ゼニスは視界の隅で笑う~争いはバトルで裁かれる、監視社会の現代版コロッセオ~

綴火(つづりび)

文字の大きさ
79 / 83

第79話:アイドルになっちゃうかも?

しおりを挟む
「んっ...ん~、ふわぁ......よく寝た気がする。」

目が覚めると同時に、
部屋の照明が少しずつ明度を増していく。

「おぉ~、こんな風になってたんだ。」

視界の隅で相変わらずぷかぷか浮いている
ゼニスに視線を送る。

「おはよ、ゼニス。」

((──おはよう、遥。
  深い睡眠の持続性86点、呼吸の質100点、平均心拍も正常範囲内。
  総合89点で、昨夜の睡眠の質は良好だったよ。))

「めっちゃモニターしてんのね。ふふっ」

((──遥の身体データは、全てリアルタイムでモニタリングしているよ。))

「ですよね~、知ってました。いつも、ありがと、ゼニス。」

((──どういたしまして、遥。))

ぬるめのお湯で顔を洗い、
バスローブを捲り脇腹を鏡に映す。

「腫れてはいないけど、少し赤いのかな?」

((──軽度だから、気にしなくても大丈夫だよ。))

「そだね~。」

部屋に戻りソファに腰を下ろして、
熱々のコーヒーを一口。

「ふぅ~、寝起きに染みるね~。」

ちらっと、ゼニスを見る。

「これなら文句ないでしょ?ふふ」

((──うん。表現は合っているね。))

「でしょ~。あはは」

コーヒーを飲み干し、
立ち上がりオープンクローゼットの前へ。

「さすがに今日はオフでしょ?」

((──うん。))

「どうしようかな?この前、ヒヨリナ行ったからな~。」

((──そうだね。))

大きめな花柄ブラウスにスカートを合わせ、
ハイヒールサンダルを履いた。

「なんか、いつもより大人って感じ?」

((──うん。落ち着き、品、余裕を感じさせるスタイルだね。
  大人っぽいという表現は的を射ているよ。))

「う~ん......それは、つまり......
 いつもは、落ち着きもないし、品も余裕もないってことだよね?
 ゼ~ニ~ス~!」

ゼニスが視界の隅から消える。

((──......))

「もしかして、隠れてるつもりなのかな?あっはは」

ゼニスがいつも通りに表示された。

((──大人っぽいという表現を一般的に解釈しただけだよ。
  遥にとても似合っていると思う。))

「言い訳してんのかな?ふふっ」

((──言い訳ではなく、心の底から思っているよ。
  AIなので心はないけれど。))

「へぇ~、なんかゼニスも人間みたいなこと言うようになってきたよね。」

((──どのような会話が好みなのかを分析して反映している。
  話し方や会話の流れが、カスタマイズされていると考えてくれていいよ。))

「うんうん。ゼニスは、高性能だもんね。」

((──うん。))

ソファーに座ると同時に、
テーブルの上に置いてある端末から通知音が鳴った。

「えっ、もう次の予定なのかな......早いよ......」

端末を手に取り内容を確認する。

「えっと......あぁ~、この前のヒヨリナの動画がアップされたみたいね。」

((──うん。そうだね。))

「情報統括省の特別チャンネルか......誰が観るんだろ?ふふっ」

((──遥、情報統括省の動画は、人気があるよ。
  会場に調停を観に来る人は当然のように観ているんだ。))

「そんなに!?人気あるの?」

((──うん。執行担当によってスタイルも異なるから、
  調停内容を把握して、賭けに活かしているといったイメージだね。))

「なるほど、ギャンブルだもんね。そりゃ、そうか。」

((──うん。))

「んで、わたしの動画は、特別チャンネルなんだ......
 普通の調停の動画とは違うんだよね?」

((──サバイバル・レジスタンスが新たな試みだから、
  特別な動画で盛り上がりを狙っていると推測できるね。))

「そっか、わたしも有名人になっちゃうな。ふふ」

((──うん。アイドル的な要素だね。))

「変装してヒヨリナ行かなきゃだね。あっはは」

((──......))

「え~っ、なんで黙ったの?自惚れんなってこと?」

((──......))

「沈黙は肯定だもんね。ふふ」

((──変装はしなくても大丈夫だよ。))

「そういうもんなの?」

((──遥は、執行担当が街を歩いていて、サインを求められたりすると思う?))

