ゼニスは視界の隅で笑う~争いはバトルで裁かれる、監視社会の現代版コロッセオ~

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第76話:サバイバル・レジスタンス開幕

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「なんか、前回の時より観客がざわざわしてる感じするね。」

((──うん。大型モニターに、
  今までの調停とは異なる表示がされているからだろうね。))

「なるほどね......」

リング上部に設置されている大型モニターには、
『サバイバル・レジスタンス』についての説明が表示されていた。

「相手の表示は、整理番号4401、身長、体重と特技がボクシング......
 わたしは、『Haruka』って表示名なんだ。
 せっかくだし、カッコいいコードネーム考えてくれたら、
 よかったのにね。あっはは」

((──そうだね。))

大型モニターの表示が、
『1R:0.13』『2R:1.14』『3R:0.89』『12R:1.01』『15R:0.11』、
ラウンド数横の赤い数値が切り替わっていた。

「15Rって......長くない?1Rって3分だっけ?5分?」

((──モニターに表示された説明によると、
  1Rは3分、ラウンド間のインターバルは1分、
  基本は決着がつくまでとなっているよ。))

「わたしの体力が持つわけないじゃん。あはは」

((──そうだね。スタミナが尽きる前に勝てるようにサポートするね。))

「うん、頑張って3Rくらいかな?」

((──可能な限り早いラウンドで勝負を賭けよう。))

「OK、2Rまでに終わらせたいね。」

その時、
観客席の照明が落ち
リングと入場する通路のみが明るく照らされた。

サバイバル・レジスタンスの相手の入場に合わせ、
葬送曲のような静かな音楽が流れる。

音楽に合わせ静かな歩調で、
整理番号4401がリング中央へ向かう。

「入場曲とかあるんだ......でも、静かな音楽で不気味だよね。ふふっ」

((──うん。))

「わたしも、あんな入場曲なのかな?それなら、イヤだな~、あはは」

相手の通路の照明が消え、
赤や青など派手なレーザーに合わせ
アップテンポの音楽が流れる。

「これ、わたしの入場曲かな?」

((──うん。そうだろうね。))

立っている通路が照らされ、
光に導かれるようにリングへと進む。

リングに入ると、
整理番号4401の男性が鋭い眼光で睨んできた。

((うわぁ、めっちゃ怖いんですけど......))

((──大丈夫。落ち着いていこう。))

レフリーを担当するドローンが、
音もなくリング中央へ飛来する。

ホバリングをしたまま、
下部のカメラを動かし何か確認をしていた。

((赤いライト点滅しながら、旋回して青に変わったら開始だったよね?))

((──うん。))

ドローンは静かにリング上部へと移動し、
旋回をし始める。

((なんか、前回と違ってライト点滅してなくない?))

((──そうだね。))

ドローンがリング上部から、
両者の目線まで降りてくる。

その時、
ブー、という電子音と共に
ドローンが再び上に飛び上がった。

((えっ!?))

((──遥、危ない。))

整理番号4401は、
ドローンの動きに合わせ
右ストレートを放っていた。

「ぐっ......」

((──大丈夫、遥。))

右ストレートは、
的確に鳩尾を捉えていた。

リングに片膝をついてしまう。

((めっちゃ痛いかも......))

((──データ的には、そこまでダメージは負ってないよ。))

整理番号4401は、
追撃はしてこなかった。

((あぁ......油断した。))

((──うん。間合いを取ろう。))

リングに立ち上がり、
整理番号4401を見る。

ニヤリとしながら、
余裕の表情をしていた。

「ふぅ~......」

少し息を吐き、
しっかり構えを取り対峙する。

((もう、油断しないよ。))

((──うん。ポイント表示に切り替えるね。))

((うん、お願い。))

ゼニスはキューブ形態から、
ポイント表示へと切り替わる。

整理番号4401の左太ももに
ポイント表示がされた。

表示に合わせて、
右脚を振り抜く。

バシッ、という乾いた音と共に
右脚に確かな感触があった。

((これは、効いたかな?))

((──少し浅かったかも。ダメージ率13%と推測。))

((思ったほどじゃないね。))

整理番号4401は、
軽快なステップを踏み間合いを詰めてくる。

前蹴りで牽制をしながら、
整理番号4401との距離を保つ。

整理番号4401が左足を踏み込んだ瞬間、
ゼニスのポイントが4401の左太ももに表示された。

その一瞬を見逃さず、
再度、右脚を太もも目掛けて振り抜く。

整理番号4401が「ぐぁっ」と声を出し、
そのまま動きが止まった。

((これは、チャンス。))

((──畳みかけるよ、遥。))

((OK。))

ゼニスのポイントが、
左太もも、右脛、左脇腹、と目まぐるしく表示を変える。

それに合わせて、
的確にポイントを蹴り抜く。

整理番号4401は、
ガードを固め耐え続けている。

その時、
ブー、と電子音が響き
ドローンが両者の間に飛んできた。

((3分経ったのかな?))

((──うん。少し休もう、遥。))

ゼニスは、
いつも通りのキューブ形態に戻り
視界の中にぷかぷか浮いている。

コーナーには、
いつの間にか椅子が用意されていた。

椅子に座り、
ゼニスを見つめる。

((ゼニスのポインターいいね。ホント助かる。))

((──うん。少し息を整えよう、遥。))

「すぅ~......はぁ~......すぅ~......はぁ~......」

((──落ち着いてきたみたいだね。))

((うん。大丈夫そう。))

((──相手のダメージ予測は、52%といったところだよ。))

((半分くらいか......))

((──うん。リーチでは遥が有利だから、
  この調子で間合いを見誤らないようにしよう。))

((わかった。))

ドローンがリング中央へ、
整理番号4401も椅子から立ち上がり歩き始める。

((いこっか、第2R))

((──うん。))

椅子から立ち上がり、
リング中央へと歩き出す。

ゼニスは視界から消え、
ポインターへの準備をした。
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