を頭からかぶり、
照明を遮るように覆った。

((──おはよう、遥。))

覆いかぶさった布団の中で、
ゼニスの淡い光がゆらゆらしている。

「あっ......布団の中でもゼニスが光ってるね。あっはは」

((──うん。))

「布団かぶった意味......ふふっ」

((──遥の視界の中に常に表示されているから、
  物理的に防ぐ事はできないよ。))

「ですよね~......」

布団をめくり、
軽く伸びをしてから起き上がる。

「改めて、おはよう、ゼニス。」

((──うん。おはよう、遥。))

ベットから移動し、
コーヒーを淹れソファに座る。

「今日は体動かさないとね~。」

((──うん。))

「でもさ、よくよく考えたらスポーツウェア持ってないね。」

((──うん。デニム地のパンツが1枚、黒色のスキニーパンツが1枚、
  白と黒のボーダー柄のカットソーが1枚、
  USA-DE-PPONがついたパーカーが1枚、ワンピースが1枚
  花柄のブラウスが1枚、スカートが1枚、クロップドパンツが1枚、
  調停用の衣装が1枚、スニーカーが2足、サンダルが2足。))

「全部言うんだ、なんか恥ずかしいな、ふっふふ」

((──遥の事は、全て把握しているからね。))

「うんうん、さすがですよ、ゼニスさん。」

オープンクローゼットに視線を向け、
ハンガーに掛けた服を眺める。

「パーカーとデニムでいっか。
 ストレッチ効いてるから動きやすいしね。」

((──うん。))

コーヒーを飲み干し、
サッと着替えを済ませた。

「トレーニングできる場所って、どこにあるんだろ?」

((──トレーニングルームは、1階にあるよ。))

「そうなんだ。」

((──うん。))

「じゃ~、1階まで降りようか。」

部屋を出て、
エレベーターに乗る。

「1階って、リングとか観客席じゃないの?」

((──リングに向かう通路の途中にあるよ。))

「そんなのあった?」

((──うん。))

「気が付かなかったな~。」

((──遥、ここだよ。))

通路を歩いていると、
『トレーニングルーム』と書かれたドアがある。

「ホントだ~、リングに向かう通路の途中にあったんだね。」

((──うん。))

ガチャリ、とドアを開けると、
パッと照明が点いた。

「誰も使ってないんだね。」

((──執行担当は、自治体の専属ではないから、
  調停がなければ基本的には滞在していないよ。))

「そんなこと言ってたね。じゃ~使い放題じゃん。」

((──うん。))

真新しく見えるトレーニング器具が、
整然と並んでいる。

「誰も使ってないんじゃないの?新品みたいじゃん。」

((──執行担当は、
  自治体のトレーニングルームで調整しないからね。))

「そうなんだ?」

((──うん。))

「誰が使うんだろうね?ふふっ」

((──そうだね。))

「わたしのために設置されたんだったりしてね。あっはは」

((──そうかもね。))

「いやいや、そんなわけないでしょ。怖いわ~。」

((──そうだね。職員の福利厚生のためじゃないかな。))

「なるほどね~、いい職場なのかもね。」

((──うん。))

トレーニング器具の間を進み、
奥に設置されたサンドバッグの前に立つ。

「なんか新品みたいに見えるから、
 蹴ってもいいのか考えちゃうね。」

((──気にしなくても良いと思うよ。))

「うん、そだね。」

サンドバッグを軽く蹴ってみると、
バシッ、と乾いた音が部屋に響く。

「うん、感触はいいね。」

((──うん。体の動きも良いね。
  強度を上げても問題はないよ。))

「OK。軽くウォーミングアップしてからだね。」

ストレッチを済ませ、
本格的にサンドバッグに向かい打ち込む。

バスン、ドシッ、という音と共に
サンドバッグが軋む。

((──遥、威力や速度も問題ないよ。))

「うん。」

小一時間ほどサンドバッグを打ち込んだところで、
額や首筋に汗が流れていた。

「ふぅ、思ったより疲れてないね。」

((──データ的にも、疲労度は蓄積されていないよ。))

「うん、体も軽いしね。いい感じ。」

((──とても良い傾向だね。))

「これなら、相手にもよるけど大丈夫かもね。」

((──うん。遥が力を発揮できるようにサポートは任せてね。))

「頼りにしてる。」

パーカーの袖で汗を拭い、
さらに10分ほどサンドバッグを打ち込む。

「痩せそう、あっはは」

((──今回の運動量を分析すると、
  約350キロカロリー消費していると推測できるよ。))

「思ったほどじゃないね、これくらいじゃ痩せないか。ふふっ」

((──うん。そうだね。))

「今日は終わりにしようかな。汗も流したいしね。」

((──うん。じっくり調整していこう。))

「だねっ。」

トレーニングルームを後にし、
部屋へと戻る。

シャワーで汗を流し、
バスローブに着替えソファに腰を下ろした。
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