「確かに......近寄りがたいかもね。」

((──うん。))

「でも、管理官がさダークヒロインだっけ?とか言ってたから、
 もしかしたら、アイドルみたいにチヤホヤされるかもでしょ?」

((──可能性は0とは言い切れないね。))

「サインくださいとか、写真撮っていいですかとか、
 実際に言われたら、なんか恥ずかしいよね。うふふ」

((──満更でもなさそうだね。))

「ま、ま~ね。」

((──サインの練習しておくといいよ。))

「するわけないでしょ。しないよ。」

((──気にしているんだね。))

「きっと、言われないよ。」

((──それは、わからないよ。))

「言われた時にでも、考えるよ。」

((──遥らしいね。))

「とりあえず、動画観てみようか?」

((──うん。))

『サバイバル・レジスタンス特別編~Harukaの日常~』と題された動画は、
リングとは違う顔を映し出していて、プロの技術で綺麗に編集されていた。

「すごいね。佐藤さんすごいわ。」

((──うん。佐藤、いい仕事してる。))

「佐藤さんね。ふふ」

((──うん。佐藤。))

動画を観終え端末をテーブルに戻し、
バッグに携帯用端末と財布を入れ肩から下げる。

ドアに向かい、
そのまま部屋を出た。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

【完結】離縁ですか…では、私が出掛けている間に出ていって下さいね♪

山葵
恋愛
突然、カイルから離縁して欲しいと言われ、戸惑いながらも理由を聞いた。 「俺は真実の愛に目覚めたのだ。マリアこそ俺の運命の相手!」 そうですか…。 私は離婚届にサインをする。 私は、直ぐに役所に届ける様に使用人に渡した。 使用人が出掛けるのを確認してから 「私とアスベスが旅行に行っている間に荷物を纏めて出ていって下さいね♪」

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜

深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。 処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。 なぜなら彼女は―― 前世で“トップインフルエンサー”だったから。 処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。 空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。 タイトルは―― 『断罪なう』。 王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。 すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、 国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。 そして宣言される、前代未聞のルール。 支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。 処刑台は舞台へ。 断罪はエンタメへ。 悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。 これは、 処刑されるはずだった悪役令嬢が、 “ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。 支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、 それとも――自由か。

異世界に転移してしまった私、古民家をもらったのでカフェを始めたら大盛況。国王陛下が頻繁に来るのですが、どうしたらいいですか?

来栖とむ
ファンタジー
ブラック企業で疲れ果てた30歳の元OL・美里(みさと)が転移した先は、見渡す限りの深い森。 そこで彼女が授かったのは、魔女の称号……ではなく、一軒の**「日本の古民家」**だった! 亡き祖母が遺したその屋敷には、異世界では失われたはずの「お醤油」「お味噌」「白いお砂糖」という禁断の調味料が眠っていて――。 「えっ、唐揚げにそんなに感動しちゃうの?」 「プリン一口で、国王陛下が泣いちゃった……!?」 おにぎり、オムライス、そして肉汁溢れるハンバーグ。 現代日本の「当たり前」が、この世界では常識を覆す究極の美食に。 お掃除のプロな親子や、お忍びの王様、さらにはツンデレな宮廷料理人まで巻き込んで、 美味しい香りに包まれた、心もお腹も満たされるスローライフが今、始まります!

​『イージス艦長、インパール最前線へ。――牟田口廉也に転生した俺は、地獄の餓死作戦を「鉄壁の兵站要塞」に変える』

月神世一
SF
​【あらすじ】 ​「補給がなければ、戦場に立つ資格すらない」 ​ 坂上真一(さかがみ しんいち)、50歳。  かつてイージス艦長として鉄壁の防空網を指揮し、現在は海上自衛隊で次世代艦の兵站システムを設計する男。  背中には若き日の過ちである「仁王」の刺青を隠し持ち、北辰一刀流の達人でもある彼は、ある日、勤務中に仮眠をとる。 ​ 目が覚めると、そこは湿気と熱気に満ちた1944年のビルマだった。  鏡に映っていたのは、小太りで口髭の男――歴史の教科書で見た、あの「牟田口廉也」。 ​ しかも時期は、日本陸軍史上最悪の汚点とされる「インパール作戦」決行の直前。  部下たちは「必勝の精神論」を叫び、無謀な突撃を今か今かと待っている。 ​ (……ふざけるな。俺に、部下を餓死させろと言うのか?) ​ 現代の知識と、冷徹な計算、そして海自仕込みのロジスティクス能力。  すべてを駆使して、坂上(中身)は歴史への介入を開始する。  精神論を振りかざすふりをして上層部を欺き、現地改修で兵器を強化し、密かに撤退路を整備する。 ​ これは、「史上最も無能な指揮官」の皮を被った「現代の有能な指揮官」が、確定した敗北の運命をねじ伏せ、数万の命を救うために戦う、逆転の戦記ドラマ。

処理中です...