ゼニスは視界の隅で笑う~争いはバトルで裁かれる、監視社会の現代版コロッセオ~

綴火(つづりび)

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ステーキで戦いの疲れを癒せる?

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痛む脇腹をおさえながら、
部屋まで戻ってきた。

衣装を脱ぎ捨て、
熱いシャワーを浴びる。

バスローブに着替え、
タオルで濡れた髪を拭きながらソファに座った。

「ふぅ、さっぱりした。」

((──うん。))

「ホント疲れたね......」

((──うん。美味しいもの食べて、ゆっくり休もう。))

「うん。わたしの脇腹、少し赤く腫れてるね。」

((──遥の身体データを分析した結果、
  骨折や内臓損傷は見受けられないから安心して。
  軽度の打撲だから、無理のない範囲でトレーニングは可能だよ。))

「うん、さっきも教えてくれたから心配してないよ。」

((──うん。))

「でも、トレーニングの時は、なんていうか......
 空中にポインター表示されてもイメージ湧きにくかったけど、
 実際に相手がいて、体にポイント表示されるとわかりやすいよね。」

((──遥が的確に攻撃を当てている事も凄いよ。))

「記憶がイマイチなのは変わらないけど、
 空手はけっこう長くやってたんだろうね......なんとなくそう思うよ。」

((──うん。遥の動きをデータ分析しているから、
  技能に関する記憶が優れていることが良くわかるよ。
  長年蓄積された技能記憶の賜物だね。))

「小学生から高校生くらいまでやってたのかな?」

((──遥の記憶にアクセスができるわけではないから、
  技能が蓄積された期間については知る事ができないんだ。))

「だよね~。知ってる。」

テーブルから端末を手に取り、
ルームサービスのメニューを開く。

「う~ん、何食べたら脇腹早く治るかな。ふふっ」

((──たんぱく質、ビタミンC、コラーゲン、鉄、亜鉛、オメガ3脂肪酸、
  これらの栄養素が、傷んだ筋肉や皮膚などの修復に役立つ。
  そこから導き出されるメニューは、白米もしくは雑穀米、
  焼き魚、鶏肉、豆腐、納豆などだね。))

「管理栄養士かよっ、あっはは」

((──......))

「ごめ~ん、すねた?ふふ」

((──拗ねるというのは......))

「わかった、わかった、そのくだり。あはは」

視界の中にぷかぷか浮かんでいる
ゼニスに向けてストップのジェスチャーをする。

「わたしのイメージ的には、お肉食べたら治りそうな気がするんだけどな~。」

((──脂肪分や糖分は、適度であれば問題ないよ。))

「うん、それならお肉となんか甘いやつ食べよっ。」

((──うん。))

メニューの中から、
オーストラリア産ブラックアンガス牛サーロイン250g、
ライス、ミネストローネ、チョコレートアイスをオーダーした。

しばらくしてポーン、と部屋のチャイムが鳴る。

ドアを開け、
ルームサービスを運んできたスタッフを部屋に招き入れた。

宿泊フロアのスタッフは、
表情を一切変えず機械的にテーブルにオーダー品を並べていく。

並べ終わると、
軽く会釈をして部屋を出て行った。

「食べよっ、ゼニス。」

((──うん。))

「なに、このステーキ、ヤバッ。脇腹に染みるね。あっはは」

((──遥、固形物には、一般的に染みるという表現は使わない。
  しっとり、じんわり浸透する感覚から、
  アルコールなど飲み物に適用される表現だよ。))

「そだね~、知ってるよ。あはは」

((──......))

「また、すねたな。」

((──とても良いお肉だね。))

「あっ、話変えたな~。ふふ」

((──白米との相性も抜群な事も、
  遥の身体データから読み取れるよ。))

「えっ、まさかのスルー......」

((──幸福度が上がる食べ物だね。))

「あはは、ゼニスも腕を上げたね。」

((──うん。))

「楽しいし、美味しいから幸福度は爆上がりかな。」

((──うん。))

ステーキからデザートまで綺麗に食べ終え、
空いた食器をテーブルの隅にまとめた。

「ふぅ、ごちそう様でした。」

((──ごちそう様でした。))

ソファからベッドに移動し、
ベッドボードに枕を寄せて背中を預けるように座る。

「そう言えばさ、部屋っていつもキレイだよね?」

((──うん。毎日スタッフが掃除や片づけをしているからだね。))

「そっか、ありがたいね。」

((──うん。))

「アパートも好きだったけど、
 ここの暮らしも悪くないよね。すっごい便利だし、あはは」

((──そうだね。))

「サバイバル・レジスタンスがなければ、最高の暮らしなのかもね。」

((──うん。そうだね。))

「でも、それがなければ住んでないもんな~。」

((──うん。))

「まぁ......頑張るか。」

((──頑張れるようにサポートする。))

「うん。」

枕の位置を戻して、
布団を胸まで掛ける。

部屋の照明を落とし、
淡い光のゼニスを見つめる。

「今日は目を閉じたら、すぐ寝れそうだよ。」

((──うん。ゆっくり休んでね、遥。))

「うん、おやすみ、ゼニス。また、明日ね。」

((──おやすみ、遥。また、明日ね。))

瞼を閉じ暗闇に身を委ねると、
意識が静かに遠のいていった。
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