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流星
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しおりを挟む入れ替わりに入って来たキッチン担当者が、店長の背を睨みつけ、可愛らしいお顔を歪ませる。
「まぁ~た店長の尻拭い?」
「う、うん? 体調が悪かったみたい」
「ハァ~。本当優しいんだからっ。体調不良なのに、タバコ吸いに行くなんておかしいでしょ!」
ベテラン主婦並みの貫禄がある穂果ちゃん。
実際は、僕より歳下の高校生だ。
頼りない僕に、なぜか懐いてくれている。
おしゃべりをしながら、パパッと着替えを済ませたホノカちゃん。
真冬でも丈の短いスカートは、寒くないのかといつも気になってしまう。
変態な意味ではなく、兄のような気持ちで。
だってホノカちゃんには、可愛い恋人がいる。
「おつかれさまです」
小さな声の主が顔を出す。
ホール担当のアイドル、怜麗ちゃんだ。
白雪姫なんじゃないかってくらい色白で、おっとりとした性格。
たまに、レイラお嬢様って呼びたくなる。
さっそくホノカちゃんが、気分が悪いとタバコ休憩に行った店長の態度を、レイラちゃんに告げ口していた。
いつもなら、ふふって笑って聞いているレイラちゃんなんだけど……。
僕が店長の代わりに謝罪している現場を見ていたため、大人げないよねと少しだけ怒っていた。
謝罪中にホール担当が二人抜けたわけだから、ある意味レイラちゃんも被害者。
でも、僕のために怒ってくれているって伝わってくるから、僕はほっこりとした気持ちになっていた。
着替えを済ませたレイラちゃんが、パソコンに向かう僕に紙を差し出す。
「あ、あの、流星くんっ。今月の休み届け……」
「ありがとう。いつも早くて助かるよ」
笑顔で受け取ると、レイラちゃんもにっこりと可愛い笑顔を見せてくれる。
本来なら、シフトを組むのは店長である遠藤さんの仕事なんだけど……。
なんだかんだで、僕が請け負っていた。
忘れてたっ! と、慌てて鞄をひっくり返すホノカちゃんも提出してくれる。
有り難く思っていると、二人が同じ日に休みの希望を出していた。
仲の良い友達に見えるけど、ホノカちゃんとレイラちゃんは、恋人同士なんだ。
最初に聞いた時は驚いたけど、初々しい二人を見ているだけで、僕は毎日癒されていた。
誰にも選ばれることのない僕は、恋人がいる人を羨ましく思うこともある。
まあ、就職もせずにふらふらしている僕に、出逢いなんて転がってこないんだけど。
二人を見送り、店長の仕事も含めてある程度片付けて一息つく。
着替えを終えると、ちょうど落ち着いた様子の遠藤さんが僕を迎えに来た。
顎で指示を出されて、着いていく僕。
なんだかペット扱いされている気がする……。
後部座席に乗り込むと、なぜか舌打ちをされる。
無言の時間が耐えきれない僕は、当たり障りのない会話を試みる。
でも、ああ、しか返事がないわけで。
なかなか苦痛だったりする。
でも遠藤さんは、家族に見放された僕を唯一気にかけてくれる人。
なかよくしたいと思っているのだけど、今の距離感がちょうど良かったりするんだ。
実はこの間、遠藤さんの恋人と名乗る男性に、バイト帰りに声をかけられた。
僕を遠藤さんの新しい恋人だと勘違いをしていたらしい。
ただの仕事仲間だと説明して、納得してもらったんだけど……。
なぜかここ一ヶ月、付き纏われている。
きっと信用されていないのだと思う。
赤信号で車が停止し、ミラー越しに超安全運転の遠藤さんと視線が交わる。
休憩時間が長くなってはいけないし、今話してしまおうと思った僕は、意を決した。
「この間、遠藤さんの恋人の方とお話ししました」
「っ……」
くわっと目を見開いた遠藤さんが、息を呑んだ。
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